農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

農薬に関係する法律には、どのようなものがありますか。

「農薬取締法」をはじめ、生産物の安全性、使用場面の環境、保管・廃棄等に関わる数多くの法律が関係しています。

直接に農薬を対象にしている法律は「農薬取締法」ですが、食料生産に使われ、また、田や畑という開放された環境で使用されるので、さまざまな法律が係わってきます。農薬に関係する法律は以下のとおりです。

[農薬取締法]

[毒物及び劇物取締法]

[食品安全基本法]

[食品衛生法]

[環境基本法]

[水質汚濁防止法]

[水道法]

[消防法]

[廃棄物の処理及び清掃に関する法律:廃掃法]

[特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法):化管法、PRTR法]

[化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律:化審法]

[農薬取締法]農薬の定義を定め、その製造(輸入)、販売、使用についての枠組みを定めています。その柱となるものは、登録制度を設けて農薬の規格と製造、輸入・販売者の義務を規定しています。さらに、使用基準を定めて使用者の責務と守るべき事項を明確に規定しています。(農林水産省管轄)

[毒物及び劇物取締法]毒物、劇物の製造、販売や保管管理、廃棄などについて定めています。農薬には少数ですが毒物や劇物に指定されているものがあり、その取扱いはこの法律の対象となります。(厚生労働省管轄)

[食品安全基本法]食品の安全性の確保に関する基本理念や、施策の策定に係る基本的な方針を定めています。食品健康影響評価を行う機関である食品安全委員会は、農薬の食品健康影響評価(ADIやARfDの設定など)を行う役割をもっています。(内閣府管轄)

[食品衛生法]食品の安全性確保のために公衆衛生の見地から必要な規制やその他の措置について定めています。また、食品における残留農薬基準を定めたり、食品衛生監視員による農産物の残留農薬検査の実施等を行っています。残留農薬のポジティブリスト制度の導入は、この法律の改正によるものです。(厚生労働省管轄)

[環境基本法]環境保全についての基本理念を定め、さらに環境保全に関する施策の基本となる事項を設定しています。各種環境基準についても定めており、水質汚濁に関する環境基準(環境基準健康項目、要監視項目)、土壌の汚染に係る環境基準、地下水の水質汚濁に係る環境基準では、各種の農薬について基準値が定められています。(環境省管轄)

[水質汚濁防止法]河川、湖沼、港湾、かんがい用水路等の公共用水域での排水基準を定めています。国が定める一律排出基準と、それより厳しい基準を都道府県が定める上乗せ排出基準があり、何種類かの農薬が対象になっています。(環境省管轄)

[水道法]水道水の水質基準を定めています。農薬については水質管理目標設定項目に位置付けられ、浄水で検出される可能性の高い農薬類が対象農薬としてリストアップされています。なお、ゴルフ場で使用される農薬については、「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」において、ゴルフ場からの排水中の農薬濃度の指針値が示されています。(厚生労働省管轄)

[消防法]発火性又は引火性を有する危険物の取り扱い等を定めています。農薬の中には、有効成分の性質や有機溶剤や乳化剤などの補助成分の性質から危険物に該当するものがあり、消防法による取り扱いや貯蔵の規制を受けます。(総務省管轄)

[廃棄物の処理及び清掃に関する法律]国民においては、その生活上で生じた廃棄物、事業者においては、その事業活動に伴い生じた廃棄物の適正な処理等について定めています。

農薬の空容器は材質にもよりますが産業廃棄物に分類されます。これらは、法律に則って環境汚染の原因とならないよう適正に処理する義務があり、勝手に投棄したり焼却したりすることは禁止されています。また、農業生産に用いられた後に残った使用残農薬は産業廃棄物に分類され、許可を受けた廃棄物処理業者に回収処理を委託することが必要です。(環境省管轄)

[特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法):化管法、PRTR法]有害性のおそれのあるさまざまな化学物質の環境への排出量を把握することにより、化学物質による環境の保全上の支障が生ずることを未然に防止することを目的として制定されました。指定された化学物質を扱う事業者に、排出量の届出と当該物質の情報提供が義務づけられています。

2008年(平成20年)11月21日に政令が改正、公布され、第一種指定化学物質として462物質(それまでは354物質)、第二種指定化学物質として100物質(同81物質)が指定されています。そのうち農薬の有効成分が、第一種指定化学物質に約140物質、第二種指定化学物質に約30物質含まれています。(経済産業省管轄)

[化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律:化審法]新たに製造・輸入される化学物質に対する事前審査制度、上市後の化学物質の継続的な管理措置、化学物質の性状等に応じた規制及び措置(製造・輸入許可、使用制限等)について定めています。

かつて我が国で農薬として使用されたことのある有効成分ではアルドリン、ディルドリン、エンドリン、DDT、クロルデン(またはヘプタクロル)、ケルセン(またはジコホル)の6つが、その性状から第一種特定化学物質に指定されています。しかし、いずれも農薬登録が失効し現在は使われていません。(経済産業省管轄)

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説(2015)』

(2017年4月)