農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

農薬の使い方について、どのような指導や教育がされているのでしょうか。

国、都道府県、関係団体、流通事業者や農薬工業会等が連携して、農薬適正使用の指導者を育成したり、農家等への広報・啓発活動を進めています。

農薬安全使用の指導・教育については、「国都道府県」、「農業団体」、「流通関係」等がそれぞれの立場で、互いに連携や協力が取られ実施されています。具体的には、使用者への直接的な指導・教育、広報活動のほか、地域における農薬安全使用の中心となる指導者の育成に力が入れられています(図参照)。

国による農薬危害防止の取り組み

農林水産省では、毎年農薬使用が本格化する6月から、厚生労働省と都道府県などとの共催で「農薬危害防止運動」を実施しています。この運動は農薬使用者、毒劇物取扱業者、農薬販売者、ゴルフ場関係者などを対象に農薬取締法、毒物及び劇物取締法などの周知をし、また農薬の性質などについての正しい知識を広く普及させることにより、農薬事故の発生を抑え、安全な農作物の生産、周辺の生活環境の保全をはかることが目的です。

具体的には、「農薬による事故の主な原因及び防止のための注意事項」についての資料の作成と広報活動、小中学校児童生徒への教育、農薬使用者などを対象とした安全使用についての講習会の開催、農薬使用者などへの立ち入り調査などが含まれています。

地方自治体による現場指導

また、1993年(平成5年)より、都道府県に「農薬安全使用推進協議会」が設置され、消費者への情報提供も含め農薬安全使用などの啓発を行っています。

日常的な農薬使用についての指導は、都道府県の病害虫防除所などが行っていますが、それに加え、1987年(昭和62年)には、都道府県に「農薬管理指導士」制度が導入され、この資格をもった農薬販売業者による販売窓口での助言や、防除業者による防除現場での指導などが行われています。

農業団体・流通による研修プログラムや活動など

農業団体では、全国農業協同組合連合会(JA全農)が1971年(昭和46年)から安全防除運動を展開しています。運動の柱は、(1)農家の安全、(2)農産物の安全、(3)環境の安全で、農家の安全対策となる保護具の着用、環境に配慮した農薬の使用方法の推進や農薬の適正使用による農産物づくりなど、さまざまな活動を行っています。そのなかには、トレーサビリティの基本になる防除日誌の記帳運動も含まれています。

JA系以外の農薬流通業者の組織である全国農薬協同組合(全農薬)では、一定の研修プログラムを修了し、農薬安全コンサルタントの資格を得た人を中核とした、全国農薬安全指導者協議会(安全協)を結成しています。安全協は,農薬の安全使用、適正使用を推進するために、小売商を対象に「安全指導員」養成研修会の実施などをおこなっています。

ゴルフ場については、1989年(平成元年)に設立された「(公社)緑の安全推進協会」が、ゴルフ場、公園緑地などの非農耕地全般についての農薬の適正使用や、緑の保全管理技術の向上をはかるために、ゴルフ場のグリーンキーパー、請け負い防除業者などを対象に講習会を開き、「緑の安全管理士」の認定をおこなっています。

国内の主要な農薬製造業者を中心として組織された農薬工業会では、農薬についての正しい知識の普及啓発のため、主要なステークホルダーに対し、農薬の役割や安全性について継続的に広報活動(「農薬ゼミ」の開催等)を実施したり、JAや農家のための研修の機会に講師(農薬専門家など)を派遣し、正しい農薬の知識を教育することも実施しています。また、課題に対する農薬業界の立場を明らかにし、その主張をタイムリーに発信することにしています。また、定期的にクロピクなどの危害防止に関する講演会を実施しています。更に、情報の発信・コミュニケーションの手段としてホームページ、書籍(なるほど!なっとく!農薬Q&A)及びDVDの活用を図っています。

図1.植物防疫組織図
図1.植物防疫組織図
参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説 2021』

(2022年9月)