農薬の使用-保護具

農薬を散布する際に着用すべき保護具の情報です。

ラベルに農薬用マスク、防護マスクなどと書かれていますが、どんなマスクを指すのでしょうか。

農薬用マスクとは、国家検定合格の使い捨て式防塵マスクのことであり、防護マスクとは国家検定合格のフィルタ取替え式防塵マスクのことです。防護マスクには、主にガス状物質を吸着する吸収缶付防護マスクもあります。

農薬中毒の主な原因は農薬散布時の防護が不十分であることによります。農薬の散布には、農薬の剤型などに従い適切なマスクを選択し、確実に装着しなければ、所期の効果を得る事が出来ず、事故に繋がる場合があります。

農業用保護マスク研究会((一社)日本くん蒸協会)制作の「農薬散布に使用するマスクの手引き」および(一社)日本植物防疫協会発行の「農薬概説」を主に参考にしてマスクについて説明いたします。

例えば粉剤を散布する際には、どの様な素材のマスクを使用すれば、適切なのでしょうか?

  1. ガーゼを20枚重ねたマスク。
  2. タオルをマスク代わりに3枚重ねた場合。
  3. 素材がスポンジで出来たマスク。
  4. 国家検定合格の使い捨て式防塵マスク(農薬用マスク)。
  5. 国家検定合格の取替え式防塵マスク(防護マスク)。

の5種類を用いてどのくらいの粉剤(農薬)を除去できるか(捕集効果)を調べた結果は、それぞれ図1のようでした。

粉剤に対する捕集効率の一例

比較的身近にあるマスクが、必ずしも粉剤散布時に適切でないことが良く分かります。さらにこの実験結果から国家検定合格のマスクを適切に使用すれば、安心して農薬散布に使用できることもわかります。

農薬用マスク(図2)

農薬用マスク

  1. ラベル記載の農薬用マスクは、厚生労働省の国家検定に合格した「使い捨て式防じんマスク」のことです。使い捨て式防じんマスクは、軽量、小型で作業性に優れ、顔面との密着性に優れ、経済的です。
  2. 農薬の粉剤および液剤を散布する時に使用します。従って粉剤、DL粉剤、微粒剤、粒剤、乳剤、水和剤、ゾル剤、フロアブル剤、水溶剤、液剤のいずれの農薬散布にも使用できます。
  3. 装着時の留意点(図3参照)

    農薬用マスク - 装着

  4. 使用上の注意点

    (1)農薬用マスク(使い捨て式防じんマスク)は原則、使い捨てです。

    (2)マスクを洗ってはいけません。水洗い後は使用不可です。

    (3)使用中マスクが濡れると目詰まりを起こすので、念のため予備のマスクが必要です。

    (4)濡れる事を避けるため、夏場は汗とり用のタオルを額に巻くと効果的です。

防護マスク(図4)

防護マスク

  1. 防護マスクは、国家検定合格のろ過材を交換できる「取替え式防じんマスク」のことです。急性毒性の高い農薬を使用する時に使用します。
  2. 農薬の粉剤および液剤を散布する時に使用します。従って粉剤、DL粉剤、微粒剤、粒剤、乳剤、水和剤、ゾル剤、フロアブル剤、水溶剤、液剤のいずれの農薬散布にも使用できます。

吸収缶付保護マスク(防毒マスク)(図5)

防毒マスク

  1. 吸収缶付保護マスク(防毒マスク)は、国家検定に合格した有機ガス用吸収缶のついた防護マスクです。クロルピクリン、D-D、メチルイソチオシアネート、DDVPなどのガス化(気化)し易い農薬の散布時に使用します。
  2. このマスクは前述のマスクと異なり、吸収缶内の吸収剤でガス化した農薬を吸着・捕集します。
    吸収缶には3種類ありますので、間違えのないようセット下さい。

    (1)有機ガス用吸収缶:クロルピクリン、D-D、メチルイソチオシアネートなど

    (2)有機ガス用フィルター付吸収缶:DDVP(乳剤・くん煙剤など)

  3. 装着の際は顔面に密着するよう締め紐で調整ください。
  4. クロルピクリン散布時は、眼に刺激性があるのでゴーグルとの併用か、全面形マスクを使用下さい。
  5. 装着時の留意点

    (1)使用前に吸・排気弁が正常に稼動するか、必ず散布前に点検下さい。

    (2)吸収缶は期限内のものを使用下さい。2缶式のマスクは左右同時に交換下さい。
    使用時に刺激臭を感じたら直ちに吸収缶を交換下さい。

    (3)清潔に保管下さい。