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線虫とは?

線虫は地球上のどの環境条件にも生息し、最も繁栄している動物のひとつともいわれています。しかし、その多くは細菌や糸状菌(カビ)を食べる自由生活性の線虫(自活性線虫)です。農作物に深刻な被害を及ぼす植物寄生性の線虫は、内部寄生性線虫と外部寄生性線虫に大きく分けられますが、日本の農業において特に重要な線虫は、内部寄生性線虫のネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、半内部寄生性線虫のシストセンチュウです。これらの線虫の加害は地下部で起こるため目につきにくく、被害が確認されたときは手遅れとなり、大きな減収につながります。また、収穫物が直接加害される根菜類については、外観を損なうため品質が著しく低下します。

主な線虫の生態

  • ネコブセンチュウ
    卵からふ化した第2期幼虫が作物の根の先端付近から侵入し、根の中で定着します。定着した線虫は口針から分泌物を出し、頭部周辺の植物細胞を巨大化させます。そこから栄養を吸収して成長し、成虫となり卵のうを作ります。生育適温では約1か月でこのサイクルが繰り返されます。根に多くのコブを作り、吸水能力を低下させるため、地上部にしおれや葉の黄化などの症状がみられ、被害が甚大な場合は枯死します。

トマト/ネコブセンチュウの被害

きゅうり/ネコブセンチュウ被害によるしおれ

  • ネグサレセンチュウ
    第2期幼虫から成虫までの全ての生育ステージの線虫が作物の根へ侵入し、根の中を移動しながら加害し、根を腐らせます。また、根の状態が悪くなると土壌中に脱出し新しい根を探します。雌成虫は根の中に卵を生みながら移動し、生育適温では約1か月でこのサイクルが繰り返されます。根を腐らせるため、加害部分から病原菌の侵入を助長し、二次的な被害を引き起こすことがあります。

だいこん/ネグサレセンチュウの被害

ネグサレセンチュウの拡大写真

  • シストセンチュウ
    卵からふ化した第2期幼虫が作物の根に定着し、加害します。雌成虫は体内に卵を生産した後、表皮をタンニン化させてシストを形成し、卵を守ります。このシストは極めて乾燥・低温に強く、作物が無い状態でも土壌中で数年から10年以上生存することができます。

だいず/シストセンチュウ被害による地上部の黄化

シストの拡大写真