そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

残留基準はなぜ国によって異なっているのですか。

各国の農業事情や食生活の違いなどによるものです

残留農薬の基準を個別に比較した場合、日本と諸外国との気候風土(高温多湿等)や害虫の種類の違いなどにより、農薬の使用方法や検査する部位が異なる(玄米と籾米など)ことなどから、基準値が異なる場合があります。そのため、残留農薬の基準について、日本の基準が厳しい場合があれば、諸外国または国際基準の方が厳しい場合もあり、どちらが一概に厳しいとは言えません。

残留農薬の基準の設定に当たっては、物質ごとに、毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量(ADI:許容一日摂取量)を食品安全委員会が設定した上で、これを基に農薬等として使用される物質の推定される摂取量がこのADIを超えないよう、食品ごとの基準を設定しています。

このADI設定の考え方は国際的に共通していますが、食品ごとの基準については、各国がそれぞれの国の事情に基づいて定めています。しかし、①各国の農業事情(作物、栽培方法、気候など)の違いにより農薬の使用法は異なることや、②食生活等の違いにより摂取する食品の種類や量が異なることなどから、同じ作物でも残留基準値が各国間で必ずしも同じにはなるわけではありません。最近、食料輸出国が自国の基準に従って農薬を使用し、その国の残留基準値をクリアしている農産物を輸出したところ、輸入国の残留基準に抵触したという問題が起きています。その問題を是正するため、残留基準についても国際的な統一(ハーモナイゼーション)が進められており、日本でもいくつかの農薬の残留基準は国際基準に沿って設定されています。ただし、摂取量等においてその国の独自性が高い作物(例えば日本における米など)は、国際基準を採用せず独自の残留基準が設定・維持される場合もあります。

食品の輸出入の円滑化のため、添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品、有機農産物などの規格基準を国際的に統一する作業が進められています。1995年に、国際的な貿易ルールを検討する国際機関としてWTO(世界貿易機関)が発足し、WTO協定が発効されています。日本もWTO協定を批准しています。この協定のなかのSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)では、各国の残留農薬基準を、FAO/WHOの食品規格委員会〔Codex(コーデックス)委員会〕が定める国際基準(Codex基準)にあわせることを目標としています。ただし、科学的に正当な理由があれば、その国独自の基準を決めることができるとされています。残留農薬の国際基準(Codex MRL)は、原則、ADI(1日許容摂取量)に基づいた推定1日摂取量(EDI)方式により妥当性が確認された上で、設定されています。この方式は日本やアメリカなどで残留農薬基準が設定されるときに用いられる方法とほぼ同じです。

なお、Codex委員会の定める残留農薬基準については、多くの国の農薬使用方法に配慮した基準であることから、数値が必要以上に高くなりやすい傾向があるとの批判があります。また同じ食品でも、国によって食べる量が違うことが多いため、世界各国で一律に国際基準を使うのは無理があり、国ごとの摂取量に応じた残留農薬基準が必要と批判する意見もあります。

参考文献
*食品衛生研究会監修『食品中の残留農薬Q&A』2001、中央法規
*食品に残留する農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)について
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/060516-1.pdf

(2017年3月)