農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

農薬が原因で毎年多くの人が死んでいるというのは本当でしょうか。

毎年多くの人が亡くなっているのは事実ですが、その大部分は自殺によるものです。農林水産省の統計によれば、農薬散布作業中の死亡事故や中毒事故はごくわずかです。

厚生労働省の人口動態統計によると、2020年の農薬による自傷および自殺者は152人、農薬による不慮の中毒および曝露による死者は39人で、農薬を原因とする死亡数の合計は202人でした(不慮の事故か自殺か不明だった11人を含む)。2020年の自殺者の総数20243人のうち農薬によるものは0.8%ですから、農薬が自殺の主な手段となっているわけではありません。また、「農薬による不慮の中毒および曝露」がどのようにして発生したのかは不明ですが、発生場所の大部分が家庭(25人)であったことから、保管中の農薬の誤飲・誤用による事故が多く発生していることが推測されます。

農薬による自殺や誤飲・誤用による不慮の事故を防ぐためには、以下の点を守って農薬をきちんと保管することが重要です。

  • 農薬やその希釈液、残った散布液等はペットボトルやガラス瓶などの飲料品の空容器等に絶対に移し替えない。
  • 誤って移し替えてしまうことのないよう、飲料品の空容器等は農薬の保管庫の近くに置かない。
  • 農薬は飲食物と区別して、農薬専用の保管場所に保管する。
  • 医薬用外毒物、医薬用外劇物に該当する農薬は必ず専用の農薬保管庫に施錠して保管する。

また、農林水産省の最新の統計では、2020年に発生した農作業による死亡事故の件数は270件でした。その内訳は、農業機械作業によるものが186件(69%)、農業用施設作業によるものが8件(3%)、機械・施設以外の作業によるものが76件(28%)となっており、農作業に係る農薬中毒による死亡事故は1件もありませんでした。

農作業中の死亡事故発生状況
農業機械作業に係る事故の機種別・原因別死亡者数
農業用施設作業に係る事故の原因別死亡者数の推移 農業機械・施設以外の作業に係る事故の原因別死亡者数の推移
参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*厚生労働省『人口動態調査』2020
*農林水産省ホームページ:
令和2年度の農作業死亡事故について
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/sizai/220215.html

(2023年2月)