農薬はどうして効くの?

農薬の種類や成分、製造方法、
農薬が効く科学的な仕組みなどについて

農薬の残効性とはなんですか。

散布された農薬は分解などにより減少していきますが、病害虫や雑草に対する効果が持続すること又はその期間を農薬の残効性と言い、「残効性は低い」、「残効は約2週間」などと表現します。

残効性とは、農薬の効果の持続性を表す言葉であり、殺菌剤・殺虫剤・除草剤などすべての農薬で、茎葉処理から土壌処理まで幅広く使われる言葉です。作物ないし土壌に施用された農薬は、作物体内での代謝・分解・光や微生物による分解、大気中への蒸発、土壌中への浸透や流亡などによって消滅します。しかし、その消滅速度は、薬剤の種類や気象、土壌条件、栽培条件等の各種環境要因によって異なるため、薬剤の効果を維持できる期間も自ずと異なってきます。この病害虫や雑草に対する農薬の効力、すなわち生物活性の持続性を残効性と言います。

最近では、製剤技術の進歩により、有効成分を徐々に放出することで、長期間の残効性を生み出す製品も開発され市販されています。

農作物に使われた農薬は、散布剤の場合一部は葉や茎、果実に付着しますが、大部分は地面に落ち土壌に吸着され、日光(紫外線)や水、土壌微生物等の作用により分解され消失していきます。土壌に処理されるタイプの農薬も同様に分解され消失していきます。また植物に吸収された農薬も植物自身の酵素により分解されるなどして消失していきます。

このように農薬は時間とともに分解・消失し効力を失っていきます。農薬がある一定期間作物や土壌に残留し効力を持続することを残効性といい、どれくらいの期間残効性を示すかは、多くの場合作物や土壌に留まっている有効成分の量により決まります。

農薬はある程度残留し残効性がなければ、一般には望ましい防除効果を得ることができません。反面、残留性や残効性が大きすぎたり長すぎたりすると、環境やヒトの健康への影響が懸念されます。そのため、いま使われている農薬のほとんどは適度な残留性や残効性を持ったものになっています。

なお、残効性という言葉には、①農薬の有効成分の効果が持続している期間として上述した「真の残効性」と、②農薬散布によって病害虫・雑草の発生を抑制することで、有効成分の効果が消失しても、その後の病害虫や雑草の発生条件により、効果が持続しているように見える、いわゆる「見かけの残効性」、の2つの側面があります。つまり、一般に農薬の残効性と言われているものは、有効成分の効果の持続期間とは一概には言えないもので、「残効○○日」などと日数を定量化して理解するのではなく、環境条件によっては変動する可能性のあるものとして理解することも必要です。

参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*梅津憲治、大川秀郎『農業と環境から農薬を考える』1994、ソフトサイエンス社
*金沢淳『農薬の環境科学』1992、合同出版
*内田又左衛門『持続可能な農業と日本の将来』1992、化学工業日報社
*『農業技術事典』2006、農山漁村文化協会

(2022年9月)