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食の安全

<第15回>残留農薬(掲載2005年6月)

指針に沿ったサンプリングで分析

 収穫物や市場の商品の残留農薬分析をすることが多くなっています。今回は残留農薬分析を実施する時に注意する点などについて説明します。

 農薬登録のために行われる作物残留試験法は農林水産省が指針を示しています。いくつかの品種が含まれる作物、地域により異なる作型、施設栽培か露地栽培 かなどの条件から、農薬がいちばん残留しやすい栽培条件が選ばれて試験が実施されています。分析用サンプル(収穫物)も圃場全体の平均値が得られるように 統計的に複数の場所から採取しています。

 分析に使用する作物の部位は厚生労働省の告示の中に分析方法と共に示されています。一般的には、小売店の店頭に並べられる状態で分析していますので、野菜・果物などは洗浄せずに用いられます。

 出荷前などに確認のために残留農薬分析を行おうとする場合は、前述の指針等に従ってサンプリングしないと、圃場での平均値を正しく把握することはできません。また、分析に用いる部位についても告示と同じ部位を用いないと残留基準値との比較はできません。

 このように細心の注意をして行われた分析の結果、異常な数値が得られた場合には、農薬の使用方法をはじめとする全作業の確認を行います。そのために、作業実態について記帳しておくことが重要です。

 次に、基準値を越えてしまった場合、その作物を食べることが人体にどの程度の影響を及ぼすか考えてみます。

 ご存知のようにADI(一日摂取許容量=一生涯毎日食べ続けても健康に悪影響が出ない量)は動物を用いた長期毒性試験で得られた無毒性量に安全係数をか けて求められています。一方、厚生労働省の国民栄養調査によって、国民一人が一日あたりに摂取する作物ごとの量(フードファクター)が発表されています。

 企業が登録申請をする際に、どの作物を適用作物とするかは、その農薬にとって優先度の高い作物(効果、市場性など)から順に、その作物から摂取しうる農 薬の最大量を残留データとフードファクターから計算していき、ADIの80%を超えない範囲までで適用作物が決められています。つまり、適用作物すべて に、使用基準にある最高の濃度(量)・回数で使用したとしても、ADIの80%を超えないように適用内容は決められています。

 通常はひとつの農薬が、日本中に栽培されているすべての適用作物に使われることはありませんし、いちばん残りやすい栽培条件で使用条件いっぱいに使用さ れることもありません。さらに、残留分析が行われる作物の状態から、皮などを除いたり、洗浄や調理などが行われるため、実際に口に入る残留農薬は分析時に 比べかなり減少しています。厚生労働省がまとめた農薬一日摂取量調査では、通常の食生活において人の農薬摂取量は微量であり、ADIに達するものは調査開 始以来ないと報告されています。

 従って、残留基準値を越えたある一つの作物を短期間に口にしたとしても、その農薬のADIを越えることは考えにくく、すぐに健康被害を生じるものではないと考えられています。

 そうはいっても、決められた基準は守らないといけません。農薬使用基準はそれを守れば、残留基準値を超えることがないように決められています。農薬ラベルに記載されている内容を守って使用してください。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長)