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<第8回>農薬の進歩 その(2)(2004年11月)

土壌中の生物への影響

 “農薬を使用すると土壌中の生物にも影響があるのではないか”とよく質問を受けるのですが、そんなことはありません。

 農薬の性質により、影響を及ぼす生物の種類は変わりますが、その影響は大きくはなく一過性であり、短期間で回復します。

 土の中では、細菌やカビ(糸状菌)から昆虫の幼虫やムカデ、ミミズなどさまざまな生物がバランスを保ちながら共存し活動しています。それらは植物の根も含め互に複雑に作用しあい、植物の残渣を分解したり、耕したりして、土づくりに大きな役割を果たしています。落ち葉や枯れ枝の多い森林ではミミズなどの小動物の働きが重要ですが、農耕地では、糸状菌、細菌、微小藻類などがより重要です。

 今の農薬は環境中で比較的速やかに分解するので、土壌中にそのままの形で残り、影響を与え続けることはありません。多くの農薬は水田土壌、畑土壌とも表層(処理層)に大部分が留まります。農薬を分解する能力のある微生物は多く、土壌の状態に適した種類の微生物により分解されていきます。殺菌した土壌では微生物による分解はなくなり、光分解や加水分解等だけが起こります。

 土壌生物に対する各種農薬の影響についていろいろな研究報告があります。たとえば、微生物に及ぼす農薬の影響試験が、除草剤、殺菌剤、殺虫剤など種類別に測定された試験成績があります。根粒菌・細菌・糸状菌などの数、有機物分解の活発さを示す土壌呼吸活性、有機態窒素をアンモニア態窒素にする無機化能、植物が吸収できる亜硝酸態や硝酸態の窒素に変える硝化活性、窒素固定活性、セルローズ分解能などについて農薬の影響が測定されています。測定項目によりプラスの影響、マイナスの影響がありますが大きな影響は見られていません。土壌生物への影響は単純ではありませんが、通常の使用量では影響がない、また微生物数が減少しても短時間のうちに回復するという報告がほとんどです。

 また、農薬を使用するとミミズが死ぬのではないかとイメージされる方がいますが、土壌生物のうちで、ミミズ類は昆虫より農薬の影響をあまり受けないものの一つです。また、一般に農薬は土壌粒子に吸着されやすく表層に留まるので、定められたように使用している限り土壌中のミミズやモグラに影響を与えないことが知られています。このほかフシトビムシを除いたトビムシ類、コムカデ類は農薬に強く、反対に農薬に弱いものは捕食性のダニ、ヤスデモドキ類、フシトビムシ、ハエの幼虫などが知られています。

 このように、農薬の土壌生物への影響は、その動物の種類や農薬の種類によっても違います。さらに土壌中の小動物はさまざまな関係をもって生きていますから、農薬の使用によって捕食性のダニが減るとその餌となっていたトビムシ類が反対に激増するなどのようなことも起きます。

 また、農薬を使用しても土壌の肥沃度は変わりませんし、次の年の作物に影響が出ることもありません。たとえば、(財)日本植物調節剤研究協会では除草剤を毎年続けて使用した試験を実施し、稲の収量には影響ないと報告しています。

 土壌生物への影響は一過性ですが、ご自分が使用する農薬の特徴と使用基準をよく理解して適切な使用を心がけましょう。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長))