旬素材の産地から

旬素材の産地から 成田のさつまいもは「あま〜いもん」 瀧澤典男(たきざわ のりお)さん 全国3位のさつまいも出荷量を誇る千葉県。その中でも成田市のさつまいもは、1970年代から高い評価を受けてきました。今回お話をお聞きした瀧澤典男さんは、JA成田市の甘芋ん育成研究会の会長さん。収穫真っ最中の畑でお話しをお聞きしました。

取材日:2020年11月

さつまいも畑にトラクターが!

掘ったさつまいもは選別してコンテナへ 次々とさつまいもが掘り起こされていく

瀧澤さん
今はさつまいもの収穫をしているところ。これとは別の機械で最初につるを刈り、マルチを外してこのトラクターでさつまいもを掘っていくんだ。今、掘っているさつまいもはベニアズマだけど、今年もさつまいもは結構採れているよ。味もいいんじゃないかな(笑)。

成田ではクイックスイートが特産?

JA成田市・窺さんもさつまいもの出来に満足

JA成田市 営農部 園芸課 窺(うかがい)課長
クイックスイートはねっとり系のさつまいもで、素早く調理できることが特徴です。そのクイックスイートをJA成田市では「甘芋ん」として商標登録しました。さつまいもをそのまま出荷しているだけでなく、干し芋や焼酎などに加工し、「甘芋ん(あま~いもん)」の商品名で販売しています。

ねっとり系が好きな人にはたまらない!

瀧澤さん
クイックスイートは電子レンジで温めるだけですぐに食べられるようになるから、うちでも作業を中断して一服するときに食べたりするよ。ねっとりしていてうまいね(笑)。

さつまいもを栽培してどれくらいですか?

機械の改良とともにさつまいもの生産も進化 後継者としてともに働く瀧澤会長のご子息

瀧澤さん
もう40年くらい経つかな。最初の頃は今とは種類が違うから大変だった。さつまいもの種類だけでなく、農薬も違うし機械も今ほど便利ではなかったから大量には作れなかったなぁ。作りやすくなってきたのは、今の機械になってからだから20年くらい前からかな。

収穫したさつまいもを細かく選別

栽培スケジュールを教えてください

瀧澤さん
最初に草刈りをしてから畑を平らにするんだ。そしてロータリー(耕す)して肥料を入れて、ベッドにマルチを張っていく。苗を植えるのは4月中旬くらいかな。収穫は、試しに掘るのが8月のお盆頃で、本格的に始めるのは8月末から9月頭頃。終わるのは11月中旬だね。

千葉県内のJAでは1ヶ月貯蔵後の出荷が基本

JA成田市 窺さん
さつまいもは8月下旬から出荷をしつつ貯蔵もしなければいけないんです。霜が下りる前に行わなければいけないので、やはり11月中旬頃には収穫作業は終了ですね。貯蔵はさつまいもの糖度を高めるために必要なんです。そのまま出荷してもおいしいですが、例えばべにはるかなら、貯蔵することで甘さだけでなくほくほく系からしっとり系に食感も変わるんです。

さつまいも栽培の難しさは?

瀧澤さん
畑によって粘土質のところもあれば柔らかい土のところもあるから、それぞれで出来不出来が発生することもあるんだよね。それが毎年同じならいいんだけど、去年はこっちが良かったけど今年はこっちとか、一筋縄ではいかない。掘ってみるまでわからないところかな。

虫の発生にも違いがあるとか?

虫害で穴が空いてしまったさつまいも

瀧澤さん
土壌と同じで農薬の効き方に差が出ることがある。農薬がなかったらもっと虫に食われてしまうだろうなぁ。食べられたさつまいもは穴が空いてしまってガリガリになってしまうんだよ。葉を食べる虫と芋を食べる虫は違うから、畑をローラーするとき、ベッドにマルチを張るとき、そして収穫の少し前にそれぞれ農薬が必要になる。それでも昔と比べたら使う量は少なくなっているかな。

そしてようやく収穫されたさつまいもは?

