農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

農家は本当に、使用方法を守って、正しく農薬を使っているのですか。

農薬の適正使用については、農林水産省が毎年全国的に調査をしています

農林水産省では農薬の適正使用を推進し、安全な農産物の生産に資すること等を目的として、農家における農薬の使用状況及び生産段階における農産物での農薬の残留状況について調査を実施しています。

農家の農薬使用記録簿の内容を基に、使用された農薬の適用農作物、使用量又は希釈倍数、使用時期および使用回数に不適正な事例がないか点検・確認をし、不適正使用のあった農家に対しては地域センター等や都道府県が農薬の適正使用の徹底を図るよう指導しています。また、調査結果を都道府県に通知するとともに、農家等の使用者に対して農薬の適正使用の周知徹底を図るよう要請しています。その調査結果が毎年公表されています。

平成22年(2010年)から令和元年(2019年)までの10年間における調査では、不適正な使用のあった農家の割合は、平均0.137%でした。詳しくは、農林水産省ホームページの「国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について」を参照下さい。

*国内産農産物における農薬の使用状況及び残留状況調査の結果について詳しくはこちら

近年の状況から

上記調査例のように、農薬の適正使用が高い水準で達成されてきている背景については、平成15年(2003年)を機に改定が進められてきた農薬取締法が大きな役割を果たしていると考えられます。さらに、平成18年度(2006年)から実施に移されたポジティブリスト制度も、農家が使用する農薬の登録内容について再確認する機会になったと考えられます。

*農薬取締法について詳しくはこちら

*ポジティブリストについて詳しくはこちら

農薬の適正使用は、規制や行政指導によって支えられているだけではありません。生産現場では、農家や産地が自主的に消費者や流通業者の食の安全性の要望に応えるため様々な努力や活動を行っています。農薬使用の内容を帳簿に記帳することや、IPMの実践、食品安全GAPの導入やエコファーマ認定などいろいろな取り組みが行われています。

*GAPについて詳しくはこちら

なお、これまでは「農産物の安全」について主に述べましたが、農薬を製品ラベルの内容に従い適正に使用するということは、すなわち「環境の保全」と、「農家の安全」をはかることにもなります。 実際に、散布時の農薬中毒事故は減っており、農薬の安全使用をさらに徹底するために例年、「農薬危害防止運動」などのキャンペーン活動や安全使用の講習会などが国や都道府県、農業団体、流通関係などによって実施されています。 農薬工業会もそのような活動を行っている団体のひとつです。

(2022年9月)

コラム:無登録農薬事件と農薬取締法の改正

平成14年秋(2002年)には、東北の果樹産地でたくさんの果実が焼却される事件が起こりました。これは、国内では登録が無かったり、失効している農薬が海外から持ち込まれ使用されたからです。

無登録農薬を販売した業者は逮捕され、自殺者も出て、廃棄・出荷停止になった果実・野菜の総量は約7,130トンにのぼりました。この事件がひとつのきっかけとなり、平成15年(2003年)には農薬取締法が改正されました。その改正の大きなポイントは、農薬使用者の責任の明確化と罰則強化(無登録農薬を使用した場合、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる)にあります。また、使用した農薬の内容を帳簿にきちんと記帳するように努めること等が求められています。