旬素材の産地から 梅づくりワンダーランド (青梅)山﨑真一(やまさきしんいち)さん (漬梅)中松郁夫(なかまついくお)さん 日本一の梅の産地をめざして南紀白浜へ。全国の梅の約1/4を生産する和歌山県みなべ町は、深い緑と青い海に彩られた桃源郷のような町。みなべいなみ梅部会1581軒の農家をたばねる2人の梅部会・副部会長を訪ねました。
みなべ町は和歌山県のほぼ中央に位置し、黒潮が流れる太平洋に面した温暖な町。アカウミガメが産卵に訪れる海岸から、南部川を遡ると、山の急傾斜地に無数のブルーネットが見えてきます。このネットを敷いた畑が梅林で、日本を代表する梅ブランド「南高梅」がつくられています。

うわーっ、絶景、アニメ映画の舞台みたい!

黒潮の海と緑豊かな山々。姿見のいい土地だ

JA山ノ内さん
そうですか~、毎日見慣れているから、わからないですけど。

みなべは「梅づくり日本一」ですね!

JA山ノ内さん
和歌山県が全国の梅の収穫量の65%を生産しています。みなべ町はその約半分の3万トン、全国の約1/4の生産量があります。みなべ町は今、南高梅の収穫がピークで、てんやわんやです。

江戸時代から梅をつくってきた!

今年はやや不作。ちょっと小ぶりですが

JA山ノ内さん
はい。みなべで梅栽培が盛んになったのは、江戸時代の初め頃。明治時代には加工工場ができて栽培から加工まで一貫してできるようになりました。みなべは梅づくりを中心に農業経営を400年やってきた梅の町です。

有名な南高梅の生みの親は「高校の生徒たち」?

JA山ノ内さん
そうです。昭和25年に、郷内で栽培されていた114種類の梅から5年の歳月をかけて最優良品種の選抜を行いました。母樹選定調査研究に深く関わったのは南部高等学校園芸部の先生と生徒たち。彼らの業績に敬意を表して、「南高梅」と名付けられたのです。

町のレジェンドですね!

JA山ノ内さん
みんな感謝しています。今ではみなべ町で生産される梅の8割が南高梅です。一本の母樹から日本中の梅産地に旅立った南高梅は、みなべが生んだ最高の梅ブランドです。

昨年(2015年)の暮れ、世界農業遺産に登録されました(拍手)

JA山ノ内さん
ありがとうございます。「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定されました。国内で8件目です。400年以上受け継がれた梅栽培を中心とした農業の仕組み、農耕文化、里山の景観などが世界的にもすぐれたものと評価されたそうです。

日本中で注目されました?

JA山ノ内さん
それが知らない人が多いのです。マスコミが取り上げてくれたのは一晩きり。こういうめでたいニュースこそ連日報道してほしいのですが・・・ははは。

来週、ボランティアで収穫手伝ってくれませんか?

あっ、梅の香り!

笑い顔がすてきな山﨑副部会長

山﨑さん
これが南高梅です。青色の実に鮮やかな紅がさしているでしょう。ここでは青梅というもぎたての梅をM・L・2L・3L・・・とサイズで選別して箱詰めしています。みなべは海岸線から山間部へと順番に収穫していきますが、ここが一番上、最後の収穫地です。

ネコの手も借りたい!

山﨑さん
手もぎで2週間、その後は落果を収穫します。来週末は大阪から兄弟の家族を呼んで総出で収穫です。一度期の作業なので町中で人手が足りません。よかったらボランティアで手伝ってくれませんか。ははは。

おいしそう!食べてもいいですか?

手もぎできる青梅は収穫全体の15%ほど

山﨑さん
いいですよ。でもこのままだと梅はあまり美味しくないんです。家庭でいろいろ加工して食べるのが楽しいし、おいしいです。梅酒、梅ジュース、梅サワー、梅ジャム、もちろん梅干しをつけるのもいいですよ。

今年(2016年)の、出来栄えはどうですか?

山﨑さん
品質は例年どおり最高ですね。ただ、ことしは記録的な少雨で、5月15日頃からピタッと雨が止みました。最後にぐっと実が太らなければいけない時期に雨がなかったので大きなサイズの実が少ない・・・。収穫も2週間ほど早まりました。

やっぱり異常気象ですか?

山﨑さん
ここ10年で一番早い収穫です。春先の2月から暖かく、JAさんの温度計が壊れたかと思うほどでした。こればっかりは仕方がないですね。

梅づくり農家さんが1250軒!

山﨑さん
印南町にも367軒くらいの農家があって、みなべ町と印南町が合併した今は約1581軒の農家を部会長と3人の副部会長でみています。地域ごとに役員がいて、月に1回のペースで会合があります。けっこう忙しいです。

年間の、栽培スケジュールを教えてください。

梅ジャムづくりも楽しいよ、と山﨑さんの奥様

山﨑さん
2月に蜂を入れて交配させ、3~5月には防除消毒、6月になると順次収穫します。6月後半から漬け梅を行い、7月は天日干し作業です。10月は剪定ですが、2カ月で完了する農家もあれば、3月までかかる農家も。梅づくりは一年間続きますね。

梅づくりで一番難しいことは?

ことしは病害の被害がほとんどなかった

山﨑さん
農薬工業会の取材だから言うのではありませんが、農薬の使い方ではないでしょうか。有機農家もありますが、収穫期には梅はまっ黒です。誰が食べるのかなと思います。梅は繊細な果実ですから農薬が大切です。最適な農薬を最適な時期にピンポイントで使う。上手く農薬を使えばアブラムシだって一回で防除できます。かいよう病や黒星病も、JA紀州がまとめている「梅病害虫防除暦」通りに散布すれば心配はありません。

うれしいな、農薬が褒められた!