細かな根を手作業で除去したら…… 機械を使ってさつまいもを洗います

JA成田市 営農部 加工販売課 堀越課長
ほとんどのさつまいもは出荷規格に合わせて、生産者のみなさんに選別していただいています。基本的にはすべて手作業ですね。収穫して洗い、選別して箱詰めし、JAに納品しつつ貯蔵もしなければいけない。だから収穫期の生産者の方は本当に大変なんですよ。例外としてクイックスイートは、収穫したものすべてをコンテナでJA成田市に持ち込んでいただいています。

持ち込まれたクイックスイートは?

JA成田市 堀越さん
生産者の方が行っているように、JAで選別して箱詰めをしています。大きさと形でいくつかの等級がありますが、最も人気のあるのはLですね。大きさはもちろん、形はまっすぐでふっくら。

重さによる分類後に手作業でさらに選別していく

JA成田市 窺さん
おいしいさつまいもの見分け方もそれですね。おいもらしい形のものがやはりおいしい。それでも細すぎるものは筋張っていることがありますが、細すぎなければどんな形のさつまいもでもおいしいですよ。

焼き芋が一番! ほかの食べ方でもおいしい!

選別されたクイックスイートが「甘芋ん」になるんですね?

JA成田市 堀越さん
ねっとり系のクイックスイートは色もいいので芋自体のファンも多くいますが、それを加工した「甘芋ん」が好きな方も増えてきていると感じています。干し芋といえば茨城というイメージが強いかもしれませんが、「甘芋ん」の干し芋が一番おいしいとお買い求めいただいている方もいるんですよ。焼酎は県内の酒蔵さんの協力により販売しています。まだなかなか浸透していませんが、リピーターになっていただいている方はいらっしゃいますね。

クイックスイートの特徴を生かして商品化

JA成田市 窺さん
干し芋と焼酎に加工するだけでなく、製菓メーカーさんなどに原料としても出荷しています。その場合は「甘芋ん」という名称ではありませんが、今後は県内外の製菓メーカーさんと連携した商品が作れたらいいかなと思っています。

クイックスイート おすすめの食べ方は?

収穫したばかりと貯蔵後では味や食感が異なる

JA成田市 堀越さん
軽く水で湿らせた新聞紙を巻いて、その上からラップで包み、電子レンジで温めてください。ワット数にもよりますが、10分くらいで出来上がりますよ。それでもおいしいんですが、やっぱり焼き芋が一番おいしい食べ方だと思いますね。しかも焼き方で全然甘さが違ってきます。クイックスイートは200度で約1時間焼くのが一番。高温で短時間ではなく、一定温度でじっくり焼くのがおすすめです。とても甘さが増すんですよ。やはりおいしくなるには時間がかかるということですね(笑)。

消費者の方へのメッセージをお願いします。

JA成田市 窺さん
ほかのJAと同じくJA成田市でも消費者のみなさんに安心して食べていただけるように、愛情を込めて農産物や商品を作っています。さつまいもを含めていろいろなものを、ぜひご賞味いただければと思います。

瀧澤さんご一家と、JAの窺さん、堀越さん

瀧澤さん
今年も味のいいさつまいもができたから、みんなもいろいろな方法でぜひ食べて欲しいな。焼き芋、大学芋、天ぷらとか。甘くておいしいと思うよ(笑)。
  • JA成田市は成田市と隣接する酒々井町から構成され、稲作を中心に事業を展開しています。畑作ではさつまいも、大根、人参などを基幹品目として生産。高い評価を受けるさつまいもは2000年代中頃からクイックスイートの本格的な栽培をスタートし、成田ブランドとして2007年に干し芋の「甘芋ん」を開発。とろけるような甘さと食感の良さが人気となっています。さらに2010年には焼酎の「甘芋ん」も登場。どちらも直売所を中心に販売されています。

