農薬工業会ニュース

2022年賀詞交歓会を開催

2022年賀詞交歓会を1月5日(水)12時半から、東京・千代田区大手町の経団連会館にて、新型コロナウイルス感染症防止対策を徹底し開催した。出席者は会員各社の他、農林水産省などの関係府省、(独)農林水産消費安全技術センター、関係団体、報道関係者など約200名であった。本田会長から挨拶があり、続いて来賓を代表し、農林水産省消費・安全局長の小川様からご挨拶をいただいた。

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本田会長の挨拶

会長

新年明けましておめでとうございます。皆様には、ご家族ともどもお健やかに新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。一方で年末からの寒波で生活に影響が出ている方々にはお見舞い申し上げます。さて新年早々のお忙しい中、農薬工業会の賀詞交歓会にご参加いただきましたことにお礼申し上げます。昨年の賀詞交換会は新型コロナウイルス感染症の拡大防止を優先し中止といたしましたが、本年は感染防止策の徹底を図り、ここに賀詞交歓会を開催できたことを嬉しく思います。

農薬産業はフードシステムの中で食料生産に必要な資材を供給しています。世界の農薬市場は、2020年2.7%増という上昇傾向を維持し、2021年は前年比5%とさらなる上昇が見込まれています。アジア9.9%増、欧州9.2%増、北米7.1%増がけん引しており、中国の米市場での増加、インドにおける労働力移動制限による除草剤の需要増、欧州での穀類・菜種、北米でのトウモロコシ・大豆の作付面積増などが要因と推測されています。

一方、国内に目を向けますと、昨年の水稲の作況指数は、全国で101と「平年並み」になりました。一昨年は西日本でトビイロウンカによる大きな被害が報告され、昨年も飛来が早かったところですが、農林水産省による防除対策の徹底により、被害は抑えられたと聞いています。このような状況を反映したのか、2021農薬年度の総出荷額は、水稲用殺虫殺菌剤の伸びなどもあり前年比1.8%増となりました。

農薬行政では、改正農薬取締法の施行により、2020年4月1日から使用者安全及び蜜蜂に関する新たなリスク評価法が導入されました。また、最新の科学的知見に基づいて評価を行う再評価の申請が2021年度から開始されました。欧米の再評価制度導入後に登録農薬が減少した事例がありましたが、その多くは、追加の安全性試験を行う費用と登録後の販売を比較した、経済性の観点によるものだったと推察しています。日本においても、同様のことが起こる可能性は否定できません。当会としましては、科学的根拠に基づき、農薬の安全性を一層確保するとともに、防除に有効な農薬が農家に適切に提供されることを目指して、関係府省と引き続き意見交換を進めていく所存です。

日本の農業従事者数は1955年時点で2000万人であったものが現在は約400万人となり、65年前の約5分の1の農業者の方々が農業生産を支えている状況になっています。しかし、担い手の減少と高齢化による労働力不足がますます深刻化しており、これを打開するために、ドローンの利活用も含めて、精密農業や農機の自動化を組み合わせたスマート農業などの新技術への期待が高まってきています。それらに対応し、現場ニーズに応えた農薬あるいは散布技術を提供することも、当業界の重要課題と捉え、農薬会社の立場から後押ししてまいります。日本の農業がSDGs目標8「働きがいも経済成長も」を実現し持続性あるものとなるように、当会会員は、農薬を販売する事業から、病害虫・雑草の被害から作物を保護しながら農業生産性を高めるためのさまざまなソリューションの提供を目指していかれると推測し、当会はそれを支援いたします。

地球温暖化などで、世界各地の気象が非常に極端になってきており、昨年は欧州と米国で甚大な気象災害が発生しましたが、農業生産の安定性に与える影響が非常に心配されます。このように世界的に地球環境への関心が高まっている中で、昨年農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」も踏まえ、当会では生産力向上と持続性の両立に資する技術イノベーションの創出に努めていくこととしています。ここで、これまでの当会会員の多くを占める日本企業の世界的な活動に触れさせていただきます。グローバルには、1980~2019年の主要企業による新規剤の上市品368剤中で日本企業創薬のものが約3分の1に当たる122剤を占めています。さらに2019年の後期ステージにあった開発品35剤中に日本企業のものが12剤と、こちらも約3分の1を占める状況です。このように、これまで日本を主市場として販売していた多くの日本企業は,研究開発力を持ち、国内だけでなく海外での登録取得やビジネス経験を積み、積極的に海外市場において製品を登録し販売を進めてきています。その結果として,農薬の日本からの輸出金額は,2000 年から現在にかけ倍増してきています。日本企業が行う活発な研究開発活動により,特に日本市場の重要作物であるイネ,果樹,野菜等の新規剤開発において,日本の農薬産業は世界の農業向けの新資材の重要な供給源として注目されています。

科学雑誌Pest Management Science2021年に掲載された研究報告によりますと、過去20年間、新しい化学系統を生み出すイノベーションは、最近の新しい殺菌剤と殺虫剤の創出につながり、過去30年間で、新規剤創出の最前線は欧米から日本にシフトし、今後とも、日本の貢献は続くと予想されています。当会会員の努力は、このように世界から注目されていることがお分かりになると思います。

本年も、SDGsも踏まえて、当会のビジョン活動「JCPA VISION2025」を着実に実行することで、持続可能な社会への貢献に引き続き努める年にしたいと思います。皆様方の引き続きのご支援、ご指導よろしくお願い申し上げます。

最後になりましたが、本日ご参加いただきました各団体、会員各社の益々のご発展と、ここにご列席の皆様方のご健勝、ご活躍をお祈り申し上げますとともに、新しい年が明るく充実した年となりますよう祈念いたし、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。