旬素材の産地から

旬素材の産地から 大きく育った塩山のピオーネ 田中 清行(たなか きよゆき)さん フルーツ王国と呼ばれる山梨県でも、ぶどうは収穫量日本一を誇る代表的な名産品。今回訪れた田中農園ではピオーネとシャインマスカットを生産し、シャインマスカット狩り(現在は店頭販売のみ)も楽しめます。果物の通信販売も行うなど、意欲的に事業に取り組む田中さんに、ピオーネについてお話をお聞きしました。

取材日:2021年7月
※写真撮影のためマスクを外していただきました。

瑞々しいぶどうが実っていますね!

ハウスに実る大きなピオーネ ハウス内の熱が分散するように設置された送風機

田中さん
この黒いのがピオーネ。今年は気温が高かったから生育が早いね。いつもの年ならまったく隙間がないほどそれぞれの粒が大きくなるんだけど、今年は玉が張らないというか、粒が少し小さめかな。

粒の大きさで等級が変わる?

田中さん
それぞれの粒ではなく、房全体の重さだね。畑で収穫するときに「これは300gくらい、これは500gくらい」と大体の重さで分けていき、作業場でそれぞれの等級に合わせて出荷作業をしていく。500gくらいの房をたくさん作れるのが理想だけど、大きくしすぎると粒が黒くならないこともあるんだよね。やはり食味重視で、お客さんに「おいしい」と言ってもらえるものを作っていかないと、と思ってるよ。

おいしいピオーネを作るために工夫していることは?

裂果してしまったピオーネ 水を制限することで一時的に枯れてしまった葉

田中さん
最近は6月くらいにたくさん雨が降る。粒に色がついていく時期に雨が多いと、水分を吸いすぎて裂果(果肉が破裂してしまうこと)してしまうことが多いんだよね。裂果しない場合でも水を与えすぎると糖度が下がってしまうから、ギリギリまで水を制限するなど水加減を調整してる。1回目のジベレリン処理まではほとんど水を与えずに、2回目のジベレリン処理が終わったら水をたくさん与えるということもあるかな。

農薬のジベレリンにはどんな効果があるんですか?

田中さん
ジベレリン処理をしないと種ありぶどうになっちゃうよね。最近のぶどうは種なしになって食べやすくなっているから、種ありになったら消費者の方々から敬遠されてしまうんじゃないかな。ジベレリンに限らず農薬がないと規格通りの品物は作れないだろうから、出荷は安定しないし、生産者の収入も安定しなくなってしまう。糖度が高いぶどうは病気になりやすいので、使用時期や使用方法など、JAの指導どおりに農薬を使いながら、消費者の方々においしいものを届けたいよね。

日々の成長に感謝しながらピオーネを育成

ピオーネを作る上で大変なことは?

すべてのピオーネに手作業で紙製の傘をかける

田中さん
ほとんどが手作業なことだね。雨による裂果や鳥が実をつつくのを防ぐために傘もかけるし、房になってからの摘粒(房の形を整えたり、小さな粒を取り除く作業)も手作業。一房を30粒や33粒にするために粒を抜いていくんだけど、何万という房数をやらなければいけないから本当に大変。それが1ヶ月くらい続くんだから。数年前の大雪も大変だったなぁ。

2014年の「平成26年豪雪」ですね?

今では大雪前と変わらない収穫量に

田中さん
うちだけでなくこの辺りは全部、大雪でハウスが潰れちゃったんだよね。潰れたハウスを片付けて、また新たにハウスを作ってと、すべて一からやり直し。木も倒れたけど、半分だけ残っていた木や裂けてしまったものの生きている木もあったから、次の年には棚を作り、その次の年には新しく今のハウスを作った。現在と同じような収穫量になったのは5年後くらいからかな。

それは本当に大変でしたね……。逆にワクワクすることや楽しいことは?

「実ってくれることが当たり前じゃない」と田中さん

田中さん
やはり形になってきたり、色がついてきたときかな。よく頑張ったなと感じるし、これをどのように出荷しようかと考え始めるからね。ピオーネだけでなく植物も生き物だから、収穫が終わったときには「ありがとう」と声をかけるよ。ここまで育ってくれたことに感謝しなきゃ。

お店でピオーネを選ぶときのポイントは?

出荷先の取り扱いを考えて軸は長めに残す

田中さん
やはり軸かな。切ったばかりの軸は緑色で、時間が立つと茶色になってくる。新鮮なものを選びたいのなら軸が緑色。甘いものを選ぶなら実が黒いものを買うといいんじゃないかな。

山梨ブランドの継承と安心の品物

ピオーネを作り始めたのはいつ頃ですか?

