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農薬の作用メカニズム

<第13回>殺菌剤の作用メカニズム(掲載2005年4月)

殺菌剤を組み合わせて使う

 第12回の殺虫剤に引き続き、今回は殺菌剤の作用メカニズムについて説明します。

 植物の病気の多くは糸状菌(かび)や細菌(バクテリア)が原因です。殺菌剤はこの糸状菌や細菌を攻撃します。大部分は、タンパク質、膜脂質等の生合成を阻害するタイプとエネルギー代謝を阻害するタイプです。また最近では、直接菌には作用せず作物に抵抗力を付与(誘導)させるタイプも登場しました。

  1. 生合成阻害
     タンパク質の生合成を阻害する殺菌剤は、1961年に実用化された抗いもち剤ブラストサイジンSやそれに続いたカスガマイシンです。これとは別に、細胞膜の脂質成分であるリン脂質やエルゴステロールの生合成を妨げて、細胞膜を変性させてしまう作用をもったフジワンやキタジンP等の殺菌剤があります。トリフミン等のエルゴステロール生合成阻害剤(EBI剤:Ergosterol Biosynthesis Inhibitor)は近年数多く開発されています。
     また、細胞膜の外側にある細胞壁はセルロース、キチン、ペプチドグルカンを主な成分にしており、一定の硬さを保ち細胞の形を維持しています。細胞壁成分の合成が阻害されても細胞は破裂し死んでしまいます。このような作用をもつ農薬には、ポリオキシン等があります。
  2. エネルギー系代謝阻害
     病原菌は植物体内の糖質、タンパク質、脂質などを利用して得られるエネルギーを利用しています。このエネルギー代謝の過程を妨げ、殺菌作用を発揮するマンネブのような薬剤もあります。
  3. その他の生合成阻害
     植物病原菌の中には、メラニン色素の生合成が抑えられると菌糸が植物体内に侵入できないものがあります。コラトップ等のメラニン色素生合成阻害剤は直接の殺菌作用はありませんが、発病を抑えることができます。
  4. 病害抵抗性付与剤
     最近注目されている殺菌剤は、オリゼメート、ブイゲット等の病害抵抗性付与剤とボトキラー、バクテローズ等の微生物農薬です。前者は病原微生物を直接攻撃するのではなく、植物自身の抵抗力を高めて病気にかかりにくくします。後者は、自然界に普通に見られる無害な微生物の力を借りて、病原微生物の居場所を奪ったり、抗菌性物質の産生により病原菌の増殖を抑えます。

 上述のように、病原菌にとって欠くことのできない機能を阻害する殺菌剤は、少量で効くことになります。また、哺乳類にはないエルゴステロール生合成やメラニン生合成を阻害するものは、人畜に対する安全性が非常に高いという特徴があります。

 一方、同じ作用メカニズムの薬剤を使い続けると効果が落ちてくることがあります。害虫の場合には抵抗性、病害の場合には耐性といい、その発達のメカニズムは、作用点が変化して農薬が作用しにくくなる、速やかに分解して無毒化してしまう、等です。同種の農薬を連用するのではなく、作用メカニズムの異なる農薬を上手くローテーションして使用すれば、抵抗性や耐性の発達、感受性低下を防ぐことになります。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長))