農薬はどうして効くの?

農薬の種類や成分、製造方法、
農薬が効く科学的な仕組みなどについて

農薬を使い続けると、害虫、病原菌や雑草に対して防除効果がなくなることがあるのでしょうか。

同じ農薬を使い続けると、防除効果が低くなることがあります。ただし、病原菌の薬剤耐性菌、害虫や雑草の薬剤抵抗性の発達は必ずしも使用期間とは関係ありません。

同じ作用機構の農薬を何度も使用すると、病原菌の薬剤耐性や、害虫や雑草の薬剤抵抗性の発達を促します。使用開始数年で発生する場合もあれば長期間の使用でも発生しない場合もあり、必ずしも使用期間とは関係なく作用機構などによって発生リスクが異なります。

農薬は同じ作用機構かどうかでグループ分けできますが、そのグループによって薬剤抵抗性の発生リスクは高いものから低いものまであり、特定のグループの薬剤を連続して使用しないことが大切です。農薬名が違っても同じグループの薬剤がありますので、要注意です。同じ作用機構かどうかはRACコードで確認できます。

このような抵抗性や耐性の出現を避けるため、1)同じ作用機構の薬剤の使用回数を制限したり、2)作用機構の異なる何種類かの薬剤をローテーションで使用したり、3)作用機構の異なった薬剤との混合剤を使用することにより抵抗性の発達をある程度回避することができ、薬剤の寿命を伸ばすことができると考えられています。しかし、同一薬剤を連続して使用する場合、一般に薬剤への抵抗性発達のリスクは高まりますので、そのため新しい作用機構の薬剤の開発を続けることが必要となります。

また、実際に農薬を使用している場面では、抵抗性の発達とは別に、使用方法の間違い等により、単純に効果が出なかったことも考えられます。直ちに抵抗性や耐性を疑う前に、使用した農薬の使用基準(ラベル記載事項)通りに正しく使用したか、防除タイミングは適切だったかなど、効果の低下を招くような一般的な要因を、今一度確認する必要があります。

参考文献
*宮川恒・田村廣人・浅見忠男 編著『新版 農薬の科学』朝倉書店、2019年
*桑野栄一・首藤義博・田村廣人 編著/清水進・吉川博道・多和田真吉・高木正見・尾添嘉久 他著『農薬の科学―生物制御と植物保護-』朝倉書店、2004年
*除草剤抵抗性雑草研究会ホームページのHP:http://www.wssj.jp/~hr/JHRWG.html
*農薬工業会のHPの「Japan FRAC/殺菌剤耐性菌対策」:https://www.jcpa.or.jp/labo/mechanism.html

(2021年1月)