田中農園のピオーネ出荷量は10tが目標! 手塩にかけてピオーネを育てていると語る田中さん

田中さん
私がここに入った頃はまだデラウェアを作っていて、25年くらい前からピオーネを作るようになった。デラウェアは粒が小さくて手間がかかるから、大きな粒のものを作った方がいいんじゃないかと(笑)。最初は今より作業に時間がかかったし、試行錯誤のくり返しだったね。それでも周囲に色々と教えてくれる先輩たちがいたから、ここまで来られたと思っているよ。

田中さんもそれを継承しているんですね!

田中さん
若者も少しずつ入ってきているからね。うちで研修をして、今は独り立ちして生産をしている人もいる。果物だけでなく人を育てるのも大切だよね。今は彼らに直接声を掛けなくても、売っているものを見れば「頑張っているな」とか「いいものを作っているな」と感じられる。それはうれしいし、手応えを感じるよね。

通信販売でも手応えを感じることはありますか?

日照時間が長く、糖度が増す恵まれた環境 標高が高い塩山地区は果実栽培に最適

田中さん
こちらを信用して注文してくれるわけだから、吟味に吟味を重ねて品物を送るようにしているよ。次もまた頼んでもらえるように、そして「おいしかった」と言ってもらえるものを送るように心掛けている。そのお客さんの紹介で別のお客さんから注文がくるのもうれしいね。信用してくれて、リピートしてくれて、また別のお客さんに広がって。お客さんから感謝の手紙をもらうこともあるよ。

最後に消費者の方へのメッセージをお願いします。

笑顔が素敵な田中さんご夫妻

田中さん
うちだけでなく山梨県の生産者たちの意識が高くないと山梨ブランドは守れない。その意識が今の生産量1位につながっているので、先人たちの思いを受け継ぎ、さらに次の世代に継承して、山梨ブランドを守っていく。それを目標にしながら、消費者の方にはピオーネを中心とした安心の生産物を届けたいね。
  • ぶどうの生産量日本一を誇る山梨では、小粒で甘いデラウェア、ぶどうの王様と呼ばれる巨峰、肉厚で香りの強いシャインマスカット、さらに山梨独自の品種など、さまざまなぶどうが生産されています。イタリア語で「開拓者」の意味を持つピオーネは、大粒でジューシーな果汁と上質な甘さが特徴の人気品種。日持ちがいいことも特徴です。

  • ピオーネ

ピオーネ 栽培スケジュール

バックナンバー

大きく育った塩山のピオーネ

田中 清行(たなか きよゆき)さん

田中 清行(たなか きよゆき)さん

フルーツ王国と呼ばれる山梨県でも、ぶどうは収穫量日本一を誇る代表的な名産品。今回訪れた田中農園ではピオーネとシャインマスカットを生産し、シャインマスカット狩り(現在は店頭販売のみ)も楽しめます。果物の通信販売も行うなど、意欲的に事業に取り組む田中さんに、ピオーネについてお話をお聞きしました。

甲州市

甲州市

山梨県甲州市の北西に位置する塩山エリアは山岳・渓谷・森林などが約8割を占め、日本百名山の大菩薩嶺(だいぼさつれい)や三窪高原など大自然が広がっています。恵まれた気候と土壌によって育てられるフルーツは、年間を通してさまざまな種類が味わえます。取材日:2021年7月
※写真撮影のためマスクを外していただきました。

瑞々しいぶどうが実っていますね!

田中さん
この黒いのがピオーネ。今年は気温が高かったから生育が早いね。いつもの年ならまったく隙間がないほどそれぞれの粒が大きくなるんだけど、今年は玉が張らないというか、粒が少し小さめかな。

ハウスに実る大きなピオーネ

ハウス内の熱が分散するように設置された送風機

粒の大きさで等級が変わる?

田中さん
それぞれの粒ではなく、房全体の重さだね。畑で収穫するときに「これは300gくらい、これは500gくらい」と大体の重さで分けていき、作業場でそれぞれの等級に合わせて出荷作業をしていく。500gくらいの房をたくさん作れるのが理想だけど、大きくしすぎると粒が黒くならないこともあるんだよね。やはり食味重視で、お客さんに「おいしい」と言ってもらえるものを作っていかないと、と思ってるよ。

おいしいピオーネを作るために工夫していることは?

田中さん
最近は6月くらいにたくさん雨が降る。粒に色がついていく時期に雨が多いと、水分を吸いすぎて裂果(果肉が破裂してしまうこと)してしまうことが多いんだよね。裂果しない場合でも水を与えすぎると糖度が下がってしまうから、ギリギリまで水を制限するなど水加減を調整してる。1回目のジベレリン処理まではほとんど水を与えずに、2回目のジベレリン処理が終わったら水をたくさん与えるということもあるかな。

裂果してしまったピオーネ

水を制限することで一時的に枯れてしまった葉

農薬のジベレリンにはどんな効果があるんですか?

