そのまま食べても大丈夫?

残留農薬や食品における安全基準などについて

野菜や果物に残留した農薬を調理の段階で落とすことができますか。

普段どおりに調理いただければ落とせます

農薬の種類や農作物での残留場所によって程度は異なりますが、落とすことはできます。たとえ野菜や果物に農薬が残っていても、もともと健康に影響を及ぼすような量ではないので、そのまま食べても問題はありません。普通は水で汚れを落として皮をむいたり、また、熱を加えて調理をしたりするのでさらに減少します。神経質にならず、普段どおり洗って料理していただければ健康を害することはありません。

洗浄や調理によりどれだけ農薬は減るのでしょうか。多くの研究報告がありますが、ここでは伊藤らが行った実験の結果をご紹介します。

実験では、結果がよく分かるように、わざと農薬の溶液に漬けたり塗ったりした野菜や果物を使って、「水洗い」「皮むき」「揚げる」「炒める」「ゆでる」の効果をみました。グラフは主な結果です。数字は、たとえば「揚げる前」の農薬の量を100として、「揚げた後」に残っている農薬の割合を示しています。

通常は調理する前や食べる前には材料を水洗いしますが、それだけでも水に溶けやすい農薬などはある程度減ることがわかりました。最も効果のあった方法は、皮をむくことです。ほとんど農薬は取り除けました。農薬は作物の表面に留まることが多いためです。調理法で効果の大きかったのは「揚げる」ことです。ついで「炒める」、「ゆでる」の順でした。

国や全国の自治体による調査結果が示すように、日本国内で生産される農作物からは農薬は検出されないか、検出されてもごくわずかの量です。実際、野菜や果物をそのまま食べても健康への影響は考えられないレベルの量です。しかし、よく洗って土や汚れをとるのは衛生面からも必要です。また、料理の仕方を工夫すれば豊かな味の世界が広がるのではないでしょうか。

図1 水洗い
図2 ゆでる
図3 皮むき
図4 揚げる
図5 炒める
  • (注1)この実験は、結果を明確に把握するため野菜に農薬を添加しておこないましたが、店頭の野菜や果物を材料にした分析とも結果はよく一致しています。それぞれの実験、分析の結果は、日本食品化学学会誌2巻2号pp.97~101(1995)、同3巻1号pp.57~63(1996)、同5巻1号pp14~17(1998)に掲載されています。
  • (注2)上のグラフは現在日本で登録がある農薬の一部を抜粋しています。なお、登録がない組合わせでも実験されています。
参考文献
*杉本達芳『残留農薬のここが知りたいQ&A』1995、日本食品衛生協会
*梅津憲治『農薬と人の健康』1998、日本植物防疫協会

(2022年3月)