教えて!農薬Q&A

農薬はどうして効くの?

農薬の種類や成分、製造方法、農薬が効く科学的な仕組みなどについて

Q. 農薬は医薬とはどのように違うのですか。

化学物質としてみた場合、医薬と農薬に本質的な違いはありません。医薬が基本的に人体という閉ざれた環境で使われるのに対して、農薬は農耕地等の開放された環境で使われること、また、医薬が人間の命というかけがえのないものを対象としているのに対し、農薬は農産物の生産に貢献することなど、いくつかの違いがあります。

 たとえば、医薬は人の命を守るため使われるので、価格より効力が重視されます。一方農薬は、農業生産のために使われるため、経済性を度外視することはできず、いくら効果があっても価格が高過ぎたり、使用方法が非常に面倒だったりするのでは、商品として市場に出すことはできません。

■ 「副作用の許される幅」の広い医薬
 農薬は対象の有害生物への活性が強ければ強いほど望ましいのですが、その一方、開放系で使われることから、人や栽培している農作物など有害生物以外の生物や、河川、土壌等環境への影響が少ないほど望ましいことになります。これに対して、医薬も活性が重要なことは同じですが、生命維持という究極の目的のため、他に選択肢が無い場合、副作用はかなりの程度まで許容されることがあります。たとえば、強力な抗がん剤には脱毛、肝臓の機能低下といった大きな副作用があることが知られていますし、エイズの治療薬にも強い副作用があります。これは、訓練をつんだ医師による使用を前提としていることや、人体という閉鎖系で使われることなどから許されることで、農薬より安全性が高いからという理由ではないのです。また、医薬は農薬のように毎年使用されることは少なく、患者が治癒すれば使用を中止することにもよります。
■ 医薬にも環境規制の動き
 医薬は”薬“であるがゆえに農薬のように環境動態に注意が払われてきませんでした。医薬も農薬と同様に化学薬品が多く含まれ、薬事法では新薬承認時に有効性と安全性は評価されますが、農薬のように環境中での安全性等が保証されているわけではありません。国内で承認されている医薬品は2083品目(2014年)にも上り、同法では医薬による環境影響に関して規制が設けられていないため、医療機関や家庭等から自然界への排出は管理されていません。既にEUでは医薬の新規販売許可申請時に環境影響評価が義務付けられており、アメリカにおいても新規に開発される医薬についてリスクアセスメントガイドラインが制定されており、国内でも環境影響評価に関するガイダンスが発出されています。
 歴史的には、19世紀後半に合成染料が発明され、合成染料の染め分け現象の研究から、20世紀初頭に合成医薬品が発明され、そして、20世紀中頃に神経薬のスクリーニングの実験データをヒントにして、化学農薬が発明されたという、類縁関係にあります。
 最近まで世界の農薬を製造しているメーカーの多くは、一般の化学品や医薬品も製造していたメーカーに属していたことからわかるように、染料、医薬、農薬は同じような原料、技術でつくられ、化学構造も非常によく似ているものが少なくないのです。
参考文献
*松中昭一『農薬のおはなし』2000、日本規格協会
*村本昇『農薬はこわくない』1996、近代文芸社
*杉本達芳『残留農薬のここが知りたいQ&A』1995、日本食品衛生協会
*APEC環境技術交流バーチャルセンター “医薬品の水環境への影響” 大阪産業大学 尾崎博明
*厚生労働省「薬生審査発0330第1号 新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」2016

(2017年5月)

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