農薬工業会ニュース

ミツバチ被害事故に関する農薬工業会の見解について

2014年12月
(2022年9月改訂)

昨今のミツバチ被害事故に関するメディア報道については、ミツバチが農業生産に果たしている役割の重要性が社会に広く知られていることもあり、社会的に高い関心を呼んでいるところです。このことについて、当会としての見解と対応を以下に述べます。

ミツバチ群数の年次推移から、近年でのミツバチ群数の著しい減少はありませんが、農薬の直接暴露に起因すると推定される被害事故が発生しています。

農薬の使用に際しては製品ラベルに記載された注意事項を遵守するとともに農薬使用者や養蜂家等が緊密に情報交換して必要な対策を講じることで、ミツバチに対する被害事故は軽減できるものと考えております。

農薬工業会では農薬によるミツバチの被害を防ぐために、農薬使用者が農薬散布の際に注意すべき重要な点を示したチラシを作成し、2015年度以降、農協や農薬販売店を通じて配布しています。

当会といたしましては、各関係団体等との連携を図りミツバチの被害を軽減するための施策に積極的に協力していくとともに、被害防止の観点から更なる施策の改善検討にも協力する所存です。

【主なポイント】

  • 日本では、水稲に使用された殺虫剤が直接ミツバチにかかることで死亡を引き起こした可能性のある事故が、農林水産省などから報告されています1-2)。これら報告によると、ミツバチ被害事故の原因は「直接暴露」であり、農家と養蜂家間の連携が不十分であったことがその原因の一つと推察されています。
  • 被害事故の発生様態は米国で報告されている蜂群崩壊症候群(CCD:Colony Collapse Disorder)*とは異なるものでした。なお、日本では蜂群崩壊症候群(CCD)は確認されていません1-3)
    *働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなりミツバチの群れが維持できなくなってしまう現象。
  • 「被害に関する認識の共有」及び「情報交換の徹底」が被害軽減には不可欠であり、この認識のもと、被害軽減のための対策は地域・実情に応じて実行される必要があります。
  • 2015年度に農林水産省が蜜蜂被害軽減対策を実施してから、蜜蜂被害事例報告件数は、2015年度50件、2016年度30件、2017年度33件、2018年度21件、2019年度43件、2020年度29件、2021年度は15件となり、蜜蜂飼育戸数の1%未満の被害事例件数が継続されています1-4)
  • 図1に示す様に、1985~2000年まではミツバチの飼育戸数の減少と連動する形でミツバチ群数の減少がみられますが、2000年以降のミツバチ群数はほぼ一定を保ち、2010年以降はゆるやかに増加してきています5)
  • 農薬のなかで、特にネオニコチノイド系殺虫剤の使用がミツバチの減少に係わっているとの指摘もありますが、同じく図1に示す様に、1993年以降のその出荷量6)とミツバチ群数に相関は認められません。
図1 ミツバチの飼育動向(「養蜂をめぐる情勢」5)を基に作成)

図1 ミツバチの飼育動向(「養蜂をめぐる情勢」5)を基に作成)

  • 1985~2000年までミツバチ群数の減少がみられますが、ミツバチの飼育戸数の減少と関連していると考えられます。2010年以降ミツバチ群数及びミツバチの飼育戸数は増加で推移しています(2013年以降の飼育戸数の急増は届出義務を趣味養蜂にも拡大したため)5)
  • 1993年以降ネオニコチノイド系殺虫剤が使用されていますが、その出荷量6)とミツバチ群数に相関は認められていません。

参考文献

  1. 農林水産省プレスリリース(2016年7月7日)農林水産省消費・安全局「蜜蜂被害事例調査(平成25年~27年度)の結果及び今後の取組について」
  2. 農研機構プレスリリース(2014年7月18日)「夏季に北日本水田地帯で発生が見られる巣箱周辺でのミツバチへい死の原因について」
  3. 農林水産省消費・安全局農薬対策室(2016年)農薬による蜜蜂の被害を防止するための我が国の取組(2016.11月改訂)
  4. 農林水産省消費・安全局農薬対策室 農薬が原因の可能性がある蜜蜂被害事例報告件数及び都道府県による蜜蜂被害軽減対策の検証結果
  5. 農林水産省生産局畜産部(2021年10月)「養蜂をめぐる情勢」
  6. 日本植物防疫協会(1994-2021年)「農薬要覧」