  • JA成田市 さつまいも

さつまいも 栽培スケジュール

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成田のさつまいもは「あま〜いもん」

瀧澤 典男(たきざわ のりお)さん

瀧澤 典男(たきざわ のりお)さん

全国3位のさつまいも出荷量を誇る千葉県。その中でも成田市のさつまいもは、1970年代から高い評価を受けてきました。今回お話をお聞きした瀧澤典男さんは、JA成田市の甘芋ん育成研究会の会長さん。収穫真っ最中の畑でお話しをお聞きしました。

成田市

成田市

千葉県の北部中央に位置する成田市は、中心部に成田山新勝寺、南に成田国際空港が位置する伝統的な姿と国際的な顔を合わせ持っている街です。水源が近いことから肥沃な水田地帯と畑作地帯が広がり、東京の近郊農業地としても知られています。取材日:2020年11月

さつまいも畑にトラクターが!

瀧澤さん
今はさつまいもの収穫をしているところ。これとは別の機械で最初につるを刈り、マルチを外してこのトラクターでさつまいもを掘っていくんだ。今、掘っているさつまいもはベニアズマだけど、今年もさつまいもは結構採れているよ。味もいいんじゃないかな(笑)。

掘ったさつまいもは選別してコンテナへ

次々とさつまいもが掘り起こされていく

成田ではクイックスイートが特産?

JA成田市 営農部 園芸課 窺(うかがい)課長
クイックスイートはねっとり系のさつまいもで、素早く調理できることが特徴です。そのクイックスイートをJA成田市では「甘芋ん」として商標登録しました。さつまいもをそのまま出荷しているだけでなく、干し芋や焼酎などに加工し、「甘芋ん(あま~いもん)」の商品名で販売しています。

JA成田市・窺さんもさつまいもの出来に満足

瀧澤さん
クイックスイートは電子レンジで温めるだけですぐに食べられるようになるから、うちでも作業を中断して一服するときに食べたりするよ。ねっとりしていてうまいね(笑)。

ねっとり系が好きな人にはたまらない!

さつまいもを栽培してどれくらいですか?

瀧澤さん
もう40年くらい経つかな。最初の頃は今とは種類が違うから大変だった。さつまいもの種類だけでなく、農薬も違うし機械も今ほど便利ではなかったから大量には作れなかったなぁ。作りやすくなってきたのは、今の機械になってからだから20年くらい前からかな。

機械の改良とともにさつまいもの生産も進化

後継者としてともに働く瀧澤会長のご子息

収穫したさつまいもを細かく選別

栽培スケジュールを教えてください

瀧澤さん
最初に草刈りをしてから畑を平らにするんだ。そしてロータリー(耕す)して肥料を入れて、ベッドにマルチを張っていく。苗を植えるのは4月中旬くらいかな。収穫は、試しに掘るのが8月のお盆頃で、本格的に始めるのは8月末から9月頭頃。終わるのは11月中旬だね。
JA成田市 窺さん
さつまいもは8月下旬から出荷をしつつ貯蔵もしなければいけないんです。霜が下りる前に行わなければいけないので、やはり11月中旬頃には収穫作業は終了ですね。貯蔵はさつまいもの糖度を高めるために必要なんです。そのまま出荷してもおいしいですが、例えばべにはるかなら、貯蔵することで甘さだけでなくほくほく系からしっとり系に食感も変わるんです。

千葉県内のJAでは1ヶ月貯蔵後の出荷が基本

さつまいも栽培の難しさは?

瀧澤さん
畑によって粘土質のところもあれば柔らかい土のところもあるから、それぞれで出来不出来が発生することもあるんだよね。それが毎年同じならいいんだけど、去年はこっちが良かったけど今年はこっちとか、一筋縄ではいかない。掘ってみるまでわからないところかな。

虫の発生にも違いがあるとか?

瀧澤さん
土壌と同じで農薬の効き方に差が出ることがある。農薬がなかったらもっと虫に食われてしまうだろうなぁ。食べられたさつまいもは穴が空いてしまってガリガリになってしまうんだよ。葉を食べる虫と芋を食べる虫は違うから、畑をローラーするとき、ベッドにマルチを張るとき、そして収穫の少し前にそれぞれ農薬が必要になる。それでも昔と比べたら使う量は少なくなっているかな。

虫害で穴が空いてしまったさつまいも

そしてようやく収穫されたさつまいもは?

