教えて!農薬Q&A

農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

Q. 日本では単位面積当たりの農薬使用量がアメリカの7倍だといいます。農薬が過剰に使われていませんか。

農作物の安定生産に必要な単位面積当たりの農薬使用量は作物によって大きく異なるため、アメリカのように農薬使用量の少ない作物の栽培割合が大きい国ほど、農薬の全使用量を全耕作面積で割った値が小さくなります。しかし同じ作物ごとに比較すれば、日本の農薬使用量は過剰ではありません。

 単純に農薬の使用量を全耕作面積で割った比較では、確かに日本における使用量はアメリカに比べ多いことになります。過去には7倍、最近のOECDの統計資料においてもアメリカの約6倍という数字が残っています。ところが、作物ごとの農薬の単位面積当たりの使用量を比較すると、ぶどう(殺菌剤のみの使用量)では日本はアメリカの3分の2、大豆では約2倍と作物ごとに異なり、一概に日本での農薬使用が過剰と言う訳ではありません。

■ 単位面積当たりの使用量で比べると
 OECD加盟国の2007年の農薬使用量を全耕作面積で割った比較では、アメリカを基準とすると日本が約6倍、韓国が約6倍、英国が約1.5倍、フランスが約1.7倍で、この統計と比べても“アメリカの7倍”と言う数字は現在も同様の傾向を示していると言えます。ただしここで注意すべきは、単純に単位面積当たりの農薬使用量の多寡でもって環境負荷にまで言及すべきではないことです。農産物の安定生産に必要な農薬使用量は病害虫の発生量、品種による病害虫に対する抵抗性の違い、農耕・栽培形態の違い、農薬の性能や残留性などの違いから変わってきますし、気候や生物循環のスピードも環境負荷に大きな影響を与えるからです。
 1990-2010年の平均農薬使用量を基準とした増減指標を見ると、農薬使用量の推移については多くの国で横這いか減少傾向にあります。その中で日本やオランダといった集約園芸的生産に特長のある農業では、以前は農薬使用量の水準が高かったのですが、近年は減少傾向にあります。一方、穀物の作付け比率の高いアメリカ、ドイツ、フランスといった国では単位面積当たりでは農薬使用量はもともとそれほど多くありません。また、フランスを除くと、それほど使用量は減少していません。
■ 作物別で比べれば
 農薬の使用量の比較は、いろいろな要素が絡み、単純に比較することは出来ません。たとえば、表1のブドウでは日本の農薬使用量は30.9Kg/haで、アメリカとイタリアの3分の2,フランスの2分の1、スペインの約2倍となっています。大豆では日本は5.5Kg/haでアメリカの約2倍。また日本に関する記載はありませんが、ばれいしょではアメリカの11.6Kg/haに対し、スペインは約4分の1、フランスが約1.2倍、イタリアが約2倍となっており、国によって違いがあります。同じ作物で農薬使用量を比較すれば、日本が特に単位面積当たりの農薬の使用量が多いわけではありません。しかし、作物の違いを考慮せず、すべての作物で使用された農薬の合計を全耕作面積で割った数字で比較すると大きな差が出てきます。つまり、アメリカのように全栽培面積のなかで、農薬の使用量の少ない作物の占める割合が大きい国ほど、全使用量を全耕作面積で割った数字は、当然、少なく算出されてくるのです。日本とアメリカのこのような差は、アメリカ農業のほぼ半分を占める麦類が、もともと病害虫の発生が少なく、農薬の必要性が高くないことが影響しているのです。作物別に見ると、日本を含め世界各国とも果樹は農薬使用量が多く、大豆やとうもろこし、小麦は少なくて済み、コメやばれいしょはそれらの中間ぐらいに位置付けられます。
図1. 主要国の年間農薬使用量の推移
図1. 主要国の年間農薬使用量の推移
(注)Active ingredient use in Arable Land & Permanent Crops(耕地面積当たりの有効成分換算農薬使用量)。
農薬は農業用のみ(林野・公園・ゴルフ場など非農業用の農薬を除く)。
(資料)Faostat 2013.8.4
図2. 主要国における農薬集約度ランキング
図2. 主要国における農薬集約度ランキング
(注)(資料)同上
参考文献
*福田秀夫『農薬に対する誤解と偏見』2000、化学工業日報社(2000)
*日本農薬学会『農薬とは何か』1996、日本植物防疫協会(1996)
*内田又左衛門『持続可能な農業と日本の将来』1992、化学工業日報社
*化学工業日報社『農薬の話ウソ・ホント』1989
*OECD database: Environmental Performance of Agriculture in OECD countries since 1990
*OECD Environmental Data Compendium 2004, Paris, France; OECD Secretariat estimates; and national data sources
*Honkawa Data Tribune 「社会実情データ図録」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/

(2017年4月)

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