旬素材の産地から

太陽の恵みを受けて 色艶まぶしい高知のなす太陽の恵みを受けて 色艶まぶしい高知のなす

宮﨑 武士(みやざき たけし)さん

2019年に県内にあったJAの連合会機能が統合されて誕生したJA高知県。冬期も日照時間が長く温暖な気候と海岸から山地に広がる変化に富んだ地形を利用して、園芸農業から畜産まで地域の特性を活かしたさまざまな農業が行われています。今回お話をお聞きした宮﨑さんは高知県東部の安芸市で主になすを栽培。多くの最新技術を導入して安定出荷を目指す宮﨑さんに、安芸市のなすの特徴や育成方法などについてお話をお聞きしました。

全景全景
なす
なす
煮ても焼いても美味しく、揚げたり漬けたりもできるなど、なすは多くの料理に幅広く使える万能野菜です。長卵型や丸型、細長いものまでさまざまな形や大きさがあり、地域ごとに多種多様な品種が育成され、その土地ならではの郷土料理も作られています。冬春期には全国一の出荷量を誇る高知県のなすは、皮も果肉も柔らかいことが特徴。JA高知県で生産・出荷している「高知なす」には血圧改善効果などが期待できるコリンエステルが含まれ、生鮮なすで初めて機能性表示食品として受理されました。

幕末の志士・坂本龍馬、自由民権運動を起こした板垣退助、実業家の岩崎弥太郎、植物学者の牧野富太郎など多くの偉人を輩出している高知県。四国南部に弓状に大きく広がり、北は四国山地、南に太平洋を望み、県内は四万十川に代表される多くの清流が流れています。安芸市は高知市から東に約40kmに位置する田園都市。市内中央部には安芸川と伊尾木川が流れ、その流域に安芸平野が広がっています。なすだけでなく全国有数のゆずの生産地としても知られています。

「高知なす」の特徴を教えてください。今年のなすの出来はいかがですか?

A

宮﨑さん

宮﨑さん

この辺りでは8月下旬から苗を植え始め、翌年の6月頃までなすを収穫します。今作はまだ始まったばかりで数字は出ていませんが、昨年8月から今年6月までの前作は過去最高の収量が採れました。今年もそこに届く、またはそれを超えることを目指しています。

A

JA高知県 大北さん

JA高知県
大北さん

高知県で栽培されている高知なすの品種は主に、県育成品種の「土佐鷹」や「慎太郎」、以前から栽培が盛んな「竜馬」や「はやぶさ」などがあります。そして近年は「PCお竜」の栽培面積が飛躍的に拡大しています。

集荷場のなす
ダンボール

京浜地区を中心に、全国各地に出荷される「高知なす」。

宮﨑さんが栽培しているなすの品種を教えてください。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

3年前から「PCお竜」を栽培しています。マルハナバチによる受粉やホルモン剤の吹き付けが必要ないため省力化を図ることができ、収穫量も安定しています。なす自体にはあまり味がないため、トマトやメロン、イチゴなどのように品種ごとの味の違いはほぼありませんが、PCお竜は今までの品種と比較しても形や色艶に遜色がないものとなっています。

温暖な気候

温暖な高知県の中でも安芸市のある東部の平野部は、冬季の日照時間が多い地域として知られている。

宮﨑さんが生産者になったきっかけを教えてください。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

前職は会社員でしたがものづくりがしたいという想いがあり、妻の父親がなす生産者だったこともあって14年前に転身しました。普通は学校で勉強や研修を受けてから生産者になると思いますが、自分はまったく何も知らないところから飛び込んだので、最初はなす栽培のことがまったくわかりませんでした。成長具合などを感覚で判断することに、とにかく苦労しましたね。

花1
花2

主枝に効率良く日光が当たるように糸を使って枝を誘引。冬は花が咲いてから実になって収穫するまで25〜28日だが、春は14日前後で収穫できるほど成長が早くなる。

それを克服できたと感じたのはいつ頃でしょうか?

