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食の安全

<第3回>食の安全を保証する仕組み(リスク評価と管理)(掲載2004年6月)

ハザードの指標でなくリスクで正しい判断を

 BSE(牛海綿状脳症)や農薬残留、偽装表示などで消費者の不安が増大したのを契機に、2003年7月に内閣府食品安全委員会が発足し、国民の生命や健康の保護を目的に食品等の健康影響(リスク)評価をしています。

 厚生労働省は、食品衛生に係わるリスクを管理、具体的には食品添加物の指定、残留農薬基準の設定、食品製造や流通の監視と指導を通じて安全性を確認します。

 農林水産省は、農林水産物等のリスクを管理、すなわち農産物、水産物などの生産、流通と消費改善を通じて安全性を確保します。この3機関はリスクコミュニケーションとして消費者、事業者そしてその他の関係者相互間の情報交換や意見交換を行っています。

 「リスク」は、「ハザード」と異なります。

 例えば、自動車事故のハザードとは、起きる事故の程度をひどくする要因・背景を意味し、ブレーキ故障、飲酒、悪天候などのことです。リスクとは、どの程度の損失(ロス)が生じるかの程度を意味し、「事故の大きさ」×「発生確率」になります。

 年齢26(21)歳以上であることや、長い無事故期間などは、事故の大きさや発生確率が低いことを意味し、多くの保険会社では低いリスク(損失の大きさ)に応じた安い自動車保険料が設定されています。

 農薬の場合では、ハザードは「毒性の強さ」「発がん性の強さ」などを意味します。毒物あるいは劇物であること、消防法危険物であること、また「ADI」(一日摂取許容量:毎日摂り続けても健康に悪影響がない量)の大小などはすべてハザードの指標です。

 リスクとは、「ハザード」×「暴露量」(量、時間、回数)のことです。農薬ラベルの注意書きは、リスクを避けるための重要な情報を提供するものです。農 薬使用者が手袋やマスクなどの防護具を着用すると、暴露量が下がり、結果として使用時の安全性が向上(リスクが低下)します。

 農産物消費者に対しては、農薬の使い方を決め、これを守ることによって摂取(暴露)量を規制し、リスクを安全レベルに管理しています。すなわち、農薬ご とに使用基準(適用作物、使用量、希釈倍率、時期そして回数)を定め、残留基準を超えない、そして全農産物を通してもADIを超えないようにしています。

 農薬使用基準の違反があると予想外の残留レベルとなり、食の安全が保証できないことになります。ここに農家の皆さんが食の安全確保で果たすべき重要な責任と役割があるわけです。

 農薬使用基準の違反があると予想外の残留レベルとなり、食の安全が保証できないことになります。ここに農家の皆さんが食の安全確保で果たすべき重要な責任と役割があるわけです。

 ADI占有率こそが食品中残留農薬のリスク指標で、内閣府食品安全委員会は残留農薬に関しては現時点で議論すべき人の健康へのリスクはないとしています。

 このように、ハザード(有害性と訳す)でなく、リスクで正しく判断することが必要です。

食品安全委員会~厚生労働省~農林水産省
図 食品安全委員会~厚生労働省~農林水産省
※食品安全委員会のホームページより転載

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長)