旬素材の産地から 農薬も、賢く使って。香り立つ富士山麓のお茶づくり。 勝亦英介(かつまた えいすけ)さん お茶農家歴25年。富士山麓の標高50m、300m、500m地域の3カ所で計5.6ヘクタールの茶畑を営む。富士市農協荒茶品評会で平成22年から3年連続で最優秀賞を受賞。 静岡県は、全国の茶園面積の40%、荒茶産出額の37%を占める日本一の茶どころ。お茶づくりに適した気候と高い生産技術により、品質の高いお茶を生産しています。

鮮やかな緑の茶畑が広がる富士山麓の傾斜地。美味しいお茶づくりの秘訣は「元気な土」と「健康な葉」という、富士の茶農家の若手ホープ、勝亦さんを訪ねて静岡へ出かけました。

今日は富士山、見えますか?

勝亦さん
残念だけど、今日は無理だね。天気が良ければ家の前の茶畑から、ドーンと見えるけどね。

富士市農協荒茶品評会で3連覇されましたね。

わあ、これ最優秀賞の楯ですか!

勝亦さん
おかげさまで平成22年から3年連続で、最優秀賞をいただきました。

すごい!お茶の品評会って、どんな内容?

お茶にも色つやがいるんですね。

勝亦さん
まず見た目ですね。お茶の色ツヤよじれ加減とか、茶葉が伸びている、曲がっていないか、そういう外観が30点です。

えッ、点数制ですか?

おいしそう。満点のお茶ですものね。

勝亦さん
そうです。外観の次がお湯を入れたときの色、水色(すいしょく)と言います。そのあと香りなど、いろんな観点から評価して、合計すると200点満点です。だいたい優勝するお茶は、200点とか199点を取ります。

ええッ、200点満点!全て完璧じゃないと優勝できない。

勝亦さん
そうです。この富士市だけでもたくさん農家がありますから、1位から50位くらいまでのお茶の順番がずらっとでます。それに、お茶の評価は感覚的な面もありますから、なかなか難しい世界なんですよ。

そこで3連覇ですか・・・。優勝したお茶畑を見せてもらえます?

姿見のいい茶畑です。

勝亦さん
これが茶畑です。今ちょうど新茶の収穫が終わったばかりです。昔はねぇ、それこそ一家総出で茶摘みをしましたが、今は乗用摘採機を使って一人で出来ます。

カッコいい!グリーンに乗用摘採機の赤が映えますね。

勝亦さん、カッコいい!

勝亦さん
洗車してなくてすいません(笑)

一番茶を摘む、5月末がゴール。

1年の栽培行程を教えてください。

勝亦さん
ゴールは5月末ですね。一番茶を摘み終えたら、6月末に二番茶、9月にもう一度収穫します。ただ同時に来年の収穫のための、土づくりと木づくりを進めます。植物って根と地上の部分にわかれます。この両方をバランスよく面倒をみて栽培するのが大切です。地上の部分はやりやすいけど、土の中、根っこの部分は見えないから大変です。堆肥などをすき込んであげるんですが、成果が見えづらい。きちんと手入れした者だけが成功すると信じて、さぼらないようにやっています。

肥料はどんな風にあげる?

勝亦さん
夏から秋口は育ちざかりの時期。子供がたくさんご飯を食べるように、茶の葉にもたくさん肥料をあげます。土を柔らかくし、根を張りやすくしてあげるんです。

木づくりはどんな苦労がありますか?

土を語るときは、真剣そのもの。

勝亦さん
お茶で難しいのは葉へのハサミの入れ方(整枝)です。木は切ったところから分枝しますが、分枝が多すぎると次の年の芽が弱くなる。あまり芽数を減らしすぎると収穫が減ってしまう。経営が難しくなるんです。このバランスを取るのが難しいんですよ。それと、これは技術面の話ですが、一方で大事になるのが農薬による防除ですね。

農薬でやっつける。どんな害虫ですか?

最近増えてきたチャトゲコナジラミ

勝亦さん
チャノミドリヒメヨコバイチャノキイロアザミウマなどの通称ウンカ、スリップスと呼ばれる虫ですね。あと蛾になるハマキムシ類も駆除します。最近ではチャトゲコナジラミなんて虫もやっかいです。もちろん害虫もそうなのですが、一番農薬に助けられているのは炭そ病です。

炭そ病って?

勝亦さん
一番茶が終わった今、一度殺菌剤をやらないと、二番茶の最中にはもち病が出たり、炭そ病が出る可能性が高まります。炭そ病は主に葉に発生し、褐色の斑点がしだいに大きくなって、葉が枯れてしまう深刻な病気です。

炭そ病の防除で気をつけていることは?

勝亦さん
数種類の殺菌剤をローテーション使用して、なるべく連用しないように気をつけています。努力が実って、秋になって炭そ病が一枚もない畑を見たときは“やったァ!”ですね(笑)。

農薬の使い方は、農家の皆さんで

機械化で、茶摘みは一人で行う作業に。

勝亦さん
JAの方で定点観測しており、富士地区で◯◯虫が発生しているとか、こんな病気が出そうという情報が得られます。県の指導機関からもクワシロカイガラムシの発生予測や、防除適期などのお知らせがある。そんな情報を参考に、自分の目で茶畑を見て、なにをやるか決めています。

農薬の性能が上がって、使う回数が減りましたね。

昔と比べて農薬は進歩した?

