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2018年賀詞交歓会を開催

 2018年賀詞交歓会を1月5日(木)12時半から、東京・千代田区大手町の経団連会館で開催した。出席者は会員各社の他、農林水産省などの関係省庁、(独)農林水産消費安全技術センター、農薬学会、関係団体、報道関係者など約380名となり、賀詞の交換や新年の抱負などが語りあわれた。

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◆西本会長の挨拶

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 新年明けましておめでとうございます。皆様には、ご家族ともどもお健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

 昨年の世界の農薬業界は、2015~2016年と2年にわたり続いていたマイナス傾向に歯止めがかかるか注目されていますが、最大市場であるブラジルはマイナス成長の見込みであり、北米・西欧市場も厳しい状況が続くなど予断を許さない状況です。中長期的には、開発途上国の人口増加と経済成長を背景に、農業生産の伸びと共に農薬市場も成長軌道に戻ることが期待されています。一昨年から始まりましたマルチ企業のメガM&Aによる再編もまだ進行中ではありますが、まさに世界の農薬業界では新しい時代が始まろうとしています。

 一方、国内に目を向けますと、昨年は、相次ぐ台風等による暴風・豪雨や東日本の低温・日照不足等の厳しい気象でしたが、適切な防除が図られたことにより、水稲の作況指数は、全国平均100と「平年並み」でした。また、野菜分野では、一昨年、西日本で甚大な被害をもたらしたタマネギべと病は、発生予察に基づく徹底した防除対策により大きな被害の発生はありませんでした。高品質な農産物を安定的に生産するためには、病害虫の早期発見とともに農薬による適切な防除が必要であることが再認識された次第です。この結果、2017農薬年度は売上前年比101.8 %の微増となりました。また、年末に発表された統計では農業総産出額が16年ぶりに9兆円を超え、果樹・野菜・花卉の農業所得が13.8%増加と報じられました。ここ数年の農業改革が具体的な成果に結びつき、このトレンドが持続することを期待しております。

 農業行政では、一昨年11月に政府決定された「農業競争力強化プログラム」に基づき関係府省で様々な取組みが始まり、昨年8月には農業競争力強化支援法が施行されました。農薬については、登録申請に係わる通知の一部見直しにより、原体規格の設定や果樹類の作物群登録の導入が行われました。さらに「農薬取締行政の改革」として、最新の科学の発展に対応するための体制として再評価制度の導入等が進められつつあります。農薬工業会といたしまして、農薬の一層の安全性を確保する体制構築に協力してまいりますとともに、日本の農業にとってより良いシステムを構築することにつながるよう関係府省と意見交換を進めていく所存です。

 日本の農業競争力を強化するために農薬業界の使命は、高品質な農薬を提供することで農業の生産性を高めてもらうことにあると考えております。農業競争力強化支援法でも「良質かつ低廉な農業資材の供給」が求められています。価格ばかりが注目される傾向がありますが、単位面積当りの生産性を見れば、日本の米の生産で農薬が占めるコストは7%弱であり、これによって労務費が削減され、農産物の付加価値向上にもつながり、最終的に農家の収入が増えることが大事だと思っております。

 世界の人口は現在の70数億人から2050年には90億人を超えるといわれています。人の数が増えるだけでも食料需要は35%増えます。さらに食肉消費の増加にともない飼料用穀物の需要が増えるので、食料は今より70%増産する必要があるとされています。しかし農耕地面積、利用可能な水等の資源は限られており、いかに農業の生産性を上げていくかが大きな課題となっています。これを達成するためには、肥料や優良な種子、かんがい設備の整備などとともに、農薬が果たすべき役割も大きいと考えております。そのため、当会は将来ビジョン「JCPA VISION 2025」活動として、「食料生産の重要性と農薬の役割」についてナレーション付の動画版を作成し、会員周辺、農業者や農薬流通の方々、アカデミアなどの各方面への情報発信を積極的に行っています。

 また工業会では2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献についても議論を始めております。最近日本でもSDGsの認知度が高まってきています。SDGsには17の目標があり、発展途上国の課題解決だけでなく、先進国も含めた地球全体の課題に取り組むことが謳われています。キーワードは「人間、地球、繁栄、平和、パートナーシップ」であり、すべての人々の生活を大いに改善し、私達の世界をより良いものに変革することを目指しています。先に紹介しました当会のビジョン活動は、このSDGs達成の取組みと合致しています。当会の活動を着実に実行することで、持続可能な社会の実現に大きく貢献していきたいと考えております。

 本年の干支は戊戌(つちのえいぬ)で、「何を取って何を捨てるのかを明確に定めるのが大事な年」と言われています。当会としては、発展させてきたビジョン活動とSDGsを関連付け、目標をより明確にする年にしたいと思います。皆様方の引き続きのご支援、よろしくお願い申し上げます。

 最後になりましたが、本日ご参加いただきました各社・各団体の益々のご発展と、ここにご列席の皆様方のご健勝、ご活躍をお祈り申し上げますとともに、新しい年が明るく充実した年となりますよう祈念いたし、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。