農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

農薬は農作業を軽減したと言われますが、どれくらいの軽減効果がありますか。

例えば、水田の草取りでは10アール当たりの労働時間は手作業では50時間かかっていましたが、除草剤を使用するようになり、現在は1時間程度へと手取り作業の50分の1ほどに短縮されました。また、除草剤は水田の中に入らなくても使用できるものもあり作業自体もたいへん楽になりました。

大変な農作業と言えば、水田の除草が挙げられます。除草剤により腰をかがめた無理な姿勢での手取り除草がなくなり、労働時間の短縮以上の労力軽減効果がありました。また、農薬を処理する新しい方法、例えば、殺虫剤や殺菌剤を水稲の育苗箱に処理したり、水田の畦から除草剤を投げ込むなどの施用技術が確立して、散布作業もかなり軽減されました。

除草時間は10アール当たり1時間に

下の図は我が国の農業経営統計調査のデータなどにもとづいて、戦後の水稲作での除草作業時間の年次推移を示したものです。

水稲作における除草時間の年次推移
水稲作における除草時間の年次推移

除草剤導入以前の1949年と導入後の2020年を比較すると、総労働時間は10分の1になりました。とくに10アール当たりの除草時間は50.6時間から1.1時間と約50分の1になりました。これは除草剤の導入による効果です。除草が薬剤散布で済むことは、無理な姿勢での手取りがなくなり、労働時間の短縮以上の労働軽減効果があったといえるでしょう。

省力化を目的とした農薬も

除草剤以外にも省力化を目的とした農薬があります。りんごやみかんなど果樹では果実を充分に育てるために、余分な花や幼果を間引く摘花/摘果がおこなわれます。この作業は一つ一つ手作業でおこなう場合と薬剤を使う場合があります。摘花/摘果剤は植物ホルモンの一種です。

摘果はりんご生産では全労働時間の約3分の1を占める重要な作業で、そのうえ、5、6月に集中しています。人手による作業では、まずおおまかな粗摘果をし、6月の後半までに仕上げ摘果をします。摘果剤を用いると粗摘果がほとんど不要になり、作業時間が30~50%短縮されるといわれます。このため、摘果剤を利用して人手不足を補うことが行われています。

参考文献
*政府統計 e-Stat 農業経営統計調査「米の作業別労働時間の全国農業地域別・年次別比較[10a当たり]昭和35年産~令和2年産」
*日本植物調節剤研究協会『植調五十年史』2014
*日本植物防疫協会「農薬概説」

(2023年2月)