教えて!農薬Q&A

農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

Q. 農薬の安全性はどのようにして確かめられているのですか。

さまざまな安全性評価試験や環境への影響試験が行われています

 農薬は、農薬取締法にもとづき国の登録を受けなければなりません。登録して始めて、製造(輸入)・販売・使用が出来ます。農薬は、食べ物の生産などに使われ、使用する場所も田畑や緑地など開放された環境だけに、病害虫や雑草への効果や農作物に対する薬害試験だけではなく、さまざまな安全性評価試験や、環境への影響試験の実施が要求されます。試験成績の一部または全部を用いて、次の4つの見地から、詳細な安全性評価が行われます。

  1. 農薬の使用者に対する安全性
     急性的な中毒の可能性
  2. 農作物に対する安全性
     作物の生長や収穫物の収量・品質に対する影響の可能性
  3. 消費者に対する安全性
     残留農薬による長期的暴露による、人の健康に対する影響の可能性
  4. 環境に対する安全性
     土壌、水、大気等環境への影響や、環境中の動植物への影響、又は環境中での水を通しての人への影響の可能性や分解性等

 安全性評価で、人の健康や、農作物への影響、環境への影響を明確にしてから、その薬剤の効能が適切に発揮でき、かつ、農作物と人や動物、環境に影響を及ぼさない使い方が定められます。それを農薬の「使用基準」と呼びますが、農薬取締法の基に、農薬の安全性を管理する重要な手段です。使用基準を守って使用した場合には、農作物への残留農薬も人の健康に影響が出ない量に管理されています。この状態を確認して、はじめて農薬として登録されます。

 農薬登録の有効期間は3年で再登録の手続きがなければ失効します。その間に新しい試験項目が加わった場合は、すでに登録を受けている農薬についても、その試験についての成績提出が義務づけられ、常に最新の基準で安全性の審査が行われます。科学の進歩とともに、農薬の安全性を評価する為の試験法も進歩し、試験から得られる情報も増加します。その成果は、農薬の安全性評価に反映されています。

 農薬登録に関しては、「農薬の登録申請に関する試験成績について」(平成12年11月24日付け12農産第8147号農林水産省農産園芸局長通知)で、以下の表のとおり試験成績が要求されています。また、ほとんどの試験項目はGLP制度に適合した試験機関で、GLPに準拠して実施することが要求されています。

■ 農薬登録に必要な試験成績
  1. 薬効に関する試験成績
  2. 薬害に関する試験成績
    ア適用農作物に対する薬害
    ・薬害試験
    ・限界薬量(又は濃度)薬害試験
    ・茶の残臭試験
    ・タバコの喫味試験
    イ周辺農作物に対する薬害
    ・漂流飛散による薬害試験
    ・水田水の流出による薬害試験
    ・揮散による薬害試験
    ウ後作物に対する薬害試験
  3. 毒性に関する試験成績(→表)
  4. 残留性に関する試験成績(〃)
表1. 毒性と残留性に関する試験成績
毒 性 急性経口毒性試験
急性経皮毒性試験
急性吸入毒性試験
皮膚刺激性試験
眼刺激性試験
皮膚感作性試験
急性神経毒性試験
急性遅発性神経毒性試験
90日間反復経口投与毒性試験
21日間反復経皮投与毒性試験
90日間反復吸入毒性試験
反復経口投与神経毒性試験
28日間反復経口投与遅発性神経毒性試験
1年間反復経口投与毒性試験
発がん性試験
繁殖毒性試験
催奇形性試験
変異原性試験
・復帰突然変異試験
・染色体異常試験
・小核試験
生体機能影響試験
動物体内運命に関する試験
植物体内運命に関する試験
土壌中運命に関する試験
・好気的湛水土壌中運命試験
・好気的土壌中運命試験
・嫌気的土壌中運命試験
水中運命に関する試験
・加水分解運命試験
・水中光分解運命試験
水産動植物への影響に関する試験
・魚類急性毒性試験
・ミジンコ類急性遊泳阻害試験
・ミジンコ類繁殖試験
・藻類生長阻害試験
水産動植物以外の有用生物への影響に関する試験
・ミツバチ影響試験
・蚕影響試験
・天敵昆虫等影響試験
・鳥類影響試験 (強制経口投与試験/混餌投与試験)
有効成分の性状、安定性、分解性等に関する試験
水質汚濁性に関する試験
環境中予測濃度算定に関する試験成績
残留性 農作物への残留性に関する試験
・作物残留性試験
・乳汁への移行試験
土壌への残留性に関する試験
・土壌残留性試験 (容器内試験/ほ場試験)
・後作物残留性試験

試験項目は、農薬検査所ホームページの「農薬の登録申請に係る試験成績について」より抜粋しています。
適用作物や使用方法によっては試験成績の提出を要しない場合があります。

 また、生物農薬に関しては、「微生物農薬の登録申請に係わる安全性評価に関する試験成績の取扱について」(平成9年8月29日付け9農産第5090号農林水産省農産園芸局長通知)によって、次の試験成績が要求されています。

 注)「微生物農薬」とは、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、線虫(共生細菌のようなものを活性成分に持つものに限る。)を生きた状態で農薬としての目的で、製造または輸入して販売しようとするものとし、寄生蜂、捕食虫等の天敵及び抗生物質等の微生物源農薬は対象としないものとする。なお、遺伝子組換え微生物については当面対象の範囲に含めないものとする。

微生物農薬の安全性評価資料の微生物別要求項目
微生物農薬の安全性評価資料の微生物別要求項目
微生物農薬の安全性評価資料の微生物別要求項目
参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*独立行政法人 農林水産消費安全技術センターホームページ:
・「農薬の登録申請に係る試験成績について」
http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/8147/8147号本文.pdf
 「別表2.試験成績の提出を要しない場合」
http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/8147/8147%E5%8F%B7%E5%88%A5%E8%A1%A82.pdf
・「微生物農薬の登録申請に係る安全性評価に関する試験成績の取扱について」
http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/9-5090.pdf

(2008年12月)

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