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食の安全

<第15回>残留農薬(掲載2005年6月)

指針に沿ったサンプリングで分析

 食品中の残留農薬については、食品衛生法に基づき厚生労働省が基準(残留農薬基準)を定め、これを超えた食品は原則流通が禁止されています。現行の残留 農薬基準はネガティブリスト制で、すなわちリストに無い農薬に関しては規制できないので、日本では使われていない(したがってリストに無く残留基準が決め られてない)農薬等が輸入農産物等に残留していても流通を規制することができない制度になっています。

 近年のBSE問題などを契機に食の不安や不信が高まり、これに応えるべく2003年に改正された食品衛生法では、2006年5月までにポジティブリスト制を導入すると定めています。現在、リスト整備の最終段階にあります。

 ポジティブリスト制では、特定農薬等の例外を除いてすべての農薬(有効成分)で、国内で流通する可能性のあるすべての農作物に対して、残留農薬基準を定 めることになります。したがって、今まで無かった基準を急遽暫定的に定めますので、国際(コーデックス)基準、環境省が定める登録保留基準、外国(5カ 国・地域)の残留基準などを採用します。何処にも基準がない場合は、一律で0.01ppmを採用することにします(0.01ppmでは分析できないものは 分析可能な値を、他作物での基準値が0.01ppm未満である場合は、最低の値を採用する例外があります)。

 日本で食用作物に登録のあるのは約350農薬ですが、世界には他の農薬も存在し、約700農薬が使用されています。ポジティブリスト制になると、厚生労働省は食品中の残留農薬約600成分を分析・監視することになり、体制整備や分析法の開発が順次進められています。

 今回ポジティブリストで採用される基準のうち、日本の基準も、国際基準や外国の基準も、すべて試験成績に基づいて設定されたものなので、ある程度は残留 レベルも予測できるものです。しかし一律基準値0.01ppmは、ADIを念頭に影響のないものとして定められるもので、試験成績の裏付けがないもので す。したがって、わずかのドリフト(隣接地で使用した農薬が流入したもの)や土壌残留の後作物による吸収(キャリーオーバー)等で、0.01ppmを超過 する事態が発生することが起こるかも知れません。例えば、現在の残留基準が数ppm、あるいは数十ppmである農薬でも、これまで対象でなかった農作物に 対しては一律基準(0.01ppm)が採用されます。じつに数百倍、数千倍も低い基準値となり、少しのドリフトで基準値超過するのではないかと心配されて います。また0.01ppmレベルの残留分析となると、農薬によってはバラツキや誤差があり、判定が非常に難しいとの指摘もあります。

 不本意にも、隣接地の農作物をドリフト等で汚染し流通禁止としたり、知らずに出荷した隣人を食品衛生法違反や損害賠償の対象にすることのないように十分 注意しなくてはなりません。ドリフト防止策は重要で、ドリフトしにくい製剤、ノズルあるいは操作条件を使用する、風が強い時は散布しない、隣接作物が収 穫間近であれば尚一層注意して散布する、などが上げられます。しかし、完璧なドリフト防止策はないので、隣接作物にも適用のある農薬を使用する、作物間に 緩衝地帯を設ける、等も提案されています。皆さんも内容をよく理解して十分な対策を実施してください。また仲間や関係者で話し合い、より良い工夫・改善を 考えていくことも大事だと考えます。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長)