農薬は農作業を軽減したと言われますが、どれくらいの軽減効果がありますか。
例えば、田の草取りでは10アール当たりの労働時間は手作業の約50時間から農薬散布の2時間未満へと25分の1以下に短縮されました。また、除草剤は田の中に入らなくても使用できますので作業自体もたいへん楽になりました。
大変な農作業と言えば、水田の除草が挙げられます。除草剤により腰をかがめた無理な姿勢での手取り除草がなくなり、労働時間の短縮以上の労働軽減効果がありました。また、農薬を処理する新しい方法、例えば、殺虫剤や殺菌剤を水稲の育苗箱に処理したり、水田の畦から除草剤を投げ込むなどの施用技術が確立して、散布作業もかなり軽減されました。
除草時間は10アール当たり2時間以下に
図1は戦後の水田稲作での主要な作業時間の変化です。除草剤導入以前の1949年(昭和24年)と導入後の1995年(平成7年)を比較すると、総労働時間は5分の1以下になりました。とくに10アール当たりの除草時間は50.6時間から2.0時間と25分の1になりました。これは除草剤の導入による効果です。さらに2010年には除草時間は1.4時間になっています(図1)。除草が薬剤散布で済むことは、無理な姿勢での手取りがなくなり、労働時間の短縮以上の労働軽減効果があったといえるでしょう。
総労働時間のなかで各作業が占める割合も変化しました(図1)。1949年は、稲刈り・脱穀(33.4%)、除草(23.4%)、田植え(16.1%)の合計が総労働時間の4分の3近くになっていました。その後、機械化が進んでいずれも比率が低下、1960年を境に除草と田植えが逆転、1992年には稲刈り・脱穀(24.1%)、田植え(14.4%)、除草(4.9%)の順になりました。
省力化を目的とした農薬も
除草剤以外にも省力化を目的とした農薬があります。りんごやみかんなど果樹では果実を充分に育てるために、余分な花や幼果を間引く摘花/摘果がおこなわれます。この作業は一つ一つ手作業でおこなう場合と薬剤を使う場合があります。摘花/摘果剤は植物ホルモンの一種です。
摘果はりんご生産では全労働時間の約3分の1を占める重要な作業で、そのうえ、5、6月に集中しています。人手による作業では、まずおおまかな粗摘果をし、6月の後半までに仕上げ摘果をします。摘果剤を用いると粗摘果がほとんど不要になり、作業時間が30~50%短縮されるといわれます。このため、摘果剤を利用して人手不足を補うことが行われています。
(2017年4月)