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食の安全

<第14回>食の安全保証(掲載2005年5月)

正確な作業記録が有効な手段

 私たちはさまざまなリスク(危険)に囲まれて生きており、経験的にリスクを避けたり、保険で担保したり、未然に防いだりしています。高度発達社会では、 個人の失敗や間違いが、大きな事故や損害に結びつくため、経験や勘だけでリスクを管理できる範囲を越えていると考えるべきです。

 しかし、日本人はリスクに関する意識が低く、その結果対策が遅れており、「リスクはあるかもしれないが自分のところは多分大丈夫」的な対応で終わってい るのがほとんどです。リスクの現実化で命を落としたり、売り上げが激減し赤字に転落したりなど、大きな損害を被る例が多いのも現実です。

 農薬など化学製品を扱う企業では、化学物質を健康や安全、環境の面でより良く管理したり、適正に取り扱ったり、関係者への情報提供などによって、事故を 未然に防ぐ活動(例えば、レスポンシブル・ケア活動)を推進しています。法令や規制はもちろんこと、化学物質取り扱いのすべての段階での責任ある配慮とし て、独自に定める基準や規則・規定など、さらには社会通念や倫理なども含めて順守するようにしています。

 優秀な人でも人は誰でも間違い(ヒューマン・エラー)があることを理解すべきです。化学物質の安全性、品質などと保証を必要とする仕事では、業務内容を 追跡できる(トレーサビリティー)体制をとっています。十分な記録が残っていて、何時に誰が間違ったかが明らかになります。無論、途中で点検・除外し、最 終的には間違いがないようにしています。

 食品中に残留する農薬は、一般の人々が感じるリスクや不安において、放射能とよく似ていると言われます。両者はともに目に見えず、自分では制御できな い、理屈が高尚で理解し難い、直ちに自分自身の生命の危機はない(したがって関心が薄い)などが理由です。安全性を科学的に説明しても理解されにくいこと から、「漠然とした不安を払拭できない」との指摘もあるようです。

 そこで農薬工業会ではシンポジウムなどを通じ、農薬の安全性や役割を解説し、ルールを守り使われる限り、リスクは実際上無視できることを説明しています。

 農薬そのものの安全性は、以上のような努力や繰り返しの説明で理解が進んでいます。一般消費者の眼は、今後はもう一つの側面である農薬の使用現場に移ることが予想されます。農家も食の安全保証の一翼を担っているためです。

 優秀な農家でも、うっかり(故意でない失意の)ミスや勘違いはあるはずです。間違いが無いことを保証するためには、各作業の記録を現場でボールペン(鉛筆は消して書き換えられるので不可)で残すと良いでしょう。書き間違いは二重線で消して、日時と理由を記して修正します。

 必要な記録は、氏名(共同作業者も)、日時、場所、散布器具、作物名、農薬名、希釈倍率や用量、使用防護具、そのほか散布に際して講じた措置などで、記録する項目を事前に決めておくことが大事です。

 定期的に農家仲間(組合や家族でも良い)で記録を相互チェックし、改善すべき点やリスクを拾いだし、重大かつ緊急なものから対策や改善を実施することも有効です。

 重大な間違いが判明した場合、農作物を廃棄したり、計画的に出荷できなかったりするかもしれません。残留農薬検査で間違いが発覚し、マスコミで取り上げられ産地イメージが崩壊するリスクを考えれば、まだしも良いと考えるべきでしょう。間違いの発見と除外・修正は仲間で共有化し、将来の糧とすべきです。

 生産現場での記録よって、農作物の安全(安心)がより一段と保証されることをよく理解して実践しましょう。

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長)