農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

食品安全基本法が制定され、また食品衛生法も改正されたそうですが、農薬の規制についてはどのような変化があったのでしょうか。

内閣府に食品安全委員会(新機関)が発足し食品を摂取することによる農薬等の健康への悪影響を科学的知見に基づき客観的かつ中立的に評価する体制となり、また、残留基準が設定されていない農薬が残留する食品の販売等を禁止する制度であるポジティブリスト制度が導入されました。

日本国内でのBSE(牛海綿状脳症)問題により、これまでの行政が、生産者・事業者サイドに偏った運営がされてきたこと、リスク評価とリスク管理が渾然一体となって行われてきたこと、施策の決定過程が不透明であることなどとともに、消費者をはじめとする関係者への正確な情報開示が行われていなかったことなどについて厳しい反省が求められました。そして食品の安全の確保のための包括的な法的枠組みを定めた食品安全基本法の制定や、食品衛生法の改正が2003年(平成15年)5月に相次いでおこなわれることになりました。同時に、食品を摂取することによる健康への悪影響について、科学的知見に基づき客観的かつ中立的に評価する機関として内閣府に食品安全委員会も同年7月に発足しました。さらに、食品衛生法の改正の内容として、残留基準が設定されていない農薬が残留する食品の販売等を禁止する制度であるポジティブリスト制度も導入され、2006年(平成18年)5月29日より施行されています。

食品安全基本法は、食品の安全の確保のための包括的な法的枠組みを定めています。「食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行わなければならない」(第3条)と明確にうたい、消費者保護を全面に打ち出したことが、これまでの法律や制度に比べ大きく変わった点といわれます。また、食品の安全については、「食品の安全には『絶対』はなく、リスクの存在を前提に科学的手法にもとづき制御する」という立場を明確にしています。

このため、食品のリスク(健康への悪影響が生じる確率とその程度)への対応については、リスク評価とリスク管理を分離し、リスク評価は関係の行政機関がおこなうのではなく、新設の食品安全委員会が担当、リスク管理はこれまで通り厚生労働省や農林水産省などが担当することとしました。食品安全委員会とは内閣府に設置された機関で、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関です。

一方、既存の食品衛生法は、国民の健康の保護のための予防的観点に立ったより積極的な対応、事業者による自主管理の促進、農畜産物の生産段階の規制との連携の視点に基づき見直されました。そして、制定以来初ともいえる大改正が行われ、第11条第3項(現在は、第13条第3項)が新設されて、残留農薬規制にポジティブリスト制度が導入されました。

*ポジティブリストについて詳しくはこちら
https://www.jcpa.or.jp/qa/a5_06.html

(2023年2月)