旬素材の産地から
助川 悦夫(すけがわ えつお)さん
JAなすのは栃木県北端の大田原市・那須塩原市・那須町の2市1町から成り、広大な耕地を活かして「コシヒカリ」に代表される水稲、「那須和牛」としてブランド化された畜産、そしてさまざまな野菜や果実などの園芸が盛んです。今回お話をお聞きした助川さんは水稲や大豆、麦などさまざまな農作物を栽培し、45年にわたって育ててきたうどは部会長も務めています。JAなすのでのうど栽培を牽引してきた助川さんに、うどの特徴や育成方法などについてお話をお聞きしました。
- うど
- シャキシャキとした食感と爽やかな苦味を味わえるうどは、日本原産の多年草で春を告げる山菜のひとつです。「うど」は漢字で「独活」と表記され、漢方や薬膳にも用いられています。JAなすの管内で栽培されているうどは「山うど」と「軟化うど」の2種類があり、どちらも「那須の春香うど」のブランドで強い香りやアクが抑えられていることが特徴です。
都道府県別のうどの生産量は栃木県が全国1位で、早いものでは12月から収穫が始まり4月頃まで出荷されています。
東は八溝山系をはさんで茨城県、北を那須山脈により福島県と接するJAなすの管内。山岳地帯や高原地帯には温泉や別荘地、テーマパークなどの観光名所、そして平野部には国内最大といわれる複合扇状地の那須野ヶ原が広がっています。古くは奥州街道の要所として栄え、大田原市を中心に松尾芭蕉のゆかりの施設や多くの句碑が点在。美しい自然に彩られ、悠久の歴史が息づくエリアです。
うど栽培スケジュール
※スクロールにて全体をご確認いただけます。
山うどと軟化うどの違いを教えてください。今年のうどの出来はいかがですか?
助川さん
ビニールハウスの中で遮光しながら30〜40センチに育て、先端を緑化させたものが山うどです。軟化うどは完全遮光の中で70〜80センチに育てた真っ白なうどです。ここで育てているものは山うどで、今年は例年どおりいい株に仕上がりました。うどは春から初冬にかけて一次栽培としてまず田畑で株を養成するのですが、昨年は台風や大雨が少なく湿害等の影響もほとんどなかったため、いい出来になりました。
山うどはどのように栽培し、先端を緑化させるのでしょうか?
助川さん
一次栽培で養成した株を掘り上げたあとは、ビニールハウスの中で伏せ込みをする二次栽培になります。掘り上げるのは12月頃で、会津の山が少し白くなる時期を目安にしています。二次栽培での先端の緑化は直射日光を当てて行いますが、当てすぎるとアクが出てしまうため、そのアクを出ないようにしながら緑化させるのが私のテクニックです(笑)。
JAなすの
君嶋さん
うどは独特の風味やアクが強いというイメージを持っている方が多いかもしれませんが、「那須の春香うど」はそのアクがほとんどありません。
一次栽培で育成された種株。
出荷日から逆算して籾殻の中に伏せ込みをする。
伏せ込みには籾殻を使っているんですね。
助川さん
栽培方法を教えていただいた群馬県沼田市では土を使っていましたが、向こうは火山灰土なのに対してこちらは水田の土を使っていたので、うどが汚れてしまうんです。そこで汚れがつかないように、稲作で排出される籾殻に変えました。うどの栽培を始めてから45年のあいだに発泡スチロールや落ち葉、さらにそれぞれのうどにパイプをかぶせるといった方法も試しましたが、最も効率的なものが籾殻でした。
JAなすの
君嶋さん
JAなすのは米の生産も盛んで、うど部会員さんの中には春~秋に水稲、冬場にはうどなどの野菜を栽培されている生産者の方が多くいます。そのため籾殻を使うことが効率的だったのではないでしょうか。
助川さん
このビニールハウスも元々は水稲の育苗用に使っていたものだったんです。3月末頃までうどを栽培して、その後は育苗用として使っていたので一石二鳥でした。現在はうどの出荷が4月まで続くのでうど専用になっています。
ビニールハウス全体を遮光率の高いシートで覆っている。
伏せ込み床も普段はシートで覆っている。
農薬はどのように使っているのでしょうか?
