教えて!農薬Q&A

農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

Q. 食料危機が心配されています。これから農薬は食料問題にどのような役割を果たしていくのでしょうか。

 食料危機の恐れを考える時、効率的な食料増産のために、病害虫や雑草の害を抑え、食料生産を支える農薬の役割はこれまで以上に大きいと言えます。世界の人口が急速に増加する一方、世界の耕地面積を大幅に増やすことは困難であり、食料増産を実現するには、面積当りの収量を向上させる以外にありません。一方で、現在でも世界の農作物の29~51%が、生育、収穫及び貯蔵の段階で失われていると言われており、病害虫及び雑草による生育中のロスを防ぐことは、重要な意味があります。農薬はこの役割を果たすことができる技術・資材の筆頭といえます。

 国連人口基金(UNFPA)の2008年度版世界人口白書によると、世界の人口は67億5000万人、西暦2050年には92億人に達すると予想されています。大部分が発展途上国の人口増によるものです。また貧困について、白書は、現在、1日2ドル以下で生活している人々が世界に30億人いると推計しています。

 一方、国連食糧農業機関(FAO)の「世界食料不安白書」2002年版は、1998-2000年の世界の栄養不足人口は8億4千万人にのぼり、これまでわずかずつながら減少してきた栄養不足人口が再び増加に転じたと報告しています。この8億4千万人のうち7億9千万人が途上国に住んでいます。とくに、サハラ以南の中央アフリカでの増加が目立っています。このような栄養不足や飢えは、多くの場合、貧困や干ばつ、水害、武力紛争、政治的・社会的・経済的混乱が原因になっています。飢えと貧困をなくすために農業部門の成長が欠かせないと指摘しています。

■ 望めない新たな耕地の増加
 食料増産の方法としては、新たな耕地の開発と、既存の耕地の生産性向上しかありません。しかし、世界的に見れば新しい土地は農耕に適していない条件の悪いところがほとんどで、それを改良するには膨大な費用がかかります。また、生態系の保全という観点からも耕地面積をむやみに増やせるものではありません。まったく新しい植物工場のような技術もありますが、食料不足を解決する決め手とはなっていません。したがって、現在の農耕地約15億ha(全陸地面積の11%)のなかで収穫量を引き上げる以外に方法がないのです。
 農業はこの要望に応えられるのでしょうか。第二次世界大戦後、世界の穀物生産量は約2倍まで引き上げられました。それは化学肥料と高収量品種の投入による単位面積当たりの収量増の結果です。それを支えたのが、病害虫に弱い高収量品種を被害から守るために使われた農薬であり、機械化による深耕や大規模な灌漑施設の整備でした。
■ 更なる発展が望まれる農業技術
 では、これからも増え続ける世界の人口を、農業は支えていけるのでしょうか。農耕地の不足に加え、世界各地では地下水の過剰汲み上げによる水不足や、灌漑による塩分集積のための土壌劣化の問題も深刻になっています。さらに、地球温暖化も農業には大きな影響を与えると考えられています。
これらの課題に対する取り組みは様々な分野で行われています。農薬や種子、そしてバイオテクノロジーなどを駆使し、乾燥や塩害、あるいは高温に強い作物や栽培技術が進められていますし、遺伝子技術により単位当たりの生産性を高めた作物の開発も進んでいます。これら最新の農業技術をさらに発展させるとともに、生育や収穫・貯蔵の段階失われる農産物のロスを少なくするため、世界の農業の近代化も推し進めていく必要があります。農業にまつわる科学技術の発展が、食料問題の解決には欠かせません。
参考文献
*国連人口基金(UNFPA)『世界人口白書』2008年度版
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*国連食糧農業機関(FAO)『世界食料不安白書』2002年版
*L.R.ブラウン『飢餓の世紀』1995、ダイヤモンド社
*内田又左衛門『持続可能な農業と日本の将来』1992、化学工業日報社

(2009年5月)

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