教えて!農薬Q&A

農薬はどうして効くの?

農薬の種類や成分、製造方法、農薬が効く科学的な仕組みなどについて

Q. 製剤や剤型とはどのようなものですか。

最終製品としての農薬は、使いやすく均一に散布できて防除効果を十分に発揮させるため、有効成分に増量剤や補助剤を加えたり、有効成分に溶剤を混ぜたりしてさまざまな形状の商品に仕上げられています。これを(農薬)製剤といいます。 そして、粉剤、粒剤といった製剤の形態を「剤型」といいます。

 有効成分はごく微量で効果を発揮します。そのような微量のものを広い水田や畑に均一に散布することはできませんので、増量剤等を混合してかさを増やし農作物にむらなく付着するようにします。また、有効成分の分解を抑える成分を加えたりして、品質を保持するなどの工夫がされています。

 最近は製剤技術の進歩により、用途に応じた剤型や働きをもたせることができるようになりました。また、扱いやすさや品質の保持だけでなく、人や環境への影響をより少なくしたり、省力化や省資源化にも役立つ製剤が開発されています。

 製剤化の主な目的は次の五つになります。

  1. 農薬を使いやすい形にする
  2. 農薬の効力を最大限に発揮させる
  3. 使用者への安全性を高め、環境への影響を抑える
  4. 作業性を改善し、省力化する
  5. 剤型を工夫し、既存の有効成分の用途を拡大する
表1. 製剤の種類
製剤性状 剤 型 名 使用法











固 体 DL粉剤  
粒剤  
粉粒剤 微粒剤  
微粒剤F  
細粒剤F  
水和剤  
顆粒水和剤 (WDG)、ドライフロアブル(DF)  
顆粒水溶剤 (SG、WSG)  
錠剤  
液 体 乳剤  
液剤
油剤-サーフ剤  
フロアブル (SC、FL)
エマルション (EW)  
マイクロエマルション (ME)  
サスポエマルション (SE)  
マイクロカプセル (MC)  
AL剤(applicable liquid)  
その他 投げ込み剤(ジャンボ剤など)、エアゾール、ペースト剤、くん煙剤、くん蒸剤、塗布剤 _ _
■ 主な剤型の特徴は以下の通りです。
[DL粉剤] 有効成分、凝集防止剤、分解防止剤、帯電防止剤、増量剤などからなる微粉状の製剤です。粒径は20~30μm(μm は100万分の1m)で10μm以下の粒子を20%以下にした製剤です。希釈が不要なので比較的散布が簡単である特長があります。
[粒剤]有効成分、結合剤、崩壊剤、分散剤、増量剤からなる粒状の製剤です。 粒径は300~1700μm程度です。散布する時、風に乗って農薬が飛ばされ広がることを抑えることができます。
[水和剤] 有効成分、界面活性剤、増量剤からなる微粉状の製剤です。 使う時は、水で希釈して使用します。広い範囲の有効成分を製剤化でき、植物への影響も少ない特長があります。 水和剤を水溶性フィルムで包装し、薬液調製時に粉立ちしないようにしたものもあります。
[顆粒水和剤] 有効成分を界面活性剤、増量剤とともに顆粒状にした製剤で、水中に投入すると速やかに崩壊し、分散します。顆粒状のため水和剤に比べて粉立ちがなく、使いやすい製剤です。
[乳剤] 有効成分を界面活性剤とともに有機溶剤に溶かした製剤です。使う時は、通常水で希釈して使用します。
[フロアブル] 固体の有効成分を細かい微粒子として水に分散させた製剤です。薬液調製時の粉立ちがなく、水に速やかに分散します。水田除草剤ではそのまま散布するタイプもあります。
[エマルション] 水に溶けない液状の有効成分、または少量の有機溶剤に溶かして液状にした有効成分を界面活性剤などを用いて水中に微粒子として乳化分散させた製剤です。この製剤は、引火性がなく、人や動物への影響も軽減しています。
[AL剤] AL剤とはapplicable liquidの略で、そのまま使用できる濃度にあらかじめ希釈した水ベースの製剤です。農薬は、通常、使用時に希釈して使いますが、家庭園芸では、農薬の使用量が少ないのと、希釈作業になれていないことから、このようなすぐに使用可能な製品が好まれます。
■ ドリフトの少ない粒剤が主流に
 剤型別の生産量(重量)を見ると、現在では粒剤が最も大きな割合を占め、ついで粉剤、乳・液剤、水和剤などの順です。かつては粉剤が多かったのですが、散布の時、農薬の微粉がドリフト(漂流・飛散)して周辺に影響を及ぼしたり、散布作業をしている人が微粉を浴びやすいことなどから、現在ではドリフトの少ない粒剤が主流になりました。また、ポジティブリスト制度の導入により、この傾向がさらに進んでいます。このように剤型も時代の要請に応じて改良され、新しいタイプが開発されています。最近は次の3点に開発の重点がおかれています。
  1. ドリフトの防止。粒剤への切り替えだけでなく、粉剤もドリフトの少ないDL粉剤にほとんど切り替わっています。DLはドリフトレスの略です。
  2. 安全性のより高い剤型への転換。液剤の場合、溶剤を有機溶剤から水に換えて、有効成分を水中に微粒子として分散させたエマルションやフロアブルが開発されました。
  3. 製剤の形状や性質に、より高度な機能をもたせ、省力化や安全性、機能性を持たせること。あぜから農薬の入った小袋を投げ込むだけで、有効成分が水田に広がるパック剤やジャンボ剤が普及し、油剤タイプで、水田に垂らしていくと有効成分が水の表面に急速に広がり、稲の茎や葉などに付着して害虫を防除するサーフ剤などがあります。
■ 同じ成分でも製剤ごとに安全性を確認
 同じ有効成分を粉剤にしたり、粒剤、水和剤、乳剤など異なる剤型で製剤化することがありますが、製剤ごとに薬効・薬害試験を実施して、有効性を確認しています。また、それぞれの剤型について作物への残留性および、使用者への安全性、環境への影響についても問題がないことを確認しています。
参考文献
*日本植物防疫協会『農薬概説』
*日本農薬学会『農薬とは何か』1996、日本植物防疫協会
*辻孝三「農薬製剤技術と環境調和」今日の農業(1999-10)
*千葉馨「安全防除と農薬の剤型」農薬春秋 No.60:45-50、1990北興化学工業株式会社
*日本農薬学会 農薬製剤・施用法研究会編『農薬製剤ガイド』1997日本植物防疫協会

(2009年8月)

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