農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

農薬はなぜ必要なのですか。

病害虫や雑草に弱い農作物の収量と品質を維持・確保したり、農作業の負担を減らすため、農薬は必要不可欠な資材です。

農業では、利用したい特定の作物を人為的な環境で単一栽培するため、病害虫や雑草が発生しやすく、何も手をかけないと一定の収量と品質が維持・確保できません。病害虫や雑草を防除するのに有効かつ簡便で経済的な手段が農薬です。また、除草や摘花/摘果など農作業の負担を減らすためにも、農薬は必要不可欠な資材です。

田や畑及びハウスは人為的で単純な生態環境

害虫は食べる植物に好き嫌いがあり、虫ごとに加害する植物の種類が限られています。病気も同様で作物ごと病気を起こす菌は異なっており、これを宿主特異性といいます。また、作物の栽培条件によって、害虫や病気が多く発生することがあります。農業は、同じ種類の植物を一か所に大量に集め、人為的な環境をつくり育てています。そのため田や畑、農業用ハウスは、その作物を好む害虫や病原菌にとっては、まさに天国といってもよく、いったん害虫や病気が発生した場合、何の対応もとらなければ被害も大きくなります。もちろん雑草にとっても、肥料や水が十分与えられる田や畑はとても居心地のよい場所です。とくに日本のように雨が多く、高温多湿な気候・土地柄では、病害虫や雑草が発生しやすいという宿命にあります。

病害虫のダメージを受けやすい栽培作物

作物は、野生の植物の中から人間にとって利用価値の大きい形質を重視し、たとえばデンプン質の多い実をつけるもの、油分を多く含んだ種子をつけるもの、甘味のある果実をつけるものなどを選抜し、品種改良されてきたものです。

イネを例に取れば、もともとは南アジアの低湿地に自生していました。野生のイネは、穂につく粒が少なくて、小さく、食味も劣っていました。長い年月をかけ、たくさん粒をつける種類、粒の大きい種類、味のよい種類を選抜し、それらをかけ合わせて、現在あるイネの品種が生み出されてきました。

現代の栽培種の多くは、植物の特定の形質を中心に改良してきたことや、自生地とは異なる環境条件で栽培されることもあり、人の世話をより必要とする傾向になっています。

農薬は効き目が確実、使い方も簡便

農作物を加害する病害虫や雑草の被害を防ぐためには各種の方法があります。なかでも農薬は他の方法と比べて、安定した効果を発揮し、使い方も簡便なことから、ここ半世紀間は防除手段の主力となっています。農薬は農作物を生産するうえで必要不可欠な生産資材といわれるところです。

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』

(2023年2月)