山﨑さん
ただ新しい農薬は良く効くぶん値段も高いです(笑)。古い農薬もうまく組み合わせて効率的に使っています。農薬のない梅づくりは考えられませんね。

青いネットの上を、コロコロコロリ

中松さん、こんにちは!

落果したての梅を網ですくう中松副部会長

中松さん
どうも。みなべいなみ梅部会、副部会長の中松です。ここが私の畑です。今朝、一度収穫しましたが、もうこんなに落果しています。

あ、ネットの上を転がって梅が集まってくる!

中松さん
20年ぐらい前からネットを使うようになりまいた。傾斜を利用して梅が集められるし、落ちた果実が草に隠れることもありません。最初に考えた人はえらいなあ。

梅の塩漬けも見せてもらえますか!

中松さん
いいですよ。蔵のほうへ移動しましょうか。今年はちょっと小ぶりだけど、いい紅がさしています。おいしい梅干しになりますよ。

きれいな、色、色、色!

クラクラするほど甘い、梅の香り

中松さん
ありがとうございます。家へ持ち帰った梅は、こうしてきれいに水洗いして、塩漬けします。

梅を漬けるとき大切なことは?

中松さん
日光が直接当たらないことですね。夏場は特に大事です。おじいさんの代に作ったこの蔵で、中松家はずっと梅を漬けています。桶の深さは2メートルぐらい。昔は木の桶でした。

塩分は何パーセント?

中松さん
JAさんが選んだ20%の塩で漬けています。これで梅を漬けると腐りませんし、おいしい保存食になります。

最近は、甘い梅干しもあります。

梅の出来栄えに、満面の笑みが浮かぶ

中松さん
漬けた梅の塩分はあとで落とします。近頃はしょっぱい梅が苦手という人が多くて、塩分をずいぶん薄めに調整しています。塩の代わりに酢で漬ける、無塩の梅干しもあります。

梅が「可愛く」って仕方ない、って感じですね!

中松さん
おはずかしいです。蔵の写真を撮ってもらうなら、もっと掃除しておけばよかったと反省してます。ははは。

6次産業のトップランナーとして

「梅愛隊(うめあいたい)」ってなんですか?

JA山ノ内さん
梅農家の奥様や地域の主婦が結成した南高梅のPR部隊です。名前の通り、みなさん梅を愛しています。全国の量販店や学校など約50カ所を飛び回って、本場の梅酒や梅ジュース、梅干しの作り方の講習会を開いています。

町ぐるみで、梅を盛り上げる!

本場の梅酒や、梅干しの作り方を伝授

JA山ノ内さん
梅愛隊のメンバーは11人。ほとんどボランティアで、忙しい農家に代わって南高梅のPR活動を担ってくれています。

日本のお土産グランプリで優勝!

甘くておいしいデザートのような梅干し ディスプレイもグランプリ級、お見事!

JA山ノ内さん
優勝したのは「とまと梅」。みなべの南高梅と印南町のミニトマトが一つになったデザート感覚の梅干しです。みなべ町と印南町のJAの合併を記念して開発しました。

梅のもぎとり体験に、年間3000人!

加工品を多彩に販売する直営ショップ

JA山ノ内さん
みなべ町には全国で唯一のうめ課という部門があります。JAや町が一体となって梅のもぎとり体験ツアーを推進しています。大阪、京都からの修学旅行客をはじめ年間2000〜3000人がみなべ町を訪れています。

すごいプロデュース力ですね!

JA山ノ内さん
ありがとうございます。ただ売上が年々厳しくなっているのも事実です。2000年頃は、梅御殿がたくさん建ったのですが・・・。食生活が多様化し、あまりお米を食べなくなりました。若い人にどう梅を食べていただくかをしっかり考えないといけません。

なにか秘策はありますか?

JA山ノ内さん
いま、町ではスポーツと梅を結びつける新しい研究を始めています。駅伝でトップクラスの有名大学と提携して、長距離選手といっしょに疲労回復や、健康増進に梅がどのような効果を備えているかを検証しています。また、さまざまな梅の効能を研究して、証明しています。最近、ダイエットに効くことも注目されてきました。

健康食品「梅」をアピールしていく!

海と山の間に梅がある・・・そんなJA紀州のシンボルマーク

JA山ノ内さん
そうです。地道な検証ですけど、400年の歴史の中で「病が去る」「難が去る」と言い伝えられ、昔から薬のように珍重された梅の効果を、スポーツを切り口にして科学的に証明したいと考えています。

みなべの梅づくりは、400年たっても最先端!

JA紀州 みなべ営農販売センターの山ノ内さん。

JA山ノ内さん
みなべは、梅で生きています。これからもこの基本はブレません。他の梅産地がまいったというくらい、いろんな方法で梅と生きる道を追求していきたいです。農家のみなさん、地元のみなさんと共にトップランナーであり続けたいと思います。

みなべの底力って、地元愛ですね。

JA山ノ内さん
ありがとうございます。日本の食卓にもっと梅が登場するように、これからも盛り上げていきます。
  • JAみなべいなみの南高梅 梅の生産日本一を誇る和歌山県を代表するブランド梅で、全国でトップの知名度があります。みなべ町でつくる梅の8割以上は南高梅です。特徴は、大粒な果実で果肉が厚く、とても柔らかいところ。味や食感が大変優れており、梅の最高品種として重宝されています。主に梅干しや梅酒として加工され、形がよく、見栄えがすることから贈答品としても評価を得ています。2006年に、みなべいなみ農業協同組合の商標登録として「紀州みなべの南高梅」が認定されました。

  • JAみなべいなみの南高梅

梅 栽培スケジュール