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農薬は人体に蓄積されていくのではありませんか。
いいえ、現在、人体に蓄積性のある化学物質は農薬として使用されていません。
1970年台始めに、DDT、BHC、アルドリンやディルドリンなどの農薬成分やPCB(工業化学物質)が、環境中での残留性や、自然界での食物連鎖による生物濃縮、人体への蓄積など将来的な影響への懸念から、国際的(DDTの一部用途を除く)に製造・使用中止になりました。それを境にして上述のような問題のある化学物質や農薬は市場より消え、また開発もされなくなりました。
尚、使用禁止となったDDT(とその代謝物であるDDE)やBHCなどのその後の影響については、世界各地で人体や野生生物の体内残留値の追跡調査(バイオモニタリング)が行われています。それらの結果からはほとんど例外なく、1970年台から1990年に掛け顕著に濃度が低下し、その後も低レベルで推移してきていることが報告されています。
農薬成分の動物での代謝・分解と蓄積性を調べる
動物の体内に化学物質が入ると、その一部は体内で直接作用したり、体内にあるいろいろな代謝系の働きによって分解代謝したりそのまま排泄されたりします。特に体内において化学物質の代謝、排出、解毒については肝臓の役割が大きく、人体の化学工場に例えられたりします。農薬が体内に入った場合、主には下記のような経路を辿ると考えられます。
農薬の毒性試験においては、このような動物体内での農薬成分の挙動を調べるために、「動物代謝試験」(正式には動物の体内での代謝に関する試験)の実施が義務付けられています。
この試験は、実験動物(通常はラット)を用い、放射性同位元素で標識された化合物などを投与します。検査項目として、農薬成分が体内に吸収される量や速度(排泄量、血中濃度の解析)、主要器官・組織での農薬成分および代謝物の分布や蓄積性(濃度および分布率の経時的変化)、排泄経路や排泄の程度(量、速度)、代謝経路や代謝の程度(量、速度)などが定量的に調べられます。通常は、単回の投与で試験されますが、蓄積性が示唆された場合には連続投与によりその可能性が確認されます。
使用禁止になった農薬の野生生物での体内濃度変化
日本における野生生物での残留性有機汚染物質(POPs)の体内濃度の年次変化に関するモニタリング調査の結果は、環境省が発表している「平成18年度モニタリング調査結果」に詳しく報告されています。昭和53年度から続けられているスズキおよびムラサキガイを中心とする貝類2種、魚類7種および鳥類2種の生物モニタリングの結果を、DDTとディルドリンを参考に締めると、図1、図2のように、体内濃度が調査開始時点より始めの10~20年で大きく低下し、その後も暫時低下していく傾向が見られます。
この傾向は、DDTの代謝物や他に禁止になったPOPs化合物に共通して見られています。
図1
図2
(2022年3月)