農薬は安全?

農家への安全対策、使用状況の把握などについて

農薬登録基準とはなんですか。

農薬登録の申請において一定の要件に該当する場合には、農林水産大臣がその農薬の登録を拒否することができます。この中で、環境保全とヒトの健康の保護に係る要件は、農薬登録基準として環境大臣が具体的な基準を定めて告示しています。

農薬(特定農薬を除きます)を製造、加工、輸入する場合は、農薬取締法に基づき、その農薬について国の登録を受けることが義務づけられています。申請者の提出した薬効・薬害、毒性、残留性等についての試験成績を検査するなかで、申請農薬が、次のいずれかに該当する場合にはその登録を拒否することになっています(農薬取締法第四条第1項)。この登録保留要件のうち、下記の4~7までに該当するかどうかの基準は環境大臣が定めることとされています(同条第2項)。これを農薬登録基準といいます。

  1. 申請書の記載事項に虚偽の事実があるとき。

  2. 申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、農作物等に害があるとき。

  3. 当該農薬を使用するときは、使用に際し、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に危険を及ぼすおそれがあるとき。

  4. 申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、当該農薬が有する農作物等(飼料用農作物を含む)についての残留性の程度からみて、その使用に係る農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。(作物残留に係る農薬登録基準)

  5. .申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、当該農薬が有する土壌についての残留性の程度からみて、その使用に係る農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因となって人畜に被害を生じるおそれがあるとき。(土壌残留に係る農薬登録基準)

  6. .当該種類の農薬が、その相当の普及状態のもと申請書の記載に従い一般に使用されるとした場合に、その水域及び陸域の生活環境動植物に対する毒性の強さ及びその毒性の相当日数にわたる持続性からみて、多くの場合、その使用に伴うと認められる生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるとき。(生活環境動植物に係る農薬登録基準)

  7. 当該種類の農薬が、その相当の普及状態のもと申請書の記載に従い一般に使用されるとした場合に、多くの場合、その使用に伴うと認められる公共用水域(水質汚濁防止法に規定する公共用水域をいう)に水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。(水質汚濁に係る農薬登録基準)

  8. 当該農薬の名称が、その主成分又は効果について誤解を生じるおそれがあるものであるとき。

  9. 当該農薬の薬効が著しく劣り、農薬としての使用価値がないと認められるとき。

  10. 公定規格が定められている種類に属する農薬については、当該農薬が公定規格に適合せず、かつ、その薬効が公定規格に適合している当該種類の他の農薬の薬効に比して劣るものであるとき。

2006年から農薬登録と同時に残留農薬基準(暫定残留基準を含む)が設定され、基準が設定されていない農薬の残留する食品の流通を禁止するポジティブリスト制度が実施されています。

2003年7月1日から内閣府に食品安全委員会が設置され、残留農薬基準の設定に必要な毒性評価については、食品安全委員会の農薬専門調査会で行われています。土壌残留・生活環境動植物・水質汚濁に係る農薬登録基準については、従来同様、環境大臣が定めることとされています。

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説(2020)』

(2022年3月)