そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

輸入食品中の残留農薬が気になります。検査体制はどうなっていますか。

輸入食品については、輸入時は国、輸入後の流通段階では地方自治体がチェックしています。

日本に輸入される食品は、輸入時は国(検疫所)が監視業務を実施し、輸入後の国内流通時には国産品と同様に地方自治体が監視業務を行っています。

厚生労働省では、日本全国の港および空港に設置された31ヶ所の検疫所に、食品衛生監視員399名(2012年)を配置しています。食品衛生監視員は、監視業務として、輸入食品等の輸入届出について、食品衛生法の適否の審査、年間計画に基づくモニタリング検査によって違反がないかの監視、違反可能性の高いものに対する命令検査の実施等による輸入食品等の安全性確保の業務を担っています。例えば、2019年の輸入届出件数は、約254万件であり、このうちの8.5%にあたる217,216件を実際に検査した結果、763件が法違反であったことから、積み戻し、廃棄又は食用外転用等の措置がなされました。

また、市場の抜き取り検査では、2018年には輸入食品も含めて3,122,565件が検査され、うち農薬が検出されたのは全体の0.34%でした。

食品の輸入の手続きは以下のようなものです。

港や空港で食品衛生監視員がチェック

輸入される食品は、食品衛生法第27条に基づき検疫所に届出が義務付けられ、法に照らし合わせて適正な食品かどうかを食品衛生監視員が審査や検査をします。港や空港に着いた輸入食品はまず保税倉庫に納められ、穀物、果物、野菜、種子、樹木などは、農林水産省の植物防疫官により植物検疫をうけ、有害病害虫が発見された場合は積み戻しや燻蒸処理がされます。家畜などの動物検疫も同様です。輸入食品は、このプロセスを経た上で検疫所に送られます。検疫所の食品衛生監視員は、食品等輸入届出書に記載されている輸出国、輸入品目、製造者・製造所、原材料、製造方法、添加物の使用の有無などをもとに、以下の項目について、書類を審査します。

  1. 食品衛生法に規定される製造基準に適合しているか。

  2. 添加物の使用基準は適切であるか。

  3. 有毒有害物質が含まれていないか。

  4. 過去衛生上の問題があった製造者・製造所であるか。

そして、さらに検査の必要がある場合は、実際に食品の変色や異臭、表示の確認、必要に応じて試料を採取して化学分析、細菌検査などがおこなわれます。

こうした検疫所の食品審査に合格すると、税関に送られ、税金を納めると輸入が認められ市場に出ることになります。

不合格の場合は輸入できず、廃棄や原産国に送り返されます。

このように、輸入食品には書類審査と一部ではありますが実際の検査という二重のチェックがおこなわれています。2019年の輸入届出件数および重量は、2,544,674件(前年比2.5%増)、33,272,955 トン(前年比2.6%減)。このうちの8.5%にあたる217,216件が実際に検査されました。そして、763件が食品衛生法不適格となり、積み戻しまたは廃棄等の措置が行われました。うち農産食品が238件、30,393トンでした。

違反の種類別にみると、残留農薬も含まれる「食品・添加物等の規格基準不適格」が最も多く473件(延数)、次いで「販売等を禁止される食品・添加物(腐敗、変敗、かびの発生、毒魚の混入等)」が224件(延数)、「添加物等の販売等の制限(指定外添加物の使用等)」が59件(延数)、「器具、容器包装の規格基準不適格」が40件(延数)、となっています。

検疫所の輸入食品・検疫検査センターまたは検査課にて、実施されたモニタリング検査が行われています。同一の輸出国からの農水産物で、同じ農薬が2回以上基準値を超えた場合は、食品衛生法第26条第3項により当局より検査命令が出されます。その場合は、すべての当該輸入貨物について厚生労働大臣の指定検査機関において検査が実施されます。

市場に出ても保健所などの抜き取り検査が

検疫所の審査、検査を通り市場に出たあとでも検査は行なわれます。全国の保健所や検査機関では、食品衛生法にもとづく市場からの食品の抜き取り検査を定期的に行ない、食品添加物や残留農薬について調べています。これは国産・輸入を問わず店頭に並んでいるすべての食品が対象です。

厚生労働省では、この結果を全国集計していますが、2018年の結果では、輸入食品も含めて3,122,505件が検査され、うち農薬が検出されたのは10,644件(全体の0.34%)でした。

農薬が検出された10,644件の内訳は、国産3,377件、輸入7,267件です。そのうち基準値をオーバーしていたのは213件、内訳は国産47件、輸入166件でした。基準値を超えた農産物は回収・廃棄などの措置がなされます。

※スクロールにて全体をご確認いただけます。
年度 検査数
国  産 輸  入
2014 1,195,272 1,940,341 3,135,613
2015 1,258,542 1,722,335 2,980,877
2016 1,213,404 1,803,789 3,017,193
2017 1,273,378 1,820,355 3,093,733
2018 1,330,328 1,792,177 3,122,505
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年度 検出数
国産 % 輸入 % %
2014 6,107 0.51 7,983 0.41 14,090 0.45
2015 3,521 0.28 7,162 0.42 10,683 0.36
2016 3,396 0.28 7,023 0.39 10,419 0.35
2017 3,323 0.26 7,161 0.39 10,484 0.34
2018 3,377 0.25 7,267 0.41 10,644 0.34
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年度 基準値超過数
国産 % 輸入 % %
2014 38 0.003 244 0.013 282 0.009
2015 44 0.003 187 0.011 231 0.008
2016 43 0.004 171 0.009 214 0.007
2017 34 0.003 140 0.008 174 0.006
2018 47 0.004 166 0.009 213 0.007

厚生労働省「食品の残留農薬等検査結果について」(全食品)より引用

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html

参考資料「令和元年度 輸入食品監視統計」
https://www.mhlw.go.jp/content/000663993.pdf

(2022年3月)