JA成田市 営農部 加工販売課 堀越課長
ほとんどのさつまいもは出荷規格に合わせて、生産者のみなさんに選別していただいています。基本的にはすべて手作業ですね。収穫して洗い、選別して箱詰めし、JAに納品しつつ貯蔵もしなければいけない。だから収穫期の生産者の方は本当に大変なんですよ。例外としてクイックスイートは、収穫したものすべてをコンテナでJA成田市に持ち込んでいただいています。

細かな根を手作業で除去したら……

機械を使ってさつまいもを洗います

持ち込まれたクイックスイートは?

JA成田市 堀越さん
生産者の方が行っているように、JAで選別して箱詰めをしています。大きさと形でいくつかの等級がありますが、最も人気のあるのはLですね。大きさはもちろん、形はまっすぐでふっくら。
JA成田市 窺さん
おいしいさつまいもの見分け方もそれですね。おいもらしい形のものがやはりおいしい。それでも細すぎるものは筋張っていることがありますが、細すぎなければどんな形のさつまいもでもおいしいですよ。

重さによる分類後に手作業でさらに選別していく

焼き芋が一番! ほかの食べ方でもおいしい!

選別されたクイックスイートが「甘芋ん」になるんですね?

JA成田市 堀越さん
ねっとり系のクイックスイートは色もいいので芋自体のファンも多くいますが、それを加工した「甘芋ん」が好きな方も増えてきていると感じています。干し芋といえば茨城というイメージが強いかもしれませんが、「甘芋ん」の干し芋が一番おいしいとお買い求めいただいている方もいるんですよ。焼酎は県内の酒蔵さんの協力により販売しています。まだなかなか浸透していませんが、リピーターになっていただいている方はいらっしゃいますね。
JA成田市 窺さん
干し芋と焼酎に加工するだけでなく、製菓メーカーさんなどに原料としても出荷しています。その場合は「甘芋ん」という名称ではありませんが、今後は県内外の製菓メーカーさんと連携した商品が作れたらいいかなと思っています。

クイックスイートの特徴を生かして商品化

クイックスイート おすすめの食べ方は?

JA成田市 堀越さん
軽く水で湿らせた新聞紙を巻いて、その上からラップで包み、電子レンジで温めてください。ワット数にもよりますが、10分くらいで出来上がりますよ。それでもおいしいんですが、やっぱり焼き芋が一番おいしい食べ方だと思いますね。しかも焼き方で全然甘さが違ってきます。クイックスイートは200度で約1時間焼くのが一番。高温で短時間ではなく、一定温度でじっくり焼くのがおすすめです。とても甘さが増すんですよ。やはりおいしくなるには時間がかかるということですね(笑)。

収穫したばかりと貯蔵後では味や食感が異なる

消費者の方へのメッセージをお願いします。

JA成田市 窺さん
ほかのJAと同じくJA成田市でも消費者のみなさんに安心して食べていただけるように、愛情を込めて農産物や商品を作っています。さつまいもを含めていろいろなものを、ぜひご賞味いただければと思います。
瀧澤さん
今年も味のいいさつまいもができたから、みんなもいろいろな方法でぜひ食べて欲しいな。焼き芋、大学芋、天ぷらとか。甘くておいしいと思うよ(笑)。

瀧澤さんご一家と、JAの窺さん、堀越さん

JA成田市 さつまいも

JA成田市 さつまいも
JA成田市は成田市と隣接する酒々井町から構成され、稲作を中心に事業を展開しています。畑作ではさつまいも、大根、人参などを基幹品目として生産。高い評価を受けるさつまいもは2000年代中頃からクイックスイートの本格的な栽培をスタートし、成田ブランドとして2007年に干し芋の「甘芋ん」を開発。とろけるような甘さと食感の良さが人気となっています。さらに2010年には焼酎の「甘芋ん」も登場。どちらも直売所を中心に販売されています。
さつまいも 栽培スケジュール
さつまいも 栽培スケジュール

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