農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

最近の野菜は、昔食べたような味がしなくなった、と言われています。収穫量は多くなっても、農薬を使うと味が落ちるのではないでしょうか。

農薬の使用によって作物の味が変化することはありません。作物の味には、農薬の使用が影響することはなく、主に品種によって左右されます。時代による味の好みも異なり、品種は現代の消費者の嗜好にあったものに替わってきています。これが、昔食べたような味がしないと言われる所以でしょう。

農薬を使用すると作物の味に影響があるという報告はありません。米や野菜、果物など作物の味は基本的には品種に左右され、そこに土壌の性質、肥料や水など栽培中の管理、日照、気温、降雨などの気象条件が加わって決まります。いくら優れた品種でも十分な管理をせず、気象条件にも恵まれなければ、本来の味を実現することはできません。更に作物の鮮度も味に影響します。

味の評価は非常に主観的ですし、また時代による好みの変化もあります。昔のトマトはトマトの味がしたといわれますが、現在、主流になった糖分が多く甘味の強い「桃太郎」は、現代の消費者の嗜好にあったためにこれだけ普及したのです。りんごもかつては酸味の強い品種が主流でしたが、現在出荷量の50%以上を占める「ふじ」は、単に甘味が強いだけでなく、甘味に見合う酸味によるさわやかさが人気の理由です。昔も今も、トマトやりんごなど、いずれの作物にも農薬が使用されています。

広域物流の普及で、農作物の供給時期や地域的な広がりは大きく拡大しました。そのため、時期を問わず多数の生産地の農産物を消費する機会も増えたことで、それぞれの味を比較する機会があります。熟期や鮮度は味に影響するので、この比較をした場合には、地元の農産物がおいしいと感じるのが普通です。その場合、農産物供給に広域流通が果たす役割は、別の価値観で評価する必要があるものと考えられます。

味との関連では作物の生育が深くかかわります。病気や害虫の被害を受けると作物の生育が悪くなります。イネでは、もみへのでんぷんの蓄積がうまくいかなくなり、果物や野菜では、皮がざらざらになり果肉も萎縮し固くなったり、ひどい場合は腐敗し、あるいは虫に喰われた部分が変質し苦味を感じることも多くなります。どのような手段にせよ、作物を栽培をするには、病害虫の防除が不可欠です。

農薬は、作物を病害虫から守り、本来その作物・品種が持っている収量を確保し、味などの品質を十分に発揮させるための手助けをしています。

(2017年4月)