A

宮﨑さん

宮﨑さん

2年ほど義父の元で学び、その後に一人でなす栽培を始めました。そこから花がいくつ咲いているのか、実はいくつなっているのか、さらに茎の太さや葉の長さなどを1週間に1度、計測しました。数値化することで前週からの変化がすべて見える。最近は「スマート農業」と呼ばれる分野がありますが、このビニールハウスでも温度、湿度、日射量、CO2量などを測り、パソコンを使って管理しています。その一環として植物の動きも測ってみようと始めました。

A

JA高知県 大北さん

JA高知県
大北さん

宮﨑さんはとても勉強熱心で、環境制御などの新しい技術に率先して取り組まれています。現在ではこの地域の若手生産者の相談役にもなっています。

数値表

標本木を5〜10本選び、1週間の成長具合を数値としてすべて明記していく。

モニタリング

ビニールハウス内のさまざまな環境をモニタリング。宮﨑さんが最も重視しているのは平均気温と積算気温とのこと。

栽培において気をつけていることを教えてください。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

育てているものが持っているポテンシャルを落とさないようにすることですね。植物の動きは計測値として目に見えますが、色艶などはやはり経験に基づく暗黙知が必要。そのダブルチェックです。現在は経営側の人間として動いているため栽培の作業はあまりしていませんが、従業員のみなさんに何を共有するのかを重視しています。特に害虫や病気が出てしまったときの情報共有と対処が重要です。害虫や病気が発生するとポテンシャルが落ちてしまいますから。

モニタリングセンサー
加温用暖房機

ビニールハウス内にはモニタリングセンサーや加温用暖房機など、さまざまな機器が設置され、環境状態を管理している。

どのような害虫や病気が発生するのでしょうか?

A

宮﨑さん

宮﨑さん

害虫で最近多いのはヨトウムシですね。アザミウマやコナジラミといったビニールハウスで発生する代表的な害虫も出ます。その対策としてこの地区では、天敵昆虫のタバコカスミカメを利用した防除が盛んです。病気で最も怖いのは青枯病(あおがれびょう)で、自分のミスからこのハウスで栽培していた半分の木を枯らしてしまったことがあります。すすかび病や黒枯病(くろがれびょう)が発生することもありますが、これらの主な要因は環境なので、モニタリングでの環境管理と定期的な薬剤散布で管理しています。

ヨトウムシ

実に穴を開けてしまうヨトウムシ。もちろんこのなすは出荷できない。

ゴマ

ナスを育成するハウス内に植えられたゴマは、タバコカスミカメを増やすためのもの。

農薬はどのように使っていますか?

A

宮﨑さん

宮﨑さん

天敵を利用した防除も行っているので、営農指導員の方に時期や種類などについて相談をしながら、天敵に影響が出ないような使い方をしています。8月中下旬から6月末頃まで約10ヶ月間なすを育て続けるので、農薬がないと安定して収穫を続けるのは難しいと思います。そのためRACコード(農薬の作用機構分類)をきちんと確認し、現在はスマートフォンの作業管理アプリも使い、できるだけ農薬の使用量が少なくなるようにしています。

栽培していて楽しい瞬間を教えてください。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

なすは紫外線が当たると着色するので、ヘタとガクの下にある白い部分は昨日の夜から朝までの間に成長した証なんです。私たちは「ヘタギレ」と呼んでいますが、この幅が広いほど成長しているので、順調に育っているのを見たときは喜びを感じます。もちろんお客さんから「おいしかったですよ」といった言葉や反応をもらうと嬉しいですね。

ヘタギレ

白い部分がヘタギレで、紫外線が当たるとほかの部分と同様に色がつく。

なすのおいしい食べ方を教えてください。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

自分はなすのたたきが好きですね。輪切りにして素揚げし、ねぎやみょうが、たまねぎといった薬味をまぶしてポン酢をかけて食べるシンプルなものが一番好きです。ツナをのせることもありますよ。子供は大きななすを輪切りにして、間にミンチを挟んで揚げた料理が好きですね。

A

JA高知県 大北さん

JA高知県
大北さん

私もなすのたたきが好きです。なすの素揚げやなすの豚肉巻きも美味しいですね。

最後に消費者の方へのメッセージをお願いします。

A

JA高知県 大北さん

JA高知
大北さん

なすは機能性食品として健康にも良く、いろいろな料理にも使える食材です。JA高知県では「なすマダム」として安芸市施設園芸品消費拡大委員会のメンバーが、様々ななす料理の動画をYouTubeに投稿しています。みなさんもぜひご覧になっていただき、日々の食卓になす料理を加えていただけると嬉しいですね。

A

宮﨑さん

宮﨑さん

高知のハウス栽培のなすは、秋から冬を越して春まで出荷をしている冬春なすです。秋のなすは順調に育っていて、とても美味しいですし、冬のなすも品質に気をつけて栽培・出荷しています。秋、冬、春と、高知のなすをぜひみなさん味わってください。

二人

宮﨑さんを若手生産者のリーダーとして信頼していると話すJA大北さん。

■「なすマダム」がなすレシピを紹介してくれるJAグループ高知のYoutubeチャンネルはこちら。
https://www.youtube.com/@JA-cz9lm/featured

なす栽培スケジュール

※スクロールにて全体をご確認いただけます。

栽培スケジュール