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<第11回>有機農産物は本当に安全か?(掲載2005年2月)

適正使用であれば慣行も安全

 最近、「有機農産物であるから安全、健康に良い」といった表現はできないのではないかとの議論が多くなっています。

イギリス化学会誌「Chemistry World」の2004年6月号でマリア・バークさんは、「有機農産物は、農薬や化学肥料を使用する慣行栽培に比べて、安全でしかもヘルシーであるというのは疑問」とし、また「作物も植物病原菌に感染する。これらの病原菌が産生する毒素の蓄積も心配だ」とも指摘しています。このような毒素の一種フモニシンを調査したところ、有機農産物で蓄積量が多くリスクが高いとの結果が得られ、有機栽培でむしろリスクが高くなるようです。

 家畜ふんに由来するサルモネラ菌のほかに、大腸菌O-157などのリスクも無視できません。また、植物病原菌が産生する毒素のほかに、感染した作物ではアレルギー性が高まり、アレルギー患者には有機農産物が必ずしも健康に良いとは言えないとする論文もあります。

 イギリスの「Food Standard Agency」(FSA=食品規格庁)は、減塩、低脂肪食などのように科学的根拠に基づいた指導をしていますが、「有機農産物が、より安全、よりヘルシーと言える科学的根拠はまったくない」とコメントしています。そしてイギリスでは、FSAと「Advertising Standards Authority」(広告規格局)により、「有機農産物がより安全、よりヘルシー、より滋養がある」と広告することが禁じられています。ほかにも同様な議論が少なくありません。

 また、カナダ癌(がん)協会は「国民は食品中の残留農薬では実際的リスクにさらされていない」と結論しています。わが国の食品安全委員会も「現行の安全性評価・管理システムが十分機能していることが前提であるが、わが国の食品の安全に関して、農薬によるリスクについては現時点で取り上げるべき課題はない」と言っています。

 すなわち、農薬を使用する慣行栽培でもまったく安全性に問題がないのであって、「有機栽培の方がより安全である、あるいはよりヘルシーである」とは言えないわけです。

  農家が農薬を適正に使っていれば、農産物に残留する農薬のリスクは許容できる。つまり、農家の皆さんが農薬ラベルに書かれていることを良く理解し、適正(間違いなく)使用されていることが一番重要なポイントと言うことになります。

  農林水産省は農薬の使用状況を点検し、2003年度の結果を2004年11月に発表しています。野菜、果実そして茶合計629点の残留農薬を分析した結果、基準値超過はなく、農産物の安全を確認しています。

  しかし適用作物、使用回数あるいは使用時期を間違えた例、周辺への飛散例、散布器具の洗浄不足での汚染例も指摘しています。件数は前年度から大きく減少しましたが、なお2%の農家で不適正使用があり、まだ改善の余地があるとのことでした。
  思い込みや不注意であっても、農薬の不適正使用は許されません。農家が情報や注意喚起を共有し、段階的な改善による撲滅活動を展開する必要があります。生産者と消費者との信頼関係は日々の努力で構築できますが、一つの誤りで一瞬に崩れます。一度崩れると、再び信用を得るまでには多くの汗と長い年月を要するので、十分な注意と対策が望まれます。

 マスコミや科学者は、科学的根拠に留意し、ハザード情報をやたら強調するのではなく、慣行栽培農産物にしても有機栽培農産物にしてもリスクとして議論していただきたい。

 今や極端に偏った食事でない限り、安心できる国内農産物であるはずです

(農薬工業会安全対策委員長 内田又左衞門(日本農薬/環境安全部長))