田中さん
ジベレリン処理をしないと種ありぶどうになっちゃうよね。最近のぶどうは種なしになって食べやすくなっているから、種ありになったら消費者の方々から敬遠されてしまうんじゃないかな。ジベレリンに限らず農薬がないと規格通りの品物は作れないだろうから、出荷は安定しないし、生産者の収入も安定しなくなってしまう。糖度が高いぶどうは病気になりやすいので、使用時期や使用方法など、JAの指導どおりに農薬を使いながら、消費者の方々においしいものを届けたいよね。

日々の成長に感謝しながらピオーネを育成

ピオーネを作る上で大変なことは?

田中さん
ほとんどが手作業なことだね。雨による裂果や鳥が実をつつくのを防ぐために傘もかけるし、房になってからの摘粒(房の形を整えたり、小さな粒を取り除く作業)も手作業。一房を30粒や33粒にするために粒を抜いていくんだけど、何万という房数をやらなければいけないから本当に大変。それが1ヶ月くらい続くんだから。数年前の大雪も大変だったなぁ。

すべてのピオーネに手作業で紙製の傘をかける

2014年の「平成26年豪雪」ですね?

田中さん
うちだけでなくこの辺りは全部、大雪でハウスが潰れちゃったんだよね。潰れたハウスを片付けて、また新たにハウスを作ってと、すべて一からやり直し。木も倒れたけど、半分だけ残っていた木や裂けてしまったものの生きている木もあったから、次の年には棚を作り、その次の年には新しく今のハウスを作った。現在と同じような収穫量になったのは5年後くらいからかな。

今では大雪前と変わらない収穫量に

それは本当に大変でしたね……。
逆にワクワクすることや楽しいことは?

田中さん
やはり形になってきたり、色がついてきたときかな。よく頑張ったなと感じるし、これをどのように出荷しようかと考え始めるからね。ピオーネだけでなく植物も生き物だから、収穫が終わったときには「ありがとう」と声をかけるよ。ここまで育ってくれたことに感謝しなきゃ。

「実ってくれることが当たり前じゃない」と田中さん

お店でピオーネを選ぶときのポイントは?

田中さん
やはり軸かな。切ったばかりの軸は緑色で、時間が立つと茶色になってくる。新鮮なものを選びたいのなら軸が緑色。甘いものを選ぶなら実が黒いものを買うといいんじゃないかな。

出荷先の取り扱いを考えて軸は長めに残す

山梨ブランドの継承と安心の品物

ピオーネを作り始めたのはいつ頃ですか?

田中さん
私がここに入った頃はまだデラウェアを作っていて、25年くらい前からピオーネを作るようになった。デラウェアは粒が小さくて手間がかかるから、大きな粒のものを作った方がいいんじゃないかと(笑)。最初は今より作業に時間がかかったし、試行錯誤のくり返しだったね。それでも周囲に色々と教えてくれる先輩たちがいたから、ここまで来られたと思っているよ。

田中農園のピオーネ出荷量は10tが目標!

手塩にかけてピオーネを育てていると語る田中さん

田中さんもそれを継承しているんですね!

田中さん
若者も少しずつ入ってきているからね。うちで研修をして、今は独り立ちして生産をしている人もいる。果物だけでなく人を育てるのも大切だよね。今は彼らに直接声を掛けなくても、売っているものを見れば「頑張っているな」とか「いいものを作っているな」と感じられる。それはうれしいし、手応えを感じるよね。

通信販売でも手応えを感じることはありますか?

田中さん
こちらを信用して注文してくれるわけだから、吟味に吟味を重ねて品物を送るようにしているよ。次もまた頼んでもらえるように、そして「おいしかった」と言ってもらえるものを送るように心掛けている。そのお客さんの紹介で別のお客さんから注文がくるのもうれしいね。信用してくれて、リピートしてくれて、また別のお客さんに広がって。お客さんから感謝の手紙をもらうこともあるよ。

日照時間が長く、糖度が増す恵まれた環境

標高が高い塩山地区は果実栽培に最適

最後に消費者の方へのメッセージをお願いします。

田中さん
うちだけでなく山梨県の生産者たちの意識が高くないと山梨ブランドは守れない。その意識が今の生産量1位につながっているので、先人たちの思いを受け継ぎ、さらに次の世代に継承して、山梨ブランドを守っていく。それを目標にしながら、消費者の方にはピオーネを中心とした安心の生産物を届けたいね。

笑顔が素敵な田中さんご夫妻

ピオーネ

ピオーネ
ぶどうの生産量日本一を誇る山梨では、小粒で甘いデラウェア、ぶどうの王様と呼ばれる巨峰、肉厚で香りの強いシャインマスカット、さらに山梨独自の品種など、さまざまなぶどうが生産されています。イタリア語で「開拓者」の意味を持つピオーネは、大粒でジューシーな果汁と上質な甘さが特徴の人気品種。日持ちがいいことも特徴です。
ピオーネ 栽培スケジュール
ピオーネ 栽培スケジュール

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