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コミュニケーション

<第4回>防除作業と保護具(掲載2004年7月)

「適正な安全装備が不十分」が事故原因の上位

 農作業中の死亡事故は毎年400件程度ですが、機械等によるものが多く、農薬によるのは数件あるか無しです。死亡に至らない農薬中毒は、それでも毎年50-80件程度の発生を見ています。

 農薬中毒の事故原因では、適正な安全装備ができていない(不十分)が上位を占めています。使い慣れた薬剤はつい雑に扱いがちです。加えて、暑いから、面倒だからということで、防備が不十分になるのです。

 農薬の影響を最も受けやすいのは濃度や量、暴露時間からみて、実際に散布をする使用者です。たとえば、散布作業では空中に漂う農薬の微粉末や霧を吸い込む可能性がありますし、準備のため高い濃度の農薬を薄めたり、あるいは容器や散布機に移したりする作業の途中で、薬剤に接触することがあり得ます。無用な接触や暴露を避けるためにマスクなどの保護具を着用するのは当然です。

 使用する農薬の毒性の程度により、最もふさわしい保護具を選ぶことが重要で、どのような保護具を着用すればよいかはラベルに記載されています。注意事項を確認し、それに従って適切な防護マスク、保護メガネ、防除衣およびゴム手袋・ゴム長靴などを着用し、皮膚の露出をできるだけ少なくすることが大切です。毒性の低い農薬まで完全重装備をする必要はありません。

 マスクに関する重要なポイントは、適切なものを選ぶこと、鼻の脇などからの漏れ込みがないように着用することです。ラベルに農薬用マスク(防護マスク)着用とある場合は、国家検定に合格している使い捨て式または取替え式防じんマスクを選択してください。

 ラベル記載の保護具に関する注意事項は、農薬登録時の国による検査の中で毒性学等の専門家がデータや科学的知見に基づいて、農薬ごとに評価し、農薬散布者の安全を確保する観点から、必要な保護具を定め、ラベルへの記載を義務づけているものです。特に注意しなければならない事項は絵表示などで示されています。まず、そのようなことはないのですが、保護具を着用していたにもかかわらず散布時に万が一中毒症状が出た場合は、治療後、販売店や農薬会社あるいは農薬工業会安全対策委員会に連絡下さい。原因を究明・説明した上で、必要な保護具や散布時注意事項等を訂正することが必要です。理想的には、安全は農薬会社(製造者)と散布者(使用者)が双方向コミュニケーションで確認していくものと考えています。

 最近では、“マスクや防護メガネなど完全装備で農薬散布をしているのを見ると、保護具が必要なほど農薬は危険なのだから、そのような農薬を使った農作物も危険ではないか?”という消費者の声を気にして、保護具を着用しない農家がいるという話も聞きます。

 散布者の安全性は、消費者が心配する農作物の残留農薬に関する安全性の問題とはまったく別の話です。散布された農薬は、収穫までに雨や風に流されたり、水、光、生物体、土壌中微生物等で分解され、残留するのはごく微量です。残留農薬による消費者の安全性も、農薬使用基準を守ることによって保証されています。

(農薬工業会安全対策委員会事務局 花井正博)