農薬をご使用になる方へ

安全・安心の農薬使用のための発信情報

環境への影響

<第7回>農薬の進歩 その(1)(掲載2004年10月)

環境中での分解・消失(分解性)

 農薬は科学の進歩に伴って発展し、時代のニーズにも応えて進化し続けています。農薬は作物保護等のために水田、畑地、果樹園等に散布されますが、効果を発揮した後には速やかに分解・消失することが望まれます。今回は、このような農薬の分解性について説明します。

 難分解性で環境中に長く残留し、生物体内に濃縮・蓄積されるディルドリンやDDTのような農薬は30数年前に使用を中止し、今や使われていません。今の農薬は作物中、土壌中あるいはその他の環境中で比較的速やかに分解します。

 動植物や微生物の各種酵素による分解、太陽光線による光分解、そして水による加水分解が主なものです。農薬も含めた化学物質が環境中で安定で長く留まるのはむしろ例外で、皆さん方も環境中の農薬の認識を改めて頂きたいと思います。

 散布された農薬はさまざまな経路を経て最終的には大部分が地上に到達します。土壌表面では太陽光による分解により、土壌中では加水分解や微生物等による分解により、消失していきます。また、水中には様々な分解を促進する物質が溶けており、より速やかな分解に寄与する場合もあります。

 農薬は開発する段階で詳しく分解・残留のようすが調べられ、安全性に問題がないことを確認しています。

 何年も連続して農薬を使用した場合は、分解が追い付かず次第に土壌中に蓄積していくのではないかと思われがちですが、ラベルに記載された基準にしたがって使用される限り、比較的速やかに分解し、蓄積しないことが解っています。

 散布直後の農薬濃度が半分になるまでの期間を半減期といいますが、土壌中の半減期が1年(365日)の農薬を毎年使った場合でも、その濃度は最終的に初年度散布直後濃度の2倍を超えることはないことが理論的に確認できています。

 現在使用されている農薬の半減期は下表に示したようにほとんどが数日から100日の範囲にありますので、(半減期が約1年のディルドリンのように)土壌中に長く残留することはありません。同種の農薬を連続使用したり、栄養分を与えたりすると、微生物等による分解が促進される(それぞれ、誘導 inductionと共分解cometabolismと言う)ことも知られています。

 植物表面では光分解が主になりますが、植物体内では各種分解酵素の働きで農薬は分解されます。収穫前日まで使用する農薬でも、分解・消失により作物中の残留量が収穫時には残留基準を下回っていることが確認されています。逆に、長期持続的な効果を期待する農薬の場合には、散布した農薬が如何にこれらの分解に耐えて一定濃度を長く保持できるかがキー・ポイントになります。

 もちろん、この場合でも、使用時期(収穫前日数)や使用濃度を守って使用している限り、分解・消失が進んで残留農薬は基準を下回ることになります。個々の農薬の特徴と使用基準をよく理解して適切な使用を心がけましょう。

各種農薬の土壌中における半減期(日)
農薬名 畑地状態 湛水状態
殺虫剤 ディルドリン 注) 300、360 >90
ダイアジノン 11~112、25 6~7、10
フェニトロチオン(MEP) 8~30、12~28 4~6、<10
イソキサチオン 18~20、15~42  
カルバリル(NAC) 3、8、30 3~42、20~40
フェノブカルブ(BPMC) 20~40、4~20 5~40、
殺菌剤 クロロタロニル(TPN) 7~30  
キャプタン <1、4~5、5  
エクロメゾール 15  
ヒドロキシイソキサゾール 13~29、4~200  10~20
イプロベンホス 7~10  16
除草剤 シマジン(CAT) 47、90、130±46  
ナプロパミド   45
2,4-D 10、10~35 30~40
ダイムロン 49  
ブタクロール 11 8、25~30

日本農薬学会『農薬とは何か』、鍬塚と山本『土と農薬』より抜粋
注)1971年以降日本では使用されていない。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長))