教えて!農薬Q&A

農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

Q. 遺伝子組み換え技術を使い、農薬を使わずに栽培できる作物が開発されましたか。

農薬を一切使わずに栽培できる作物は開発されていません

  遺伝子組み換え技術を使った作物の中には、除草剤耐性作物と、害虫抵抗性あるいはウイルス耐性作物が含まれます。主なものである除草剤耐性作物は、特定の除草剤を散布しても枯れない作物です。また、害虫抵抗性あるいはウイルス耐性作物は、一部の害虫あるいはウイルス防除の為に農薬を使わなくて済む作物です。遺伝子組み換え技術を用いても、農薬をまったく使わずにすむ作物は開発されていません。

 米国農務省農薬統計部の2007年農作物作付調査によると、アメリカでは除草剤耐性をもつなどの遺伝子組み換えダイズの作付けはダイズ全体の91%、組み換えトウモロコシは73%、組み換えワタは87%です。主要穀物の一つである麦については、まだ栽培されていません。

遺伝子組み換え作物の作物別作付面積
遺伝子組み換え作物の作物別作付面積
(単位:百万ha) 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
ダイズ 0.5 5.1 14.5 21.6 25.8 33.3 36.5 41.4 48.4 54.4 58.6
トウモロコシ 0.3 3.2 8.3 11.1 10.3 9.8 12.4 15.5 19.3 21.2 25.2
ワタ 0.8 1.4 2.5 3.7 5.3 6.8 6.8 7.2 9.0 9.8 13.4
ナタネ 0.1 1.2 2.4 3.4 2.8 2.7 3.0 3.6 4.3 4.6 4.8
ジャガイモ <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 - - - - - -
カボチャ - - - <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 - - - -
パパイヤ - - - <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 - - - -
合計 1.7 11.0 27.8 39.9 44.2 52.6 58.7 67.7 81.0 90.0 102.0

ISAAA資料をもとにバイテク情報普及会とりまとめ

 除草剤耐性作物とは、除草剤使用を前提として、その除草剤を不活性化する酵素や、除草剤の影響を受けない酵素を作る遺伝子を導入した作物です。現在、除草剤耐性のあるダイズ、トウモロコシ、ワタ、ナタネなどが実用化されています。

 除草剤には、対象の作物には影響の少ない選択性除草剤と、どの植物も枯らしてしまう非選択性除草剤があります。除草剤耐性作物は、すべての除草剤に耐性があるわけではなく、特定の非選択性除草剤に耐性がある作物です。農家は、作物を植え付けた後、雑草の発生状況を見てその品種が耐性を持つ非選択性除草剤を散布し、ほとんどの雑草を除草することができます。すなわち、雑草が生育してからでも除草ができる為、農作業の忙しさを分散させることができます。省力的な不耕起栽培での除草も可能となります。

 害虫抵抗性作物には、枯草菌の一種バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis :BT)の産生する殺虫性タンパク質を作る遺伝子が導入されています。この殺虫性タンパク質は、蛾などのチョウ目の幼虫の消化管の中で活性化体に変化して毒性を発現します。つまり、幼虫が作物の葉や茎をかじると一緒に殺虫性タンパク質も幼虫体内にとり込まれ殺虫作用を発揮するのです。殺虫性タンパク質(例:BTタンパク質)が毒性を発現するためには消化管の中がアルカリ性で、特異的なレセプターがなければならず、消化器官内が酸性で、レセプターを持たない哺乳類には影響がありません。この殺虫性タンパク質は、すでにBT剤という生物農薬として長い間利用されています。害虫抵抗性作物はトウモロコシ、ジャガイモ、ワタ、ナタネで実用化され、防除しにくい害虫の対策に効果をあげ、また、化学農薬の使用回数を減らすことができることから、環境への負荷を軽減できるメリットがあります。

 最近では、遺伝子組み換え技術によりオレイン酸をより多く含む大豆やβカロチンを多く含むイネ(ゴールデンライス、ビタミンA欠乏症に有効)などの開発もおこなわれています。一方、遺伝子組み換え作物については、さまざまな意見があります。遺伝子組み換え作物を商業化する為に、国による安全性審査が行われ認可されますが、食用作物について日本では、開発企業や研究機関で実験的に栽培されている段階で、一般の農家には普及していません。非食用作物については、遺伝子組み換えのバラを国内で生産し商品化する計画があります。

参考文献
*藤原邦達『検証遺伝子組み換え食品』2000、家の光協会
*山田康之、佐野浩『遺伝子組換え植物の光と影』1999、学会出版センター
*藤原邦達『遺伝子組み換え食品の検証』1997、新評論
*バイテク情報普及会ホームページ

(2008年10月)

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