農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

どんな農薬が年間どのくらい使用されているのですか。

農薬の使用量について統計データはありませんが、出荷量から推定することができます。平成30農薬年度(平成29年10月~平成30年9月)では、出荷量は22.3万トン(注)、出荷金額は3,704億円でした。

(注)出荷数量は重量のトンで示しています。液体製剤は1kLを単純に1トンに換算し総量に合算されています。

用途別では、下表の通り、出荷金額・数量とも殺虫剤(殺虫殺菌剤を含む)が最も多く、次いで除草剤、殺菌剤の順となっています。

平成30農薬年度生産・出荷表(単位:トンまたはkL、百万円)

※スクロールにて全体をご確認いただけます。
生 産 出 荷
数量 金額 数量 金額
殺虫剤 76,132 117,073 73,174 111,603
殺菌剤 41,872 78,249 39,287 73,485
殺虫殺菌剤 17,367 36,059 16,648 34,966
除草剤 87,625 147,148 81,691 137,071
殺そ剤 290 296 309 313
植物成長調整剤 1,479 7,087 1,496 6,078
補助剤 2,807 3,698 2,798 3,657
その他 8,003 3,240 7,804 3,150
235,575 392,850 223,207 370,323

(農薬要覧2019より)

年次別の推移を見ると、農薬の生産量は昭和55年農薬年度(1980年)の68.4万トンをピークに減少傾向をたどっています。生産金額は平成8農薬年度(1996年)をピークに、やや減少し横ばいとなっています。(図1)

農薬の生産金額の推移
図1.農薬の生産金額の推移(農薬概説2020 図5-6より)

用途別生産金額の推移では、殺虫剤が昭和30年代に65%を占めていましたが、平成30農薬年度(2018)では29.8%となっています。殺菌剤は、おおよそ20%台で推移しています。除草剤は昭和34年頃から急激に増加し、昭和55年には殺菌剤を上回り、平成30農薬年度(2018)では37.5%となっています。(図2)

農薬の用途別生産金額の推移
図2.農薬の用途別生産金額の推移(農薬概説2020 図5-7より)

粉剤、粒剤など農薬の剤型別生産量の推移では、昭和44農薬年度(1969年)には、約40万トンと、農薬全生産量の58%を占めた粉剤は、ドリフト(飛散)などの問題から大幅に減少し、現在は約1万9千トンの8.4%の生産量となっています。代って、面積当たりの使用量がより少ない粒剤や乳剤、液剤のシェアが伸び、平成30農薬年度(2018年)では粒剤が約8万6千トン、乳剤・液剤が約5万9千トン、水和剤(フロアブル剤等を含む)が約3万トンとなっています。(図3)

近年の農薬生産量の減少は、粉剤の減少が大きな要因となっています。また、粒剤も、水稲用除草剤の一発処理剤(一度の散布でイネ科雑草と広葉雑草を同時に防除できる製剤)、1キロ粒剤(10a当たりの標準処理薬量が1kgである製剤)の普及により、その使用量が減少しています。

農薬製剤別の生産量推移
図3.農薬製剤別の生産量推移(農薬概説2020 図5-8より)

また、農薬の毒性別生産金額割合の推移をみると、毒物および劇物に指定された農薬は減少傾向にあります。平成30農薬年度(2018年)では、毒物・劇物に該当しない普通物が約90%を占め、その他、劇物は約10%、毒物は1%未満となっています。(図4)

農薬の毒性別生産金額割合の推移
図4.農薬の毒性別生産金額割合の推移(農薬概説2020 図5-9より)

農薬は主に農耕地で使用されますが、日本では就農人口の減少、減反などの影響により、耕作面積が年々減少し、ピーク時の昭和36年(1961年)には609万haであったのに対し、平成26年では415万haにまで減少しています。防除が必要な農耕地が減少したことにより、農薬の使用量が減少したと考えられます。

一方、就農人口の減少や高齢化から、防除の省力化、効率化が求められ、また、消費者の求める減農薬志向に応えるかたちで、幅広い病害虫や雑草に効果を示す農薬や、長期間効果が持続する農薬、散布量が少なくても効果を示す高性能な農薬等が開発されました。

以上のように農薬の使用量の減少は、農薬に関する技術革新の成果によるところも大きいのです。

参考文献
*農林水産省監修『農薬要覧』、日本植物防疫協会
*日本植物防疫協会『農薬概説』

(2021年1月)