農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

農薬取締法の目的と改正の歴史について教えてください。

農薬取締法は、粗悪な農薬を追放し、農薬の品質保持と向上を図り、ひいては食糧の増産を推進することを目的に1948年(昭和23年)に制定され、1963年(昭和38年)、1971年(昭和46年)、2002年(平成14年)の3回の大改正を経て現在に至っています。

農薬取締法は1948年(昭和23年)に制定されました。当時は戦後の食料危機のため食糧増産が急がれていましたが、反面、不良農薬が出回って農家に損害を与える例が少なくありませんでした。そのため不正、粗悪な農薬を追放し、農薬の品質保持と向上を図り、ひいては食糧の増産を推進することが、本法が制定された目的でした。

その後、農薬が目覚ましい発達をとげたこと、さらに環境汚染に対する社会的関心の高まりの中で、残留性の強い農薬成分が、農作物、水、土壌などを汚染するなどの社会問題や、国民に対する健康への懸念の問題がクローズアップされたことなどから、時々の時代の要請に応じて改正が行われ、以下に記す3回の大改正を経て現在に至っています。

1963年(昭和38年)には、植物調節剤および農薬を原料または材料として使用する資材を本法の適用の対象とし、農薬の使用に伴う水産動植物の被害を防止する観点から、水産動植物に有害な農薬の取り扱いについて新たに規定するなど、最初の大改正が行われました。

1971年(昭和46年)には、農薬による人畜の被害を防止するため、残留農薬に対する対策の整備強化、登録制度の強化、農薬の使用規制の整備等の2回目の大改正が行われました。

2002年(平成14年)には、全国各地で無登録農薬の販売・使用が、国民に対する健康への不安として社会問題となったことから、農薬使用者すべてに使用基準の遵守を明確に義務づけ、違反には重い罰則を設けました。たとえ登録のある農薬であっても、使用基準に違反した場合は、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、場合によっては両方が科されることになりました。改正のきっかけとなった無登録農薬については、販売禁止に加え、製造、輸入、使用も禁止としました。他方、それまで防除目的で使われてきた農業資材が無登録農薬とならないよう、農薬登録制度の枠外で製造、販売、使用できる特定農薬(通称:特定防除資材)も創設されるといった3回目の大改正が行われました。

さらに、2003年(平成15年)には、無登録農薬や販売禁止農薬が販売された場合、販売者に回収を命じることのできる規定、農薬登録のない除草剤は「農薬として使うことはできない」との表示を義務づける規定が設けられました。これらに対する改善勧告に従わなかった場合も、「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、場合によっては両方」が科されることになりました。

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*日本植物防疫協会『植物防疫講座 第3版』1997

(2017年4月)