農薬をご使用になる方へ

安全・安心の農薬使用のための発信情報

環境への影響

<第9回>農薬の進歩 その(3)(掲載2004年12月)

環境と生物にやさしい農薬

 進化した農薬は、第7回(農薬の進歩 その(1))で紹介しましたように、自然界で容易に分解して環境中に長く留まることがありません。今回は、単位面積当たり必要とする農薬の量が著しく減少していること、また環境生物への影響も無視できることを紹介します。結果として、現在では「農薬は環境に優しい」と言えるのではないかと思います。

 一つめは、単位面積当り必要な農薬(有効成分)量が著しく減ってきています。すなわち環境への負荷量が大きく減少したことです。いくつかの農薬が開発された年と、標準使用量(ヘクタール当り)を表(農薬の使用量の推移)に示しました。

表 農薬使用量の推移(グラム/ヘクタール)
殺虫剤(開発年) 使用量 殺虫剤(開発年) 使用量 殺虫剤(開発年) 使用量
DDT(1942) 1,000 マンゼブ(1961) 3,750 PCP(1957) 7,500
MEP(1962) 500 ダコニール(1963) 800 CNP(1965) 2,500
フェンバレレート(1976) 100 ベンレート(1967) 500 ロンスター(1972) 600
エスフェンバレレート(1986) 25 パンチ(1986) 40 ロンダックス(1987) 55
フルアズロン(1993) 2 バイオン(2000) 5 エコパート(2000) 9

 数十年前に開発された殺虫剤「DDT」、殺菌剤「マンゼブ」、除草剤「PCP」などはヘクタール当りの使用量が数キロであったのが、近年開発の殺虫剤「フルアズロン」、殺菌剤「バイオン」、除草剤「エコパート」ではそれが約1000分の1に減少し、使用量は数グラムで十分な効果が得られるようになっています。

 このように進化した農薬では、有効成分量が使用時にすでに1000分の1になっているのです。当然、環境負荷も、同じように小さくなっているのは理解していただけると思います。

 もう一つは、過去の知見を基に農薬の環境に対する影響が十分に調べられ、易分解性のほかに、低毒性、低濃縮性なども保証されていることです。分解性については前に説明したように、現在使用されている農薬は、散布された後に環境中や生体内で容易に分解されることが確認されています。

 環境生物への毒性については、評価対象生物として水産動植物の代表3種(魚類=メダカまたはコイ、甲殻類=ミジンコ、藻類:緑藻)を用いて試験します。また、有用生物の代表種(ミツバチ、蚕、天敵昆虫、鳥類)への影響も調べて、使用に際して影響がないことを確認しています。

 逆に、これら生物への影響が強いと判断されたものは使用が制限されたり、農薬として登録できなかったりします。農薬の登録申請のためには、「生体内運命に関する試験」が要求され、動物体内での分布、代謝分解の過程、蓄積性などの試験を行って高濃度残留しないことを確認します。

 このように、農薬の水域生態系への影響を未然に防止すべく厳しい基準(「水産動植物に対する毒性にかかわる登録保留基準」)が課されています。また、この基準は最近の改正で、より一層厳しい基準として適用されるようになります(適用は2005年4月1日)。

 もちろん間違った使用や基準を守らない使用の場合は、環境生物への安全性は保証できません。一時的に環境中の濃度が高濃度になり、時によっては生物への影響も無視できないことがあります。

 農薬の使用だけでなく、散布液の調製から残液の廃棄まで、適正な取り扱いが必要になります。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長))