勝亦さん
茶畑で働いて20年になりますが、昔より使う回数が減りましたね。農薬の性能が上がったと思います。今は美味しいのはあたり前で、安心・安全ニーズが高いでしょ。だからどんな農薬をいつどのように使ったか、「トレーサビリティ」をしっかりやって、消費者の信頼に応えるようにしています。

いろいろ科学的なんですね?

勝亦さん
いやあ。僕らはJAの青年部会で集まってやっているだけで、平たく言えば、会合の後の飲み会が楽しみというレベルです。そこで、この前やったあの薬なに?とか何気なく聞いて、あとでこっそりメモする(笑)。

お客さまに農薬のことを聞かれることは?

デザインがかわいい直営ショップの商品。

勝亦さん
直営のショップもやっていますが、ごくたまにお客さまに尋ねられたら、お茶の木の健康を維持するために使っています。収穫する葉には一切かけていません、と事実だけを自信をもってお伝えしています。

自信をもって、というところ大事ですね。

勝亦さん
最近思うのですけど、農薬にすごく敏感な方とそうでない方が分かれてきたのかな、と思います。本当に気になって無農薬を求める人もいるし、安全基準を守っているなら大丈夫と気にしないお客様もいます。消費者が自分で判断するようになっているのではないかと思います。

勝亦さんの目指す美味しいお茶は?

すくすくと育つ、健康そうな茶葉。

勝亦さん
お茶の旨味って窒素成分なんです。どれだけ窒素成分をお茶の中に効率よく入れるかが大切です。今、県の基準で窒素成分は年間54kgまでと決まっているのですが、その範囲内でどうすれば最適か知恵比べです。まずは、いい土を作ること。土を健康に保つことで根が健全になり、美味しいお茶のサイクルができます。

まず、よい土づくりですね!

勝亦さん
あとは製造段階でお茶の葉の質を落とさないこと。葉は、畑にある茶の木についているときが100とすると、摘み取った瞬間から劣化します。100あったものが80になり、70になる。だんだん落ちていく。その劣化をできるだけ少なくして製茶する技術が大切です。

摘み取ったときの美味しさを保つ秘密は?

茶畑のすぐそばに工場がある。

勝亦さん
摘んだらすぐに葉を蒸す機械に入れてあげること。そのためには必要最低限だけを摘む。大量に摘んでコンテナに溜め置きはいけません。勝亦園では畑から蒸し器まで1時間以内と決めています。それが僕のお茶作りの秘密ですね。

土づくりと、葉へのいたわり。

勝亦さん
車の両輪ですね。いくら栽培がよくても製造の方でダメだといいお茶はできません。逆に製造で頑張っても、採った葉が劣化していてはダメ。だからこの2つを両輪と考えて、美味しいお茶を作っています。

すばらしい信念ですね。あとは、この静岡の気候風土ですか。

勝亦さん
えぇ、やっぱり富士山を背負っていることでしょう。標高差があるため適度な寒暖差があって、霧が良く出る。だから、ここで採れたお茶は、香りが立つ

今年の出来栄えは?

美味しそうなお茶でしょう。

勝亦さん
最初寒かったので収量は少なかったですが、中盤戦以降取れ始めて、結局トータルの収量は例年並み作柄はここ数年で最高の気がします。

最後に、お茶を使った郷土のおいしい料理を教えてください。

お茶づくりのこだわりを語る、勝亦さん。

勝亦さん
お茶の葉を天ぷらにして食べる習慣は昔からありますね。けっこう美味しいものですよ。上級茶の茶殻はかき揚てんぷらにしてもうまい。僕の一押しは、「勝亦割り」ですね。焼酎を勝亦園のお茶で割って飲む「勝亦割り」を、全国に広めようと思っています(笑)。

「勝亦割り」、美味しそうですね。1回飲んでみたいという左党の方が全国にたくさんいらっしゃるんじゃないかな。勝亦さん、今日はありがとうございました。

  • 静岡のお茶 静岡の温暖な気候と真冬の降雪の少なさは、お茶の栽培に適した風土です。また静岡は東西南北に広がり各地に茶産地があります。山間地は日差しが優しいので、芽は柔らかく、浅蒸し煎茶、普通蒸し煎茶の製造がさかんです。湯呑に注いだ時に金色透明に近く、爽やかな香りが立ちます。平坦地、台地では主に深蒸し煎茶が作られます。日照時間が長いので、葉肉の厚い力強い茶葉となり、蒸す時間を長くします。そのため葉の形状は細かくなり、茶の葉が湯呑にも注がれ、濃緑色のお茶となります。味わいは、まろやかさが特徴。静岡茶の定義は静岡県産の茶葉のみを使用したものとなります。

  • 農家と風土がつくる静岡茶。

勝亦さんの栽培スケジュール

新茶葉が芽吹く前に主に越冬した害虫を狙います。

いよいよ本番真剣勝負。

地温が上がり根が活動を始めるのにあわせ施肥します。

二番茶は暑さとの戦いです。

一番茶終了後、二番茶芽が出る前を狙います。

二番茶が終われば来年の一番茶の親になる三番茶芽を大事に育てます。

秋の整技は一番茶の品質と収量を決定する重要な作業です。

土を健康に保つために有機物や石灰などを投入します。