農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

無登録農薬や農薬の登録制度など、「登録」という言葉がでてきます。登録とはどういうことですか。

農薬取締法の規制により、特定農薬を除く全ての農薬はその効力、安全性、毒性、残留性などに関する試験成績を提出して審査を受け、行政庁(農林水産大臣)の承諾を取得する必要があります。この行政庁による承諾を登録と呼びます。登録を受けていない農薬は、日本国内では製造、販売、使用ができません。

「登録」とは行政法上の用語ですが、法令に基づき、自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為(「申請」と言います)を行政庁に対しておこない、行政庁が承諾した結果の一種を指します。なお、行政手続法第二条第三号によると、「申請」とは、『法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう』とされています。

農薬は農薬取締法の登録制度によって規制がなされます(2002年に創設された特定農薬を除きます)。登録、つまり行政庁(具体的には農林水産大臣)の承諾を受けなければ、日本国内では農薬として製造、販売、使用ができません。

登録を受けた農薬は、通し番号として「登録番号」(例:農林水産省登録第99999号)が付与され、製造時、加工時、又は輸入した農薬の販売時には、登録番号の表示が義務付けられています。特定農薬を除き、農薬であるものは、必ずこの登録番号があることで識別できます。

農薬取締法は、1948年(昭和23年)に農薬の品質の保持向上をはかり、農業生産の安定に役立つことを目的として制定されました。その柱は、「登録制度」、「表示制度(ラベル表示)」、「市販品の検査」などです。

1971年(昭和46年)には、国民の健康の保護と生活環境の保全という目的が加えられ、残留農薬対策を主な内容として大改正がおこなわれました。具体的には登録に関する検査が強化され、安全性の審査がより厳重になりました。また、2002年(平成14年)には、無登録農薬の製造および輸入の禁止、虚偽宣伝の禁止、登録外作物への使用の規制、および違反についての罰則が盛り込まれ、食品の安全性対策が強化されました。さらに翌2003年(平成15年)には、無登録農薬や販売禁止農薬の回収に関する規定、農薬でない除草剤の表示義務についての規定が加えられました。

農薬の適正で安全な使用のための基本的枠組み

登録制度は、農薬の適正で安全な使用を実現するための最も重要な手段です。

農薬登録の申請には、品質を確認するための資料とともに、効力や作物に対する安全性のほか、毒性および残留性などに関するさまざまな試験成績の提出が必要です。提出資料に基づいて農林水産省(実務は独立行政法人・農林水産消費安全技術センター農薬検査部がおこないます)による品質、薬効、農作物への安全性の審査のほかに、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、環境省、農林水産省で、人や環境に対する安全性の検討・評価がおこなわれます。不都合な問題があれば、登録は保留されます。

有効期間は3年です。従って、審査をパスし登録されても、再登録の申請がなければ自動的に失効します。また、再登録にあたっても、その間に新しい科学的知見が明らかになった場合、それについての試験成績の提出が求められます。また、登録は、剤型別、銘柄別、会社別に受けなければなりません。

登録を受けていることは、その農薬を使用する基準が明確になっているということです。その内容は使用基準として、容器に貼付されたラベルに記されています。

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』

(2017年6月)