

小竹淳(こたけじゅん)さん
八千代町で10ヘクタールの白菜畑を営む小竹さんは、農家の5代目。JA常総ひかり八千代地区秋冬白菜部会の部会長さんです。
関東平野のほぼ中央、茨城県の南西に位置する八千代町。年間平均気温13~14度、降水量も年間1,300mm前後と農業を営むには最良の環境です。また京浜地区という大消費地も近く、地の利に恵まれています。
見わたす限りの平らな土地に、3kg以上もある白菜がごろんごろん。白菜生産、日本一の茨城県。小竹さんの畑がある八千代町は、県内一の生産地です。畑に出ると、若い後継者と海外からの実習生が一緒に汗を流していました。

大きな白菜ですねー。何kgぐらいあるんですか?
- 小竹さん
- 3kgちょっと。これを4個づつ箱詰めにして、毎日、1000箱は出荷してます。
ひえー!毎日4000個ですか!
- 小竹さん
- ええ、1日13tくらい。家の畑は10ヘクタールありますから、ピーク時の今の出荷状態が、ほぼ約1ヵ月続きます。
もしかして、日本中の鍋をまかなっている?
- 小竹さん
- ははは。ここからは京浜や関西へも出荷しています。特に冬場の茨城の白菜の生産量は多くて、11月から1月の東京都中央卸売市場の出荷量の9割近くを占めています。
ひえー、東京人みんなが小竹さんの白菜を食べてる!
- 小竹さん
- そうですね。ちょっと大袈裟ですが(笑)。
白菜づくりの魅力は?
- 小竹さん
- よく聞かれるけど、答えるのが難しい(笑)。強いて言えば、豪快に収穫できて勝負が早いところかな。でかいことが好きな、八千代人の気質と合っているのかも(笑)。
それが八千代の白菜が強い理由!
- 小竹さん
- もちろん、それだけじゃないですよ。恵まれた気候と平らで広々とした土地。京浜の大量消費地が近いこと。それから・・・海外からの実習生・・・
海外からの実習生?!
- 小竹さん
- 畑へ出ると、たくさんの若い人が働いているでしょ。海外からの実習生なんです。うちも4人います。八千代に海外の実習生が来たのは、今から10年程前。昔はどこも家族労働でしたし、高齢化も進んでいました。そこに若い働き手が現れたから、農業がガラッと変わりましたね。これが八千代の農業の強さの、秘密じゃないですか。
不安はなかった?
- 小竹さん
- すぐに考えが変わりました。白菜は重量野菜、高齢者にはこたえます。その点、若い実習生は元気だし、農業に対する意欲も強い。彼らは農業を学びたい、私たちは農業を教えたい。そんな関係が築けて、不安はなくなりました。
実習期間は何年ですか?
- 小竹さん
- 最長で3年と決まっています。
高校の先生みたい!
- 小竹さん
- ほんとだ(笑)。みんな卒業していく。国に帰った実習生から連絡をもらったときはうれしいね。向こうで成功している教え子がいるんです。

白菜の栽培スケジュールを教えてください。
秋冬白菜部会の部会長なんですね。
- 小竹さん
- はい。白菜には秋冬白菜と春白菜の2種類があります。秋冬白菜は、霜が降りる頃から甘みがでて、主に鍋に使われます。春白菜はシャキシャキした食感で、漬け物にすることが多い。私が所属しているのはJA常総ひかり八千代地区の秋冬白菜部会です。
年間9ヵ月も収穫期?
- 小竹さん
- ええ、秋冬白菜の収穫が10月下旬から3月上旬まで。そのあとが春白菜で、4月上旬から6月までですね。
栽培のスケジュールは?
- 小竹さん
- 8月上旬から下旬が種蒔きのシーズンです。育苗ハウスなどに種を蒔き、肥料を入れて18~20日間管理をして、育ったところで畑に。その間に、畑では耕耘といってトラクターで畝立て作業を行い、畝幅60㎝、株間45㎝から60㎝で定植します。定植は一時、機械化しましたが、実習生が来てからは手作業にもどしました。それから収穫になるのですが、育苗から収穫までほぼ60日から90日ですね。
ほんとだ、勝負が早い(笑)
- 小竹さん
- 10ヘクタールの畑でこのサイクルを順次繰り返して、ほぼ9ヵ月をかけて収穫していきます。もちろん寒い時期に育てる春白菜はハウス栽培になるので、もう少し期間がかかりますが。収穫自体は同じくスピーディです(笑)。
やはり害虫は大敵ですか?
- 小竹さん
- ええ、温暖化で暖かい時期が長くなって、虫もそれだけ長くいるようになりました。昔は11月中旬には霜対策として白菜の頭を縛ったものですが、今は12月末まで必要ないんです。気候が変わると、害虫対策も難しくなりますね。
農薬を使うスケジュールは?
- 小竹さん
- 農業改良普及センターやJAの先生方が、今年は何月に◯◯が大発生の見込み、という予報を出してくれます。あとは先生が作ってくれた防除ローテーション通り、葉が広がる20日目くらいに1回、その後2週間おきに殺虫剤を使っています。使う農薬も決まってきますね。それから重宝しているのは、苗床で1回使うと20日から1ヵ月もつ予防剤。数年前に出たんですが、おかげでシンクイムシ対策まで一度にできるようになりました。
どんな殺虫剤を使いますか?
- 小竹さん
- 主にアブラムシ対策ですかね。ただ、どんな殺虫剤もすぐ抵抗性ができるので、同じものを続けては使いません。今年はこれを使おうという方針に沿って普及センターやJAが作ったローテーションを守り、数種類の殺虫剤を散布しています。普及センターやJAと農家がいっしょになって、効果的な農薬の使い方を工夫している感じですね。
どんな病気が心配ですか?
- 小竹さん
- 最近はべと病と軟腐病です。早生の10月出荷で出る傾向があります。一昨年は10月が暖かくて、廃棄になった畑が多かったんです。病気は気候によるところが大きいですね。病気対策でも数種類の殺菌剤をローテーションで使っています。

