教えて!農薬Q&A

農薬は本当に必要?

農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて

Q. 残留基準値はどのような考え方に基づいて設定されているのですか。

 残留基準値は、人間が毎日の生活で食品を通じて摂取する農薬の量が、毒性試験結果から得られたADIの範囲に収まるように作物ごとに設定されています。

 田や畑で使用された農薬は時間とともに分解しますが、ごく一部は野菜や果物などの収穫物に残留することもあります。わが国では、その量は人が食品を通じて、一生涯にわたって摂取し続けても健康に何ら悪い影響を与えない量以下となるよう、残留基準値を設定するとともに、農薬の使用に一定の枠をはめるという方法(使用基準の設定)によって残留基準値以下となるように、リスク管理が行われています。

  1961年(昭和36年)、国連食糧農業機関(FAO:Food Agriculture Organization)と世界保健機関(WHO :World Health Organization)の合同会議において世界の残留農薬の専門家会議が開かれ、食品に残留した農薬による人への悪い影響は絶対に起こしてはならないという共通認識のもとに、基本的な対応の仕方が決められました。それにしたがって、各国は残留農薬の規制を行っています。国際的に共通した対応の仕方の概要は以下の通りです。

 まず、農薬の登録申請時に提出される毒性試験の結果から、その農薬を一生涯に渡って毎日摂取し続けたとしても、人に危害を及ぼさないとみなせる体重 1kg当たりの1日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)を求めます。

 一方、農薬の作物への残留量は、登録申請時に提出される「作物残留試験」から得た残留量を基に作物毎に基準値が設定されます。その場合気象条件など種々の外的要因により変動する可能性があることから、基準値は、試験での残留量に比べて、ある程度の安全率を見込んで設定され、また外国基準及び国際基準等も考慮して設定されます。

 次に、私たちが1日に食事として食べる穀物、野菜、果物など作物の量(厚生労働省の国民栄養調査によるフードファクターに基準値を乗じて対象農薬の推定摂取量(「作物別摂取量」の合計)を算出します。

 この推定摂取量(mg/人/日)が、ADI(mg/kg/日)に日本人の平均体重53.3kgを乗じた摂取許容量(mg/人/日)の80%以内の場合、基準値が残留基準値(注1)として設定されます。80%とされるのは、農作物以外に、水や空気からも対象の農薬を体内に取り込む可能性を考慮してのことです。これらの量は正確に知ることは難しく、便宜的に20%としています。

 他方では、対象作物ごとに農薬を使用し、使用濃度、使用量、使用時期、使用方法、使用回数別に収穫された作物への残留量を調べ、その値が残留基準値を超えないようにその農薬の使用基準を決めています。

 従って、使用基準を守ることにより、人や環境への安全が守られる仕組みとなっています。

 (注1)残留基準値(MRL:Maximum Residue Limit)は、食品衛生法に基づく食品の成分規格の一つとして、厚生労働大臣が設定します(同法11条)。残留基準値は、対象農産物の内部または表面に残存が許容される最大濃度と規定されています。

 例として大豆、小豆類及びかんしょ等に使用される農薬について説明します(下表)。一定の使用方法を前提に行った試験による農作物への残留量が、大豆で 0.97ppm、小豆類で0.87ppm、かんしょで0.47ppmの場合、これらの結果を基にかなり安全をみて各残留値を大豆で2ppm、小豆類で 2ppm、かんしょで1ppmと以下いちごまでとりあえず仮置きします。次にこの値とフードファクターから農薬の推定摂取量を計算します。各作物の推定摂取量の合計は0.2378mgとなり、この許容摂取量4.4184mgの8割以内であるため、この場合、各作物の基準値は、大豆で2ppm、小豆類で 2ppm、かんしょで1ppmに設定されます。

表 推定摂取量の計算例
作物群 使用方法 最大作物残留量(ppm) 基準値(ppm) フードファクター(g) 推定摂取量(mg) 日本人の許容摂取量(ADI×53.3)
大豆 散布 0.97 2 56.1 0.1122
小豆類 散布 0.87 2 1.4 0.0028
かんしょ 散布 0.47 1 15.7 0.0157
てんさい 散布 0.31 1 4.5 0.0045
キャベツ 散布 0.82 2 22.8 0.0456
たまねぎ 散布 0.33 1 30.3 0.0303
にんじん 散布 0.46 1 24.6 0.0246
未成熟いんげん 散布 0.28 1 1.9 0.0019
えだまめ 散布 0.16 0.5 0.1 0.00005
いちご 散布 0.15 0.5 0.3 0.00015
合  計 0.2378 4.4184mg/人/日

推定摂取量(mg:各適用作物[基準値(ppm)×フードファクター(kg)]の合計)≦ADI(mg/kg)×53.3(kg)

図1 農薬残留対策(使用基準の決め方)

参考文献
http://www.acis.famic.go.jp/
*農林水産消費安全技術センター>農薬検査関係>農薬登録申請
*「農薬の登録申請時に提出される試験成績の作成に係る指針」

(2009年8月)

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