教えて!農薬Q&A

農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

Q. 水田に農薬をまいている様子をテレビで見ました。農薬が煙のようにたなびいていましたが、周辺への飛散をなくす対策は取られていないのですか。

 その映像は、水田での粉剤の散布風景だろうと思われます。ひと昔前までは、動力散布機などによる粉剤の散布は水田の病害虫防除でもっとも一般的に用いられている処理方法でしたが、最近ではあまり見られなくなってきました。

 現在では、新しい農薬成分や製剤技術、散布技術の進歩により、田植前に粒剤(殺虫殺菌剤)を育苗箱処理する方法が主流になっています。これにより本田での農薬散布はかなり減少しました。 また以前は、水田の広域防除に有人ヘリコプターによる空中散布が多くの自治体などで実施されていましたが、毎年、実施面積は減少してきています。 その一方で、無人ヘリコプターや乗用型散布機による散布が次第に増えつつあります。

 なお、法制面でも農薬の飛散防止の対策は打たれてきています。 2003年3月には、「農薬を使用する者が遵守すべき基準(農薬使用基準)」農林水産省・環境省令が発効されています。 この中で、農薬使用者の農薬飛散防止に関する努力規定(義務)が定められています。 また、2006年には、農薬残留の規制に関する「ポジティブリスト制」が導入されました。 この制度への移行により、農業生産者に周辺作物への農薬飛散防止対策をさらに徹底して促すことになりました。

■ 農薬飛散防止への取り組み
 農薬散布における飛散(ドリフト)防止対策:農薬の空中散布については、過去より対策マニュアル(「農林航空事業実施者のための安全対策の手引き」)が作成されており、実施においては幾重にも防止対策が取られてきました。一方、地上防除でも、従来から散布時には周辺環境への配慮がなされてきましたが、農業地域の宅地化が進むとともに飛散問題(薬臭や洗濯物・自動車への付着、人やペットの健康への影響など)がより一層懸念されるようになり、防止対策が防除現場それぞれで取られるようになってきました。
そうした状況の中、2003年(2007年改正)には農林水産省消費・安全局長通知がだされ、「学校や病院、公園等の公共施設の内外、住宅地内及び住宅地に近接した農地での農薬使用については、とりわけ飛散対策に最大限に注意を払うこと」とする行政指導が出されました。
 また、2006年には、残留基準が設定されていない農薬等が残留する食品の販売等を規制するため食品衛生法の改正により「ポジティブリスト制」が施行されました。 ポジティブリスト制では、作物への農薬残留に関し従来よりもより厳密な規制が適用されるため、農業生産者は農薬の飛散防止にさらなる注意が必要となります。
 例えば、稲作農家のAさんが、自分の田に散布したある殺虫剤が誤って飛散し、隣のBさんの畑のトマトに少しかかってしまったとします。 その殺虫剤はトマトには登録がなく、また、その農薬成分についてもトマトに公的に設定されている作物残留基準値がない場合には、一律基準として、「0.01ppm」が適用されます。 万一、Bさんの畑のトマトから0.01ppm以上のA殺虫剤の農薬成分が検出された場合には、Bさんのトマトは食品衛生法により出荷ができなくなってしまいます。
 このようなことは生産者や流通業者にとって大きな問題であるため、2005年度には、(社)日本植物防疫協会が中心となり、農林水産省や農薬工業会、日本農業機械工業会など関係団体が多数参画の上で、「地上防除ドリフト対策マニュアル」が作成されました。 近接農作物への散布液飛散のリスクの検証の仕方や、風向きなどの状況判断などへの注意事項のほか、防除現場での具体的な対策として、緩衝地帯の設置や、問題の生じにくい農薬の選択、飛散低減ノズルの利用などが記されています。 このマニュアルは生産者への講習会などの基礎資料として活用され、実際に現場レベルでの対応も進んできています。また、厚生労働省・農林水産省・都道府県・保健所設置市及び特別区が実施主体として行っている「危害防止運動」の中でも飛散防止のための指導が行われています。
参考資料) 地上防除ドリフト対策マニュアル(p11)/「ドリフトの低減対策(総論)」より
参考資料) 地上防除ドリフト対策マニュアル(p11)/「ドリフトの低減対策(総論)」より
参考文献
*日本植物防疫協会「地上防除ドリフト対策マニュアル』マニュアル編集委員会・編 2005
*農林水産航空協会  「農林航空事業実施者のための安全対策の手引き(2009年度版)」
*日本植物防疫協会>農薬散布技術情報>「地上防除ドリフト対策マニュアル」
http://www.jppa.or.jp/test/data/doriftmanual.pdf

(2008年9月)

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