助川さん
一次栽培で殺虫剤や殺菌剤、除草剤を使いますが、ほかの農作物と比較すると使用量は少ないですね。しかし長雨のあとは黒斑病や菌核病などの病害が発生しやすいので、排水対策と合わせて注意しながら使っています。二次栽培ではヨトウムシが発生してしまうこともありますが、ハウスに伏せ込んでからは殺虫剤を使えないため自分たちの手で防除しています。
JAなすの
君嶋さん
そのため一次栽培での病害虫防除が、いい株を育てるためには重要なんです。
ヨトウムシに食べられてしまった痕。もちろん出荷はできない。
病害虫の防除以外にうどの栽培で大変なことを教えてください。
助川さん
うどの栽培は温度管理がとても重要です。極端に寒いときは温床線(ヒーター)を使って温め、春先の暖かい時期にはビニールハウス内の温度が上がりすぎないように換気を行なっています。地球温暖化の影響で異常気象も多く、栽培時期も少しずつ変化しているなど、年々栽培は難しくなっていますね。
収穫作業も大変なのでしょうか?
助川さん
そうですね。1本1本手作業で収穫するので大変です。そしてうどはとても繊細なので、長い時間触ったり握ったりすると茶色く変色してしまうんです。そのため石づきから切って収穫するときだけでなく、持つ場所は常にうどの先端か石づきの部分です。
JAなすの
君嶋さん
収穫後の選別や箱詰めなども生産者の方が行なっていますが、その際にも極力商品に触れないようにしています。
助川さん
実は茶色になっても味は変わらないんですけどね。
うぶ毛が茶色に変色してしまったうど。
持つ場所に気を配りながら行う収穫作業。
栽培していて楽しい瞬間を教えてください。
助川さん
1年近く手塩にかけてきたうどが立派に育ち、収穫できた瞬間はとてもうれしいですね。さらにそのうどを消費者の方においしく食べていただけると思うと、これからも頑張って生産していこうという気持ちになります。そしてやはり生産者としては、どんな作物でも豊作のときが一番うれしいですね。
籾殻を掘り起こし、角度を考えてうどの根元に収獲鎌を入れる。
うどのおいしい食べ方を教えてください。
助川さん
うどはほぼすべての部分を捨てることなく食べることができますが、やはり生のまま、味噌マヨネーズや酢味噌につけて食べるのがおすすめです。そしてタラの芽と同じタラノキ属なので、葉っぱの天ぷらもおいしいですよ。
JAなすの
君嶋さん
うちではきんぴらを作ることが多いですね。皮だけできんぴらを作ることもできますし、根の部分も皮をむくことで食べられます。購入したうどをすぐに料理しない場合は新聞紙などに包み、暗くて涼しい場所に立てた状態で保存してください。
助川さんがもっとも好きなうど料理は、奥様が作る具沢山味噌汁とのこと。
最後に消費者の方へのメッセージをお願いします。
助川さん
生産者が丹精を込めて栽培した「那須の春香うど」は、栃木県が誇るブランド野菜です。見た目や知名度からうどの食べ方がわからないという方も多いと思いますが、実は手軽に食べられる野菜なので、ぜひ召し上がっていただければ幸いです。
JAなすの
君嶋さん
ぜひ若い方にもうどを味わっていただき、もっと多くの方にうどの美味しさを知ってほしいですね。JAなすののWebサイトにはさまざまなレシピが掲載されているほか、出荷時期の1月から4月にはインターネット販売もしています。「JAタウン 春香うど」で検索してみてください。
※JAタウン うどのレシピはこちら
https://www.ja-town.com/shop/pages/3101/udo-recipe.aspx
新婚の君嶋さんをはさんで助川さんご夫妻。