おいしい白菜づくり、こだわりは何ですか?
白菜づくりの秘訣は?
- 小竹さん
- 誰が作ってもおいしいですよ(笑)。八千代町は気候が白菜栽培に適していると言われますね。昼夜の気温差があり霧が降りやすいため、葉に蓄えられた養分がしっかり糖化して、やわらかく甘味のある白菜ができます。この地域ならではですね。
一番大切にしていることは?
- 小竹さん
- 土作りをしっかりすることですね。堆肥を入れたり、緑肥をいれたり、排水をよくしたりして。
土が元気だと、野菜がおいしくなる!
- 小竹さん
- その通りです。おいしい白菜作りの秘訣があるとしたら、土作りが半分以上を占めていると思います。畑がよければ、いい作物が採れる。土の良し悪しで、成果はまったく違ってきますね。
土を元気にする方法は?
- 小竹さん
- 土を柔らかくして空気が入りやすい状態をつくることです。今は畑に入る機械が大型化して、その重みで土が固まってしまう。乾燥すると土が、かちんこちん!だから堆肥、緑肥をいれて、団粒構造にすることが大事です。
団粒構造って?
- 小竹さん
- 土の中で、土壌の粒子がいくつもの小さな塊を作っていると想像してください。この構造だと、保水性がありながら排水性も通気性もある元気な土になる。白菜作りには一番適しています。
八千代は、農家も元気!
- 小竹さん
- ありがとうございます。おかげさまで八千代町は、後継者である若い人へのバトンタッチがうまくいっています。最近では栽培講習会を開くと、熱心な若者がびっくりするほど集まってきます。
若い人が変わった?
- 小竹さん
- ずいぶん変わったと思います。八千代の若い世代は、みんな作る喜びがわかってきている。もの作りが楽しくて仕方がない、そんなキラキラした目をしています。そういう意味では、実習生の受入れを含めて、八千代の農業は日本でも最先端じゃないかな。これからもっといい方向へ行くと思います。
視界良好ですね!
- 小竹さん
- いえいえ、悩みもいっぱいある。
え?どんな悩み!
- 小竹さん
- 値段が安い(笑)。今年は例年にもまして豊作だから、最悪です(笑)。珍しいことに台風がいい方へ作用して、全国的に豊作になりました。だから値段が安い。本当に採算ギリギリってところです。
いつも考えていることは?
- 小竹さん
- 次に何をつくるのか、白菜に代わるものは何かってことですね。もちろん白菜が一番大切だけど、将来のためにいつも次のことを考えています。だから八千代の人はみんな、きょろきょろしていますよ(笑)。
どう恵まれた土地を活かすか?
- 小竹さん
- 若手に農業を受け継いでいく上でも、この土地で、何を作って生活していくかはいつも課題です。うちの6代目の長男や、八千代の若い後継者たちと、次の農業を考えていきたいですね
白菜のおいしい食べ方を教えて!
- 小竹さん
- キムチ鍋を推薦しています。八千代の商店が協力してプロモーションしています。ゆるキャラグランプリに出ている着ぐるみもありますよ(笑)。
白菜キムチ鍋ですね!
- 小竹さん
- 八千代の白菜はとにかくキムチとよく合います。本当にうまいですよ。ぜひ一度、ご家庭で食べてみてください。
楽しみ!小竹さん、おいしい話ありがとうございました。
八千代町の白菜

- 関東平野のほぼ中央、茨城県南西部に位置する八千代町は県内一の白菜の産地です。大正時代から栽培が始まり、戦後、夏場のすいかと冬場の白菜を組み合わせた経営が広がり、生産が拡大しました。京浜地区という大消費地に近く、近年では県内一の大産地に。野菜価格の低迷や食の多様化などで、農家戸数が減少していますが、1農家当たりの栽培面積は拡大し、畑一面に白菜が広がる大規模な農業経営が行われています
- 秋冬白菜 栽培スケジュール
