旬素材の産地から おいしいかぶにかぶりつき 松本敏幸(まつもと としゆき)さん
埼玉県は全国2位の出荷量を誇るかぶの産地で、今回訪ねた川越市は県内のかぶ出荷の中心地のひとつ。若手の生産者も多いというかぶ栽培。父親から受け継いだ畑でかぶを育てている松本敏幸さんに、かぶに対する思いをお聞きしました。
都心から約30キロのベッドタウンでありながら、工業・農業・観光なども発展している川越市。JAいるま野は川越市に加えて所沢市や入間市など10市3町をエリアとし、かぶだけでなく米やさといも、ほうれん草など、豊穣な大地を生かしたさまざまな農作物を栽培・出荷しています

あ! 採れたてのかぶがいっぱい!

見事な手さばきで選別される大量のかぶ

松本さん
朝に収穫してきたかぶを大きさなどの出荷規格に合わせて選別し、結束・洗浄しているところです。こちらで働いていただいているパートさんたちはベテランが多いので、見ただけで大きさを判別できる方ばかり。洗浄後には水を切り、箱詰めをしたらJAいるま野に出荷します。

かぶがとても白いですね!

天候不順でもこんなに真っ白

松本さん
台風や大雨などが続いた影響で、現在(2019年10月下旬)出荷しているものは少し汚れが落ちづらくなっています。天候が良ければもっと白いかぶになっていますよ。しかし多少汚れていても味は変わらないので安心してください。

どのような品種を育てているんですか?

JAいるま野川越第一共販センター

松本さん
自分で食べておいしいと思える品種を選んで、育てるようにしています。硬かったり甘くなかったりという品種が昔は多かったんですが、そういったものは避けていますね。現在出荷しているものは、大きなかぶが「ニューしらね」で、普通の大きさのものが「夏の雪」です。どちらもおいしいですよ。

そんなおいしいかぶですが\おすすめの食べ方はありますか?

とれ蔵キッチン「かぶのサラダ」

松本さん
うちでよく食べるのはサラダですね。夏場のかぶは甘さよりも辛さを感じる場合があるかもしれませんが、どんなかぶでも生で食べられます。1センチほどの厚さにスライスして焼いて食べるのもおいしいですね。味噌汁などの場合は、火を止めてから入れれば歯ごたえが楽しめます。煮込みすぎると溶けてしまうので、軽く火を通すくらいの方がおいしく食べられるんです。

通年で出荷するかぶ、しかし夏と冬は栽培が難しい

かぶを作り始めてからどれくらいですか?

松本さん
父親を継いで20歳から始めたので、もう20年以上になります。それでも難しいし大変ですね。かぶは葉と玉(根)のどちらも売りなんですが、葉が良くても玉が虫に食われてしまっているなど、抜いてみないとわかないところがあるんです。

JAいるま野・販売推進課 柴田さん

JAいるま野 柴田さん
内部黒変症状が発生してしまうこともあります。外側を見ただけではまったくわからず、白いかぶの玉を切ってみたら中が黒くなっているという……。

中だけが黒いんですか!?

松本さん
数年前に発生しました。普通のかぶなのに切ると中の一部が黒くなっていて、ひどいものになると表面だけ白くて中はすべて真っ黒。長くかぶを作っている生産者なら少しでもおかしなところがあればすぐにわかるんですが、内部黒変症状はまったくわかりませんでした。その畑で採れたかぶは一時出荷停止にして、ひどい場合はすべて廃棄。そうなるとやはり悔しいですよ。

畑ですくすくと育つ松本さんのかぶ

JAいるま野 柴田さん
なぜ発生するのか直接的な原因はわかっていませんが、播種の前に土壌診断を行うなど防ぐための施策を行なっています。生産者の方の頑張りもあって昨年(2018年)は発生しませんでした。

露地栽培の難しさもありそうですね。

JAいるま野 柴田さん
JAいるま野ではかぶを通年で出荷していますが、やはり夏場は難しいですね。暑いと育ちにくく、水分が足らないと品質が落ちてしまうことがあります。

露地栽培は天候に左右されやすい

松本さん
例えば9月に収穫する場合は7月に種を蒔くので、夏場は暑く、台風や大雨があって、そして虫も多い。猛暑のときの収穫はパートの方にはお願いできないので、自分が一人で休み休み収穫しています。台風も困りますね。強風でかぶの葉が倒れて、玉が土から抜けて傷ついてしまったり。大雨で水に浸かってしまった場合は、病気の発生につながる可能性があります。

虫はどんなものが?

キスジノミハムシに食べられてしまうと痕がついてしまう

松本さん
アブラムシやキスジノミハムシ、ダイコンシンクイムシ(ハイマダラノメイガ)が発生しますね。アブラムシは葉の裏にいて、水分を吸ってしまうので葉がゴワゴワになってしまいます。特に多いのはキスジノミハムシですね。玉の表面を食べられてしまうので、こうなってしまうと廃棄するしかありません。

農薬を使っても被害が出てしまうんですね……。

松本さん
土壌診断で畑の状態を確認して、まず施肥のときに農薬を使います。その後は収穫までの期間に消毒などのための農薬を使います。それでも虫はかぶを食べてしまいますから、虫にとってもうちのかぶはおいしいのかな(笑)。
JAいるま野 柴田さん
JAいるま野の独自の栽培基準も採用していますし、もちろん農薬には使用基準があるので、状況によっては虫による被害が多く出てしまうことはありますね。

JAいるま野の人気キャラクター「とれ蔵」

松本さん
農薬を使っていても被害が出てしまいますから、使っていなかったらもっと食べられてしまっているかもしれませんね。そういう意味では農薬があって助かっています。

播種から出荷までのスケジュールは?

松本さん
夏場に枝豆を育てている時期以外、7月からスタートして翌年の5月の頭くらいまではずっとかぶの種を蒔いています。7月に種を蒔いたときは9月に収穫で、11月に種を蒔いたときは2月下旬の収穫ですね。早い時期は播種から収穫まで60日くらいですが、遅い時期は90日くらいかかってしまうんです。

かぶの大きさによって収穫する数も変わる

JAいるま野 柴田さん
収穫までの期間は時期によって異なりますが、かぶは1年中収穫できるんです。ひとつの畑で栽培をしているあいだに、別の畑に種を蒔いて、そのまた別の畑では収穫をするなど、途切れなく作業が続いていきます。そのため育ったものからどんどん収穫していかないと、次の作業もどんどん遅れてしまう。生産者のみなさんはスケジュールが遅れないように、雨が降っても風が吹いても収穫しているんですよ。

時期によって色々な対策が必要になりそうですね。

松本さん
夏は通気性を良くしないといけないので、冬なら8列に種を蒔くところを夏は6列にします。冬は播種後にネットをかけるだけでなく、ビニール栽培に切り替えます。通年で育てていますが、季節によってやることは変わりますね。

播種後のかぶを守るために使うネット

JAいるま野 柴田さん
かぶは暑くても育たないし、寒さにも弱いため手間がかかります。夏と冬、それぞれの難しさがありますね。

葉と玉の美しさがおいしいかぶの証拠

常にかぶのことを考えていないといけないですね。

作り続けていても難しいと語る松本さん

松本さん
本当に毎日考えていますよ。特に天気ですね。雨が続いているときは束の間の晴れの日に播種をしなければと考えますし、晴れていても土の状態が良くなければ蒔けないし。土は見たり触ったりするだけで、播種できる状態かどうかわかるんですけどね。

えっ!? 見ただけで?

今までの経験によって土の状態を把握

松本さん
もちろん最初はわかりませんでした。天候が良いと土の状態に関係なく種を蒔いてしまっていたんですが、土に水分が多いときは田んぼのような状態なので、収穫するときにあまり良くないものができてしまうんです。コツをつかんだのは30代後半になってからですね。しかし最近は暑かったり大雨が降ったり以前とは気候が違うので、どんどんやり方を変えていかないといけませんね。その繰り返しです。

かぶを育てていてワクワクするときはありますか?

JAいるま野の直売所・あぐれっしゅげんき村

松本さん
ワクワクはしないですね。特に今年は天候が悪いので、次に収穫するかぶはどうだろう、その次はどうだろうという感じでやっているので、ドキドキしかしないです(笑)。畑も広いので、場所によって出来不出来があるんですよ。そのため出来がいいときは、ホッとする部分の方が大きいかな。

育てたかぶを食べた方の感想を聞くことはありますか?

松本さん
すべてJAに出荷するため直売はしていないので、消費者の方の感想を直接聞くことはありません。どうなんですか?(笑)

あぐれっしゅげんき村でもかぶは大人気

JAいるま野 柴田さん
消費者の方の声ではありませんが、販売者の方から「JAいるま野のかぶが欲しい」と言われますよ。特に秋から冬にかけては「欲しい欲しい」とよく言われますね。
松本さん
妻や子供、それから余ったかぶをあげた子供の友達から、おいしい・おいしかったと言われることはあります。やっばりうれしいですよね。またあげようと思ってしまいます。自分の子供はかぶのおいしさを知っているので、少しでも味が変わると一切食べません。ベストの状態のかぶしか食べないんです(笑)。

消費者の方へのメッセージをお願いします。

JAいるま野とかぶの未来を担うJA柴田さんと松本さん

松本さん
かぶは玉が白くて、葉がシャキっとしていると鮮度が良い証拠です。見た目できれいだなと思ったものがいいかぶですね。買ったらなるべく早く食べてください。冷蔵庫に入れて保存することもできますが、時間が経つにつれて水分がなくなってしまいます。買ったその日に新鮮なうちに食べるのが、最もおいしい食べ方です
  • 全国2位のかぶの出荷量(2017年)を誇る埼玉県の中でも、JAいるま野は県全体の66.6%を占める出荷量の中心。川越市・富士見市・所沢市・三芳町・ふじみ野市・狭山市・日高市などで露地栽培されています。特徴は純白でキメが細かく、そして甘いこと。汁物や煮物といった定番だけでなく、サラダやステーキ、酢の物など、さまざまなアレンジでもおいしく食べられます。JAいるま野のWebサイト(https://www.ja-irumano.or.jp)に用意されている「とれ蔵KITCHEN」では、多彩なレシピを見ることができます。

  • JAいるま野 かぶ

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